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【専門家監修】脆弱性診断の対象サイトの特徴から診断のやり方まで解説 | 脆弱性診断

【専門家監修】脆弱性診断の対象サイトの特徴から診断のやり方まで解説

2023年、大手ゲームソフトウェアメーカーがランサムウェア攻撃を受け、最大39万件の個人情報が流出し、業務が一時停止する事態となりました。そして2024年、今度は大手システム開発企業で150万件を超える個人情報漏えい事件が発生。これらの出来事は、サイバー攻撃の脅威が急速に拡大し、企業の規模を問わず誰もが標的になり得ることを如実に物語っています。 日本サイバーセキュリティ協会(JCSA)の最新レポートによると、2023年のWebアプリケーションに対する攻撃は前年比35%増。特に目を引くのは、AIを悪用した新種の攻撃の急増です。この数字は、多くの企業がこの新たな脅威に対して十分な備えができていない現状を浮き彫りにしています。 こうした最新の脅威を含む潜在的なリスクを事前に発見し、適切な対策を講じるために不可欠なのが脆弱性診断です。 この記事では、脆弱性診断の基本から実践的な内容まで、分かりやすく解説していきます。特に注意が必要なサイトの特徴や、効果的な診断手法、さらには自社のセキュリティ状況をチェックする方法まで、幅広くカバーしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。 要注意!脆弱性診断を実施すべきサイトの4つの特徴 脆弱性診断は多くのウェブサイトにとって欠かせませんが、ある特徴を持つサイトではより綿密な対応が求められます。 個人情報や決済情報を取り扱うサイトやアプリ ECサイトやオンラインバンキングなど、センシティブな情報を扱うサイトは最優先で診断すべきでしょう。SQLインジェクションやXSS攻撃のリスクが高く、データ漏洩を防ぐには定期的な診断が不可欠です。 大規模なユーザーベースを持つサイト 多くのユーザーを抱えるサイトも要注意です。ユーザー数が多いほど攻撃の影響が広範囲に及ぶため、認証システムやセッション管理の脆弱性には特に気を配る必要があります。 動的コンテンツを提供するWebアプリケーション 会員制サイトのような動的コンテンツを扱うWebアプリケーションは、セッションハイジャックやCSRF攻撃の標的になりやすいです。ユーザー入力の適切な検証が肝心です。 APIを利用して外部とデータをやり取りするサイトやアプリ APIを介してデータのやり取りを行うサイトやアプリは、APIキーの漏洩や認証の不備などに注意が必要です。APIセキュリティに特化した診断を行うことをおすすめします。 これらの特徴を持つサイトは特に警戒が必要ですが、どのウェブサイトも定期的な脆弱性診断を怠らないことが大切です。 脆弱性診断の具体的な2つの手法:自動診断vs手動診断 脆弱性診断には主に自動診断と手動診断という2つの手法があります。それぞれに特徴があるので、簡潔に紹介しましょう。詳しい内容は別の記事で掘り下げていきます。 自動診断 自動診断ツールを使ったスキャンは、短時間で幅広い脆弱性を見つけられるのが強みです。コスト面でも効率的で、定期的な診断に向いています。ただし、既知のパターンに基づいて診断するため、複雑な脆弱性や新手の攻撃手法を見逃すことがあるのが弱点です。 手動診断 一方、専門家による手動診断は、より細やかで柔軟なチェックが可能です。システムの特性に合わせたカスタマイズされた診断ができるのが魅力。ビジネスロジックの脆弱性など、ツールでは気づきにくい問題も発見できます。ただ、時間とコストがかかるのがネックです。 多くの場合、この2つの方法を組み合わせることで、効率的かつ精度の高い診断ができます。具体的な実施手順やおすすめのツールについては、別の記事で詳しく解説する予定です。 脆弱性診断の対象となるシステムやアプリケーションは? 次は、主な診断対象を見ていきましょう。 Webアプリケーション(Webサイトを含む) 最もよくある診断対象と言えます。入出力処理、認証・認可機能、セッション管理、Webサーバ設定など、様々な角度から検査します。特にSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった脆弱性には要注意です。 スマホアプリ:OS別で注意 モバイル環境ならではの弱点、例えば不適切なデータ保存やセキュアでない通信などをチェックします。iOSやAndroidなど、OSごとの特性を踏まえた診断が求められます。 プラットフォームとクラウドサービス ネットワーク機器、OS、サーバ、ミドルウェアの脆弱性を洗い出します。クラウド環境では、ちょっとした設定ミスが情報漏洩につながる可能性があるため、そこも重要な診断ポイントになります。 自社サイトの脆弱性診断必要性をチェックしてみよう 自社のウェブサイトやアプリケーションが脆弱性診断を必要としているかどうかを判断するには、以下のチェックポイントを確認することが有効です。 具体的なチェックリスト 以下のチェックリストを確認し、当てはまる項目にチェックを入れてください。 個人情報や機密データを扱っている オンライン決済機能を提供している 過去1年以内にセキュリティインシデントが発生した 最後に脆弱性診断を実施してから6ヶ月以上経過している 最近、大規模なシステム更新や新機能の追加を行った 外部からのアクセスが可能なAPIを提供している ユーザーからの入力を受け付けるフォームがある 複数のサードパーティ製プラグインやライブラリを使用している これらの項目のうち、1つでもチェックが入った場合、脆弱性診断を検討してください。チェックの数が多いほど、脆弱性診断の優先度は高くなります。 現状のセキュリティ体制もチェックを セキュリティ体制についても以下の点を確認してください。 セキュリティポリシーが明文化され、定期的に更新されている セキュリティ担当者が明確に指名されている 開発チームがセキュアコーディング(※1)の訓練を受けている インシデント対応計画が策定され、定期的に見直されている これらの項目にチェックが入らない場合、脆弱性診断と併せてセキュリティ体制の強化を検討すべきです。 ※1:セキュアコーディングとは、サイバー攻撃に強い、安全なソフトウェアを開発するためのコーディング手法のこと 脆弱性診断ツールの選び方:6つの重要基準 自社サイトで脆弱性診断を実施することを決めたら、次は脆弱性診断ツールの選定です。適切なツールを選ぶことで、より精度の高い診断結果を得ることができます。 以下に、ツールの選定基準を簡潔に説明します。 コスト スキャン範囲 使いやすさ サポートの有無 レポート機能 カスタマイズ性 これらの基準を考慮し、自社のニーズに最も適したツールを選択することが重要です。 当社でも独自の脆弱性診断サービスを提供しており、プロによるカスタマイズされた診断が可能です。ツールの詳細な特徴や選定プロセスについては、別記事で詳しく解説いたします。 まとめ さて、ここまで脆弱性診断について幅広く見てきました。その重要性、どんなサイトが要注意か、具体的な診断方法、そしてツールの選び方まで。サイバー攻撃の手口は日々進化しているので、診断と対策を怠らないことが大切です。 脆弱性診断は専門的な知識と経験が必要な分野です。当社では、15年以上の診断実績を持つ専門家チームが、お客様のニーズに合わせた診断サービスを提供しています。業界最先端の診断ツール「Vex」を使って、Webサイトやシステムの脆弱性を隅々まで評価します。 セキュリティ対策について不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。 詳しい内容は、脆弱性診断サービスのページもチェックしてみてください。  

ECサイトの脆弱性診断が急務!実施とセキュリティ強化のポイントとは | 脆弱性診断

ECサイトの脆弱性診断が急務!実施とセキュリティ強化のポイントとは

あなたのECサイトは今、危険にさらされているかもしれません。 日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の報告によると、2023年には悪質なECサイトに関する通報が前年の1.6倍、実に4万7278件にまで跳ね上がりました。この右肩上がりの傾向は2020年から続いており、オンライン取引の安全性に赤信号が点滅しているのです。 さらに衝撃的なのは、経済産業省が明らかにした2023年のクレジットカード不正利用被害額です。なんと541億円。この途方もない数字が、ECサイトのセキュリティ対策の緊急性を如実に物語っています。 こうした危機的状況を受け、政府も動き出しました。2024年度末までにECサイトの脆弱性診断が義務化されることが決定したのです。 では、ECサイト運営者の皆さんは、具体的にどんな対策を講じるべきなのでしょうか?本記事では、実際の脆弱性の種類とその対処法、効果的なセキュリティ診断の進め方、そして教訓となる被害事例を詳しく解説していきます。一緒に、安全なEC運営への道筋を探っていきましょう。 「ECサイトの脆弱性診断の義務化」については、下記記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。 出典:悪質なショッピングサイト等に関する統計情報(2023年上半期)(日本サイバー犯罪対策センター(JC3)) ECサイト特有の脆弱性4つとその対策法 ECサイトは、一般的なWebサイトとは一線を画す独自の脆弱性を抱えています。ここでは、ECサイト運営者の皆さんが特に注意すべき主な脆弱性とその対策について、詳しく見ていきましょう。 カート機能の脆弱性 カート機能は、ECサイトの心臓部とも言える機能です。しかし同時に、不正利用の格好のターゲットにもなりやすいのです。主な問題は、価格操作や数量改ざんによる不正購入。これらの脆弱性に対しては、サーバーサイドでの厳密な価格・数量の検証が欠かせません。 購入プロセスの各段階で、サーバー側で価格と数量を再確認 不正な変更を即座に検知・ブロックする仕組みの整備 トランザクション管理の徹底 具体的には、購入プロセスの各段階で、サーバー側で価格と数量を再確認し、不正な変更を即座に検知・ブロックする仕組みを整えることが重要です。また、トランザクション管理を徹底することで、より安全な購買環境を構築できます。 決済システムの脆弱性 クレジットカード情報の漏洩や不正決済は、ECサイト運営者にとって悪夢のような事態です。この問題に対処するには、まずPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠が大前提となります。 クレジットカード情報を直接取り扱わないトークン化技術の導入 3Dセキュアなどの多層的な認証システムの実装 クレジットカード情報を直接取り扱わないトークン化技術の導入が有効策となります。さらに、3Dセキュアなどの多層的な認証システムを実装することで、不正利用のリスクを大幅に軽減できます。 アカウント関連の脆弱性 アカウントの乗っ取りやポイントの不正利用は、顧客の信頼を根底から揺るがす重大な問題です。 多要素認証の導入 ログイン時の異常を即座に検知するシステムの実装 ポイント制度における1日あたりの利用上限設定 この脆弱性への対策として、多要素認証の導入が効果的です。また、ログイン時の異常を即座に検知するシステムを実装し、不審なアクセスを早期に発見・対処することが重要です。ポイント制度を設けている場合は、1日あたりの利用上限を設定するなど、万が一の不正利用時でも被害を最小限に抑える仕組みづくりが求められます。 これらの対策を組み合わせることで、万が一の不正利用時でも被害を最小限に抑える堅固な防衛線を築けます。 在庫管理システムの脆弱性 在庫数の改ざんや架空在庫による詐欺行為は、ECサイトの信頼性を著しく損なう問題です。 リアルタイムで在庫を管理するシステムの導入 定期的な在庫監査の実施 異常な在庫変動を自動的に検知するシステムの導入 これらの脆弱性に対しては、リアルタイムで在庫を管理するシステムの導入と、定期的な在庫監査の実施が有効です。さらに、異常な在庫変動を自動的に検知するシステムを導入することで、不正操作の早期発見と迅速な対応が可能になります。 これらの脆弱性に効果的に対処するには、ECサイト特有のセキュリティ診断を定期的に実施し、常に最新の脅威に対応した対策を講じることが重要です。同時に、ECサイトの運営者自身がセキュリティ意識を高め、継続的な学習を怠らないことも、安全なEC運営の鍵となります。 ECサイトの脆弱性が引き起こした実際の被害事例 実際に起こった、被害事例も見てみましょう。これらの事例は、ECサイトのセキュリティ対策がいかに重要かを物語っています。 2022年5月、ある衣料品メーカーのECサイトで重大な事態が発生しました。不正アクセスにより、最大16,093件の顧客クレジットカード情報が流出したのです。原因は、決済システムの脆弱性でした。 2021年11月には、大手アパレル企業のECサイトで約25万件の個人情報が流出する事件が起きました。不正アクセスにより、氏名、住所、電話番号などの情報が漏洩しました。 さらに2022年3月、決済サービス会社のシステムが攻撃を受け、最大46万件ものカード番号やセキュリティコードが流出するという重大な事態に発展しました。この事例は、自社システムだけでなく外部サービスの安全性確保も重要だと教えてくれます。 ここで注目すべきは、従業員数10名以下の小規模企業も被害を受けているという点です。つまり、企業の規模に関係なく、誰もが攻撃のターゲットになりうるのです。 これらの事例は、ECサイトのセキュリティ対策の重要性を明確に示しています。定期的な脆弱性診断の実施や、最新のセキュリティ技術の導入は、もはや選択肢ではなく必須と言えるでしょう。 主要ECプラットフォームのセキュリティ対策:Shopify vs カラーミー ECサイトを立ち上げる際、プラットフォームの選択は安全性に大きく影響します。ここでは、主要なプラットフォームのセキュリティ対策を見ていきましょう。 Shopifyは、セキュリティ面で高い評価を受けています。PCI DSS Level 1認証を取得し、全データを暗号化して保存するなど、強固なセキュリティ施策を実施しています。特筆すべきは、24時間365日体制のセキュリティ監視と、ホワイトハッカーによる脆弱性診断プログラムです。これにより、潜在的な脅威にも迅速に対応できる体制を整えています。 一方、カラーミーショップは独自の視点からセキュリティを強化しています。独自開発のセキュリティ監視システムを導入し、不正アクセスを即座に検知・遮断する仕組みを構築。さらに、クレジットカード情報の非保持化を実現し、PCI DSSに準拠した対策を徹底しています。 各プラットフォームには特徴があり、一概にどれが最適とは言えません。詳細な比較は別の記事でご紹介しますので、自社のニーズに合わせて選択してください。 ECサイトの脆弱性診断サービス選び方|種類を知る! ECサイトのセキュリティ診断サービスの選択肢は多岐にわたり、自社に最適なものを見極めるのは簡単ではありません。まずは、診断サービスの種類を理解することから始めましょう。 主に以下の3種類があります。 手動診断:セキュリティ専門家が直接システムを検査 自動診断:専用ツールで自動的に脆弱性をスキャン ハイブリッド診断:手動と自動を組み合わせた方法 それぞれに長所と短所があり、自社のニーズや予算に応じて選択が必要です。ただし、コストだけで判断するのは危険です。安さに惹かれて質の低いサービスを選んでは元も子もありません。 信頼できるプロバイダを見極めるポイントとしては、業界での実績、診断レポートの質、専門家の在籍状況、最新の脅威への対応力などが挙げられます。 適切なサービスを選ぶことで、ECサイトの弱点を効果的に洗い出し、的確な対策を打つことができます。自社の安全性向上のため、じっくりと検討を重ねましょう。 詳しくは別記事でご紹介します。 より効果的に実施するコツと管理のポイント 適切な脆弱性診断サービスを選んだ後は、その診断をいかに効果的に実施し、管理するかが重要になってきます。診断の実施と結果の活用次第で、ECサイトのセキュリティレベルは大きく変わります。ここでは、セキュリティのプロたちが推奨する4つの実践的な方法をご紹介します。 1.いつ、どのくらいの頻度で診断すべき?最適なタイミング 定期的かつ計画的なタイミングでの診断が肝心です。四半期ごとの包括的な診断を基本としつつ、サイトの大幅更新や新機能追加時には必ず追加診断を行いましょう。また、セキュリティ脅威の急激な変化時には臨時診断の実施も検討すべきです。 2.脆弱性が見つかったら?優先順位をつけた迅速な対応を 発見された脆弱性は、深刻度に応じて優先順位をつけ、計画的かつ迅速に対処します。高リスクは即座に、中リスクは計画的に修正を行いましょう。低リスクと判断されたものも油断せず、定期的に再評価し、必要に応じて対策を講じることが大切です。 3.網羅的な診断範囲の設定で見落とし漏れを防ぐ ECサイトの全ての重要部分を診断対象に含めることが大切です。Webアプリ、データベース、ネットワーク、クラウド環境など、構成要素を見逃さないように注意しましょう。新システムや機能も忘れずに。外部からの攻撃だけでなく、内部からの不正アクセスの可能性も視野に入れておくべきです。 4.診断結果を活かす:効果的な管理と報告の仕組みづくり 結果はセキュリティチーム内で共有し、定期的に経営層にも報告することが重要です。過去の結果との比較分析で対策効果を測定しましょう。さらに、診断結果を基に従業員向けセキュリティ教育を行えば、組織全体のセキュリティ意識向上にもつながります。 これらの方法を実践することで、ECサイトの安全性を大幅に高めることができます。 セキュリティ診断は、ECサイトの健康診断のようなものです。定期的に実施することで、潜在的な問題を早期に発見し、対処できます。自社の大切な資産を守るため、今すぐにでもアクションを起こしてみてはいかがでしょうか。 ECサイト脆弱性診断のまとめ ECサイトのセキュリティ対策は、ビジネスの成功と顧客の信頼を支える柱です。本記事では、増加するサイバー攻撃の脅威、ECサイト特有の脆弱性とその対策、効果的なセキュリティ診断の実施方法について詳しく見てきました。これらの課題に適切に対応するには、専門的な知見と豊富な経験が欠かせません。 アイ・エフ・ティの脆弱性診断サービスは、このニーズに応える選択肢の一つです。15年以上の実績を持つ診断員が、個々のお客様のニーズに合わせたソリューションを提案します。診断ツール「Vex」を活用し、Webとシステムだけでなく、人的要因も含めた総合的な脆弱性対策をサポートします。 セキュリティに不安を感じている方、相談から始めたいとお考えの方も歓迎です。お気軽にご連絡ください。皆様のECサイトの安全な運営をお手伝いします。 弊社脆弱性診断サービスの特徴はこちら  

命を守れ!医療機関のサイバー攻撃の実態と5つの脆弱性対策 | 業種別

命を守れ!医療機関のサイバー攻撃の実態と5つの脆弱性対策

驚くべき実態が:命をつなぐ医療機関のサイバーセキュリティの現状   近年、医療機関を標的としたサイバー攻撃が急増しています。患者の安全と個人情報が危険にさらされる事態が、もはや他人事ではなくなってきました。 厚生労働省が実施した最新の調査結果には、驚くべき実態が浮き彫りになっています。なんと、7割を超える医療機関が、サイバー攻撃に対する事業継続計画(BCP)を策定していないのです。さらに気がかりなのは、半数以上の医療機関で、ネットワークの脆弱性対策や安全性の高いオフラインバックアップが実施されていないという事実です。 出典: 「病院における医療情報システムのサイバーセキュリティ対策に係る調査」(厚生労働省) 命に直結する医療機関のセキュリティ対策が、なぜここまで後手に回っているのでしょう?そして、私たちの健康と個人情報を守るため、医療機関はどんな対策を講じるべきなのでしょうか? この記事では、医療業界が直面するサイバーセキュリティの課題、実際の攻撃事例、そして効果的な対策について詳しく解説します。医療関係者はもちろん、患者である私たちにとっても、知っておくべき重要な情報です。一緒に考察していきましょう 医療データを狙う!医療機関特有の脆弱性とサイバー攻撃   医療機関は、サイバー攻撃者にとって格好のターゲットとなっています。その理由は、患者の診療記録や保険情報、さらにはクレジットカード情報といった、極めて機密性の高いデータを大量に保有しているからです。これらの情報は闇市場で高値で取引される可能性があり、攻撃者の食指が動くのも無理はありません。 さらに厄介なのが、医療機関特有の脆弱性です。古いITインフラや更新されていないソフトウェアの使用が、その代表例として挙げられます。厚生労働省の調査結果を見ると、その実態が浮き彫りになります。約40%の医療機関でリモートアクセスに使用するプログラムの更新が適切に行われておらず、約半数の医療機関がサイバー攻撃や自然災害に備えたバックアップデータすら保管していないのです。 出典:病院における医療情報システムのバックアップデータ及びリモートゲートウェイ装置に係る調査(厚生労働省) 医療機器やIoTデバイスも油断大敵です。多くが旧式のOS(オペレーティングシステム)を使用しており、これらがセキュリティホールとなる可能性が指摘されています。 こうした脆弱性は、ランサムウェア攻撃やサプライチェーン攻撃などの格好の餌食になりかねません。特に懸念されるのが、医療機関のシステムダウンが患者の生命に直結する可能性があるという点です。これは攻撃者にとって、身代金要求の絶好の機会となってしまうのです。 医療現場で発生したサイバー攻撃:実例と具体的影響   実際に起こった、医療機関の被害事例も見てみましょう。 最近の主な被害事例 2024年5月、岡山県精神科医療センターが大規模なサイバー攻撃を受けました。電子カルテシステムに不具合が生じ、最悪の場合、約4万人もの患者情報が流出した可能性があると発表されました。この事態は、医療現場に大きな衝撃を与えました。 さらに遡ると、2021年10月には徳島市民病院がランサムウェア攻撃の被害にあいました。電子カルテシステムが完全に停止し、新規患者の受け入れが制限されるという事態に。通常診療の再開までに2か月以上かかり、被害総額は約3億円に達しました。システム復旧費用約2億円に加え、医業収益の落ち込みも重なり、経営に大きな打撃を与えたのです。 2022年5月の北大阪病院の事例も見逃せません。ここでもランサムウェア攻撃により電子カルテシステムが使用不能に。幸い患者情報の漏洩は確認されませんでしたが、一部の外来診療や検査が中止に追い込まれました。 日本医師会サイバーセキュリティ支援制度の創設 こうしたサイバー攻撃の影響は、単なる情報漏洩にとどまりません。診療の遅延や中止、さらには患者の生命に関わる重大事態を引き起こす可能性すらあるのです。新規患者の受け入れ制限や救急診療の休止といった事態は、もはや珍しくありません。 この危機的状況を受け、日本医師会も動き出しました。2022年6月にサイバーセキュリティ支援制度を創設し、翌年6月にはさらに内容を拡充。会員向けに無料の相談窓口を設け、日常的なセキュリティトラブルから重大問題まで幅広く対応しています。 今や医療機関にとって、サイバーセキュリティ対策は医療サービスの質と安全性を確保するための必須条件です。患者の安全と信頼を守るため、適切なアカウント管理やシステムの定期的な更新など、基本的な対策から始めることが急務となっています。 医療機関のサイバーセキュリティ強化:5つの脆弱性対策 医療機関を狙ったサイバー攻撃から身を守るには、多角的で効果的な対策が欠かせません。ここでは、特に重要な脆弱性対策の要素について、詳しく見ていきましょう。これらの対策は、互いに補完し合うことで初めて、最大限の効果を発揮します。 脆弱性診断で潜在的リスクを特定 脆弱性診断は、セキュリティ対策の要となる重要な施策です。この診断を通じて、組織のセキュリティ上の弱点を見つけ出し、迅速に対応することができます。定期的な診断により、日々進化するサイバー脅威に対しては、常に最新の防御態勢が求められます。 定期的なシステム更新で既知の脅威を防御 医療機関は、使用中のソフトウェアや機器の脆弱性を常にチェックし、適切なセキュリティパッチを当てる必要があります。これにより、既知の脆弱性を狙った攻撃を未然に防げます。更新作業の自動化は、この過程をスムーズに進め、人為的ミスを減らす効果的な手段となります。 厳格なアクセス制御で医療情報を守る 多要素認証の導入や、役割ベースのアクセス制御は、不正アクセスのリスクを大幅に軽減します。特に、機密性の高い医療情報システムへのアクセスには、厳格な認証手順を設けることが重要です。 ネットワーク分離で情報漏洩リスクを最小化 ネットワークセキュリティの強化も見逃せません。ネットワークの分離や侵入検知システムの導入により、外部からの攻撃をいち早く察知し、被害を最小限に抑えることが可能になります。 医療IoT機器の保護で患者の安全を確保 医療機器とIoTデバイスの保護は、患者の安全に直結する重要な課題です。具体的には、ネットワークの分離、アクセス制御の強化、定期的なソフトウェア更新が効果的です。さらに、継続的な監視とセキュリティ評価の実施、データの暗号化も欠かせません。これらの対策を総合的に実施することで、デバイスのセキュリティを格段に向上させることができるのです。 まとめ:患者の安全を守るサイバーセキュリティ強化 本記事では、医療業界の現状や特有の脆弱性、実際に起きた攻撃事例、そして具体的な対策について詳しく見てきました。医療機関のサイバーセキュリティ対策は、もはや避けては通れない重要課題です。患者データを守り、医療サービスを途切れさせないためには、万全の備えが必要です。 対策の要となるのは、システムの定期的な更新、アクセス制御の強化、ネットワークの適切な分離、そして医療機器やIoTデバイスの保護です。さらに、組織全体でセキュリティ意識を高めることも欠かせません。 これらの対策を効果的に実施するには、専門的な知識と豊富な経験が求められます。 当社の脆弱性診断サービスは、15年以上の診断実績を持つプロの診断員と業界No.1の診断ツールを組み合わせ、Webやシステムの脆弱性対策をサポートします。 医療機関のセキュリティ強化にお悩みの方は、ぜひ当社にご相談ください。経験豊富な専門スタッフが、丁寧にご対応いたします。お問い合わせフォームまたはお電話でのご連絡を、心よりお待ちしております。  

小売業特有のサイバー攻撃の仕組みと脆弱性対策をすべて解説! | 業種別

小売業特有のサイバー攻撃の仕組みと脆弱性対策をすべて解説!

あなたの店舗は、今この瞬間にサイバー攻撃の標的になっているかもしれません。 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2024」によると、ランサムウェアによる被害が9年連続で組織における最大の脅威として選出されています。小売業も例外ではありません。 では、なぜ小売業がサイバー犯罪者の格好のターゲットなのでしょうか?それは、顧客の個人情報や決済データという「デジタルゴールド」を大量に扱っているからです。 この記事では、小売業界特有の脆弱性や最新のサイバー攻撃手法を解説し、効果的な対策をご紹介します。大手企業はもちろん、中小の小売店舗でも実践できる具体的な防御策に焦点を当てていきます。 サイバーセキュリティは一見難しそうですが、基本的な対策を知り実践することで、店舗とお客様の大切な情報を守りましょう。 出典:情報セキュリティ10大脅威 2024(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)) 小売業が直面する脆弱性とリスク:デジタル時代の5つの課題 小売業界が直面する主な脆弱性とリスクについて、詳しく見ていきましょう。大量の顧客データ管理から、POSシステムの問題点、セキュリティ専門家の不足、さらにはサプライチェーンのリスクまで、業界特有の課題を一つずつ解説していきます。 顧客データ漏洩のリスクが高額な身代金要求を招く 小売業界は、膨大な顧客情報を扱うがゆえに、サイバー攻撃の恰好の的となっています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の最新レポート「情報セキュリティ10大脅威 2024」によれば、「ランサムウェアによる被害」が9年連続で組織における最大の脅威として選ばれました。 出典:情報セキュリティ10大脅威 2024(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)) ランサムウェアとは、身代金を意味する「Ransom(ランサム)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語で、金銭(身代金)を要求するソフトウェアです。 小売業がこのランサムウェアの被害のターゲットになりやすい理由としては以下の2つがあげられます。 大量の顧客データの取り扱い まず、小売業界は大量の顧客データを扱っており、氏名、住所、電話番号、クレジットカード情報など、攻撃者にとって非常に価値のある情報が蓄積されています。このようなデータが漏洩すると、顧客に大きな金銭的損失をもたらす可能性があるため、攻撃者はこの情報を狙います。 「時間」による損失が大きいため、身代金を支払ってしまう 小売業界は、例えば、年末商戦やセール期間中など、売上が高まる時期が明確です。このような時期には企業が早急に業務を再開させる必要があるため、攻撃者は身代金の支払いを要求しやすくなります。企業はこのような状況下では、攻撃者の要求に従ってしまうケースも多いのです。 最新化されていないPOSシステムの脆弱性 POSシステムは小売業の命綱ですが、同時にサイバー攻撃の格好のターゲットでもあります。顧客の決済情報を直接扱うため、攻撃者にとって格好の攻撃対象となっています。特に、古いソフトウェアの使用や、セキュリティアップデートの遅れ、インターネット接続による遠隔からの不正アクセスリスクなどが、主な弱点となっています。 セキュリティ人材不足の現実 サイバーセキュリティの専門知識を持つ人材の確保が大きな課題となっています。急速に変化するデジタル環境に対応するには専門知識のある人材が不可欠ですが、多くの小売業者、特に中小規模の事業者にとって、その採用や育成は容易ではありません。 サプライチェーンの脆弱性 経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」は、サプライチェーンにおけるセキュリティリスクの重要性を指摘しています。小売業は多数の取引先と連携しているため、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策が必須となります。これらの脆弱性は、ランサムウェア攻撃やデータ漏洩などの深刻な被害につながる可能性があります。 小売業者には、これらのリスクを正しく認識し、適切な対策を実施することが求められています。 出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)) 小売業に多いサイバー攻撃とその手口 小売業が直面する主要なサイバー攻撃とそのリスクについて、詳しく見ていきましょう。 Webサイト攻撃、ランサムウェア攻撃、フィッシング攻撃、POSマルウェア攻撃、そしてサプライチェーン攻撃の5つを取り上げ、それぞれの特徴と小売業界への影響を解説します。 Webサイト攻撃:ECサイトを狙う巧妙な手口と対策 ECサイトを運営する小売業者にとって、Webサイト攻撃は特に厄介な問題です。顧客の個人情報や決済データの漏洩、サイトの改ざん、さらには悪意のあるコードの仕込みによる顧客端末への二次攻撃など、被害は多岐にわたります。一度信頼を失えば、取り戻すのは容易ではありません。 ランサムウェア攻撃:小売業の業務を人質に取る新たな脅威 先ほどもご紹介した通り、ランサムウェア攻撃は、小売業者のシステムやデータを暗号化し、身代金を要求する悪質な攻撃です。業務の中断や顧客データの喪失につながる可能性があり、その影響は甚大です。 フィッシング攻撃:小売業の従業員と顧客を狙う巧妙な罠 フィッシング攻撃は、偽のメールやウェブサイトを餌に、従業員や顧客から機密情報を釣り上げる手口です。小売業界では、顧客の個人情報や決済データが主な標的。一度釣られれば、信頼回復までの道のりは険しいものとなります。 POSマルウェア攻撃:レジを狙う静かなる脅威の実態 POSマルウェア攻撃は、店舗のPOSシステムを狙い撃ちにし、顧客のクレジットカード情報などを盗み取ります。直接的な金銭被害はもちろん、顧客の信頼喪失という大きなダメージをも招きかねません。 サプライチェーン攻撃:小売業の弱点を突く新たな攻撃手法 サプライチェーン攻撃は、小売業者の取引先や供給業者を踏み台にする間接的な攻撃です。複雑なサプライチェーンを持つ小売業界では特に警戒が必要で、その影響は予想以上に広範囲に及ぶ可能性があります。 小売業における最新のサイバー攻撃事例   以下に、近年に日本で発生した代表的な2つの事例を紹介しますが、これらは氷山の一角に過ぎません。 アパレル企業の個人情報流出事件 2023年1月、大手アパレル企業が自社の管理するサーバーへの不正アクセスにより、顧客の個人情報が流出した可能性があると発表しました。この事件では、同社が運営するECサイトの顧客情報約104万件が影響を受けた可能性があります。流出した可能性のある情報には、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどが含まれていました。 家電量販店の通販サイト不正アクセス事件 2023年12月、大手家電量販店が運営する通販サイトで不正ログインとなりすまし注文が発生したと発表しました。この事件では、約1,900件の顧客アカウントが侵害され、個人情報の流出や不正注文による金銭被害が確認されました。攻撃の手口は「リスト型攻撃」。他のサイトから流出したIDとパスワードの組み合わせを使った、いわば「使い回し」によるものと見られています。 これらは公表された大規模な事例の一部に過ぎません。実際には、大手だけでなく中小の小売業者も含め、業界全体で日々様々な攻撃が起きています。顧客の信頼を守るため、最新のセキュリティ対策はもちろん、従業員教育や定期的なセキュリティ監査も欠かせません。 小売業のための脆弱性対策:サイバー攻撃から店舗を守る3つの鍵 小売業に特化した脆弱性対策とサイバー攻撃への防御策をご紹介します。 脆弱性診断:あなたの店舗の「穴」を見つける まずは自社システムの弱点を知ることから始めましょう。定期的な脆弱性診断を実施することで、潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じることができます。特に、POSシステムやECサイトなど、顧客データを扱う重要なシステムは優先的にチェックしましょう。 多層防御:一枚岩のセキュリティは存在しない 単一の対策に頼るのは危険です。ファイアウォール、侵入検知システム(IDS)、多要素認証(MFA)など、複数の防御層を組み合わせることで、攻撃者の侵入を困難にします。 これは、城を守るように複数の防御線を張り巡らせる対策です。まず外周には、ファイアウォールという強固な壁を設けます。これは、不審な通信を遮断し、潜在的な脅威を門前払いします。その内側には、侵入検知システム(IDS)という見張り番を配置。怪しい動きを素早くキャッチし、警報を鳴らします。さらに内部では、エンドポイントセキュリティが各デバイスを守ります。 特に注意が必要なのが、POSシステムやECサイトです。これらは顧客の機密情報を扱う重要拠点。ここでは、暗号化技術でデータを保護し、定期的な脆弱性診断で弱点を洗い出します。万が一、脆弱性が見つかった場合は、迅速なパッチ適用と、影響範囲の隔離が鍵となります。 従業員教育:最後の防御壁は人 技術的対策だけでは不十分です。従業員一人ひとりがセキュリティの重要性を理解し、適切に行動できるよう、定期的な教育と訓練が欠かせません。フィッシングメールの見分け方や、安全なパスワード管理など、基本スキルの習得で人的ミスによるリスクを大幅に減らせます。 まとめ:小売業のサイバーセキュリティ強化は待ったなし 小売業界でのサイバーセキュリティの重要性は、もはや議論の余地がありません。顧客データの保護、POSシステムの脆弱性対策、多層防御の導入は、もはや選択肢ではなく必須となっています。 将来を見据えると、AIやブロックチェーンを駆使したセキュリティ対策、クラウドセキュリティの強化、ゼロトラストアーキテクチャの採用が注目を集めています。しかし、忘れてはならないのが人的要素。従業員教育の継続とセキュリティ文化の醸成は、技術と同等に重要です。 当社の脆弱性診断サービスは、小売業界特有の課題にも対応した包括的なセキュリティ評価を提供します。業界No.1の診断ツール「Vex」を使用し、Webアプリケーションからネットワークまで、幅広い範囲の脆弱性を検出します。 あなたの店舗のセキュリティ状況を把握し、効果的な対策を立てるための第一歩として、ぜひ当社の診断サービスをご利用ください。  

物流をサイバー攻撃から守れ!運輸業界の脆弱性対策とは | 業種別

物流をサイバー攻撃から守れ!運輸業界の脆弱性対策とは

サイバー攻撃が、あなたの会社の業務を完全に停止させるとしたら? 2023年7月、名古屋港のコンテナターミナルがランサムウェア攻撃を受け、システム全体が機能停止に陥りました。この攻撃により、約3日間にわたりターミナルの操業が完全に停止。コンテナの搬出入や船舶の入出港に大きな混乱が生じ、その影響は日本の物流網全体に波及しました。 この事件は、運輸業界のサイバーセキュリティの脆弱性を浮き彫りにしました。実際、警察庁の報告によると、2023年のサイバー犯罪の検挙件数は過去最多を更新し、その中でも標的型メール攻撃や不正アクセスなどが増加傾向にあります。 出典:「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(警察庁) では、なぜ運輸業界が狙われるのでしょうか。どのような脅威が潜んでいるのか?そして、どうすれば自社を守れるのか?この記事では、運輸業界が直面する切実なサイバーセキュリティの課題と、その対策について詳しく解説します。 物流の命を狙う:運輸業界特有のセキュリティ脆弱性とは   運輸業界は、その特殊な性質ゆえに、サイバーセキュリティの面で独自の課題を抱えています。ここでは、特に注意すべき脆弱なポイントとそのリスクについて掘り下げていきましょう。 制御システムの脆弱性 運輸業界で使用される制御システムは、車両や船舶、航空機の安全な運行に直結するため、攻撃者にとって格好の標的となっています。例えば、車両管理システムや航空管制システムが乗っ取られれば、重大な事故につながりかねません。制御システムへの攻撃は、運行の混乱や事故は人命や財産に直結するため、このリスクは極めて深刻です。 通信プロトコルの脆弱性 運輸業界で使われる通信プロトコル(CAN、LIN、FlexRayなど)の多くは、セキュリティを考慮せずに設計されたものが多く、攻撃に対して脆弱です。特に車載ネットワークの主流であるCANプロトコルは認証機能がなく、なりすまし攻撃や不正メッセージの混入を許してしまう可能性があります。こうした脆弱性が悪用されれば、車両制御の乗っ取りや偽の情報が送信されたりする可能性があり、安全性に重大な影響を及ぼす恐れがあります。 IoTデバイスの脆弱性 運輸業界では、車両追跡や貨物管理などにIoTデバイスが広く使用されています。しかし、これらのデバイスにはセキュリティ対策が不十分なものも多く、攻撃者の侵入口となる可能性があります。個々のデバイスへの影響は小さくとも、膨大な数のデバイスが接続されているため、大規模攻撃の足がかりとなる可能性があります。そのため、中程度のリスクとして警戒が必要です。 要注意!運輸業界を狙う主なサイバー攻撃手法5つ 運輸業界は、その特性ゆえに様々なサイバー攻撃の格好の標的となっています。ここでは、主な攻撃手法を見ていきましょう。   1. フィッシング攻撃を利用した情報窃取 運輸業界では、配送状況の確認メールや請求書を装ったフィッシングメールが多く使用されます。従業員がこれらの偽メールに騙され、知らず知らずのうちに個人情報や機密データを差し出してしまうケースが後を絶ちません。2023年には物流大手の三和倉庫がこの手の攻撃を受け、業務に大きな支障をきたしました。 2. ランサムウェア攻撃による業務妨害 物流管理システムや車両追跡システムを狙ったランサムウェア攻撃が急増中です。2023年7月の名古屋港コンテナターミナル攻撃では、ランサムウェアにより約3日間の操業停止という深刻な事態に陥りました。このような攻撃は、物流の大混乱を引き起こし、莫大な経済損失をもたらす恐れがあります。 3. DDoS攻撃によるサービス妨害 運輸業界のオンライン予約システムや追跡サービスを標的としたDDoS攻撃も増加の一途をたどっています。この攻撃により、顧客サービスが中断し、業務効率が著しく低下する可能性があります。さらに、DDoS攻撃が他の攻撃の隠れ蓑として使われることもあり、警戒が必要です。 4. サプライチェーンを狙った複合的な攻撃 複雑な運輸業界のサプライチェーンを悪用した攻撃も増えています。セキュリティの手薄な小規模な運送会社や倉庫業者を経由して、大手物流企業のシステムに忍び込むケースが報告されています。この手法では、フィッシング、マルウェア、ランサムウェアなど複数の攻撃手法が巧妙に組み合わされることが多く、発見が難しく、被害が広範囲に及ぶ危険性があります。 5. IoTデバイスを標的とした攻撃 運輸業界で広く使われているIoTデバイス(車両追跡システムや温度管理センサーなど)を狙った攻撃も増加傾向にあります。これらのデバイスがマルウェアに感染すると、位置情報の漏洩や貨物の安全性に関わる問題が発生する可能性があります。 運輸業界におけるサイバー攻撃の事例 2023年7月の名古屋港コンテナターミナルへのランサムウェア攻撃に続き、運輸業界では他にも重要なサイバー攻撃事例が報告されています。ここでは、最近の国内で起きた事例をいくつか見ていきましょう。 総合物流企業の米国子会社へのサイバー攻撃(2023年5月) 2023年5月、ある総合物流企業の米国子会社がサイバー攻撃を受けました。この攻撃により、一部の情報がダークウェブに流出したことが判明。企業側は即座に外部とのアクセスを遮断し、システムの復旧に奔走しました。 物流大手企業へのランサムウェア攻撃(2023年7月) 2023年7月には、物流大手企業がランサムウェア攻撃を受け、システム障害に見舞われました。この攻撃により、取引先とのメールでのやり取りができなくなるなど、業務に大きな支障が生じました。 これらの事例は、運輸業界がサイバー攻撃に対して脆弱であり、攻撃が成功した場合の影響が甚大であることを如実に物語っています。 運輸業界の6つの効果的なセキュリティ対策 運輸業界のサイバーセキュリティ対策は、業界特有のリスクと一般的なセキュリティベストプラクティスの両面から考える必要があります。以下に、効果的な対策をいくつか紹介します。これらを組み合わせることで、より強固な防御態勢を築くことができるでしょう。 定期的な脆弱性診断で見えないリスクを可視化 物流管理システムや車両追跡システム、IoTデバイスなど、運輸業界特有のシステムや機器に対して定期的な脆弱性診断を行うことが肝心です。これにより潜在的なセキュリティリスクを早期に発見し、先手を打って対策を講じることができます。 物流管理システムのセキュリティ強化 脆弱性診断の結果を踏まえ、物流管理システムのセキュリティを強化します。アクセス制御を厳格にし、暗号化を導入し、セキュリティパッチの適用などを実施します。さらに、システムの監視と異常検知の仕組みを設け、不正アクセスや異常な動きを素早くキャッチできるようにします。 車両追跡システムの脆弱性対策と運用・管理の強化 GPSを利用した車両追跡システムの脆弱性を洗い出し、必要な対策を講じます。データの暗号化、アクセス権限の厳密な管理、定期的なパスワード変更などを実施。また、システムの更新やパッチ適用を迅速に行い、既知の脆弱性を塞ぎます。 取引先との連携強化でサプライチェーン全体を守る 取引先や協力会社を含めたセキュリティ基準を設け、その遵守を求めます。特に重要なパートナーには定期的なセキュリティ評価を実施し、脆弱性のある箇所を見つけて改善します。また、サプライチェーン全体でセキュリティ意識を高めるための教育プログラムも実施します。 従業員教育の徹底で人的リスクを軽減 フィッシング攻撃など、人的要因によるセキュリティリスクを減らすため、従業員向けに定期的な教育を行います。特に運輸業界特有の脅威や最新のサイバー攻撃手法について、実践的な訓練を実施。脆弱性の報告や対応プロセスについても教育します。 インシデント対応計画の策定と訓練の実施 サイバー攻撃発生時に迅速かつ適切に対応できるよう、運輸業界特有のリスクを考慮したインシデント対応計画を立てます。この計画には、脆弱性が悪用された場合の対応手順も盛り込みます。定期的な訓練を通じて計画の実効性を確認し、必要に応じて改善を加えましょう。 これらの対策を総合的に実施することで、運輸業界特有のサイバーセキュリティリスクに効果的に対処できます。特に脆弱性診断を軸とした物流管理システムと車両追跡システムの保護は、業界全体のセキュリティ体制強化に大きく貢献するでしょう。 まとめ:定期的な脆弱性診断で物流の混乱を防ぐ! この記事では、運輸業界を取り巻くサイバー攻撃の現状と課題、そして具体的な攻撃手法と対策について詳しく見てきました。特に浮き彫りになったのは、物流管理システムや車両追跡システムの脆弱性が引き起こす重大なリスクです。これらのリスクと向き合うには、定期的な脆弱性診断が欠かせません。 アイ・エフ・ティでは、15年以上の診断実績を持つエキスパートたちが、運輸業界特有のリスクに焦点を当てた脆弱性診断サービスを展開しています。業界No.1診断ツール「Vex」と、熟練診断員による綿密な手動診断を組み合わせた質の高いサービスで、お客様のセキュリティ強化をしっかりとバックアップします。 お客様の環境に最適なセキュリティ対策についてのご相談は、ぜひ当社の専門スタッフにお問い合わせください。  

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