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OWASP TOP10 とは?対策必須のリスクと費用対効果を最大化する対策 | サイバー攻撃

OWASP TOP10 とは?対策必須のリスクと費用対効果を最大化する対策

「うちのWebシステムのセキュリティ、本当にこれで大丈夫なのかな…?」 「Webアプリのセキュリティ対策、何から手をつければいいんだろう…?」 Webアプリケーションの開発や運用に携わっていると、こんな不安を感じることはありませんか? セキュリティ対策は、今や避けて通れない重要な課題ですよね。 そんなセキュリティ対策の「羅針盤」となるのが、世界の専門家たちが示す重大リスクリスト「OWASP Top 10」です。 この記事では、最新版(2021年)のOWASP Top 10で指摘されている10個のリスクとその対策のポイント、そして「なぜ対策がこれほど重要なのか?」という理由を、分かりやすく解説していきます。 さらに、ツールを使ったセルフチェックから専門家への依頼まで、あなたの会社に合った、費用対効果の高い対策アプローチを見つけるためのヒントもお伝えします。 この記事を読めば、こんな疑問が解決します! OWASP Top 10とは何か、その基本的な意味 最新版(2021年版)で指摘される10個のリスクとその具体的な内容 なぜOWASP Top 10への対策がビジネスにとって不可欠なのか 費用対効果の高い、実践的な対策方法(ツールの活用から専門家への依頼まで) OWASP Top 10とは? まず、「OWASP Top 10」がどのようなものなのか、その背景から見ていきましょう。 そもそもOWASPとは OWASP(オワスプ:Open Web Application Security Project)は、Webアプリケーションのセキュリティ向上を目指す、世界的な非営利コミュニティです。 世界中のセキュリティ専門家がボランティアで参加し、セキュリティに関するガイドラインやツール、脆弱性に関する情報などを無償で公開しています。 特定の企業や製品に偏らない、中立的な立場からの情報発信が、その高い信頼性の源となっています。 OWASP公式サイト OWASP Top 10:その役割と位置づけ OWASP Top 10は、OWASPが定期的に発表している、Webアプリケーションにおける最も重大なセキュリティリスクのトップ10リストです。 実際の攻撃データや専門家の知見に基づいて選定され、通常3〜5年ごとに更新されています(現在の最新版は2021年版です)。 OWASP Top 10 - 2021 このリストは、 開発者やセキュリティ担当者に、特に危険な脆弱性を知らせる 数あるリスクの中から、対策の優先順位をつける手助けとなる 世界中の企業や組織が参考にするセキュリティ基準(事実上の標準)として機能する といった役割を担っています。 ただし、注意点として、OWASPは対象領域ごとに様々なTop 10リストを作成・公開しています。 例えば、 スマートフォンアプリ向けの「OWASP Mobile Top 10」(2024年版が最新) OWASP Mobile Top10 - 2021 APIのセキュリティに特化した「OWASP API Security Top 10」(2023年版が最新) OWASP Top 10 API Security Risks - 2023 大規模言語モデル(LLM)向けの「OWASP Top 10 for LLM Applications」(2025年版が最新) OWASP Top 10 for LLM Applications - 2025 などがあります。 このように、それぞれ対象や更新年が異なるので、情報を参照する際はどのリストかを確認することが大切です。 この記事では、その中でも最も基本的かつ広く参照されている「Webアプリケーション版」のOWASP Top 10(2021年版)に焦点を当てて解説を進めます。 Webセキュリティに関わるなら、まず押さえておくべき内容と言えるでしょう。 【詳説】OWASP Top 10 2021 リスク一覧 最新版「OWASP Top 10 2021」で指摘されている10個のリスクは以下の通りです。 A01: アクセス制御の不備 (Broken Access Control) A02: 暗号化の失敗 (Cryptographic Failures) A03: インジェクション (Injection) A04: 安全でない設計 (Insecure Design) A05: セキュリティ設定のミス (Security Misconfiguration) A06: 脆弱で古くなったコンポーネント (Vulnerable and Outdated Components) A07: 識別と認証の失敗 (Identification and Authentication Failures) A08: ソフトウェアとデータの整合性の不具合 (Software and Data Integrity Failures) A09: セキュリティログと監視の失敗 (Security Logging and Monitoring Failures) A10: サーバーサイドリクエストフォージェリ (Server-Side Request Forgery - SSRF) それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。 A01: アクセス制御の不備 (Broken Access Control) これは、ユーザーごとに許可された範囲を超えて、他のユーザーの情報や管理者向けの機能などにアクセスできてしまう問題のことです。 情報漏洩や不正なデータ改ざん、最悪の場合はシステム乗っ取りにまで直結する可能性があり、2021年版では最も深刻なリスクと位置づけられています。 主な対策のポイント アクセス権限のチェックは、必ずサーバーサイド(バックエンド)で実施する。 「原則として全て禁止し、許可された操作のみを可能にする(デフォルト拒否)」という考え方を徹底する。 役割に基づいてアクセス権を管理する「ロールベースアクセス制御(RBAC)」などを適切に実装する。 A02: 暗号化の失敗 (Cryptographic Failures) パスワードやクレジットカード情報といった機密データを守るための暗号化処理や、暗号化に使う「鍵」の管理に不備がある状態を指します。 これが原因で、通信内容が盗聴されたり、保存されている機密情報が大規模に漏洩したりする危険があり、企業の信用を大きく損なってしまいます。 主な対策のポイント 常に最新の安全な暗号技術(例:AES-256)やプロトコル(例:TLS 1.2以上)を使用する。 暗号鍵は厳重に管理し、定期的に更新するルールを設ける。 そもそも、不要な機密データは極力保存しない方針を検討する。 A03: インジェクション (Injection) ユーザーからの入力データ(検索キーワードやフォーム入力など)に、悪意のある命令(データベースを操作するSQL文など)が「注入(インジェクション)」され、システムが不正に操作されてしまう攻撃の総称です(クロスサイトスクリプティング(XSS)もここに含まれます)。 データベース内の情報を盗まれたり、改ざん・破壊されたりするだけでなく、サーバー自体が乗っ取られるなど、極めて深刻な被害を招いてしまいます。 主な対策のポイント 外部から送られてくる入力値は決して信用せず、サーバーサイドで厳密に検証(バリデーション)する。 データベース操作(SQL実行)には、プリペアドステートメントやORMなど、安全な方法を用いる。 Webページにデータを表示する際には、HTMLタグとして解釈されないよう適切にエスケープ処理を行う。 A04: 安全でない設計 (Insecure Design) これは、個々のプログラムの書き方(実装)の問題ではなく、アプリケーションの設計段階でのセキュリティ考慮不足が原因となるリスクです。 設計段階での見落としは、後から修正するのが難しく、コストもかさみがちです。 また、他の脆弱性を引き起こす原因にもなります。 主な対策のポイント 開発の初期段階(要件定義や設計フェーズ)からセキュリティを意識し、組み込むアプローチ(シフトレフト)を実践する。 「脅威モデリング」を実施し、システムに潜む可能性のあるリスクを洗い出す。 「最小権限の原則」など、セキュリティを高める設計原則を適用する。 A05: セキュリティ設定のミス (Security Misconfiguration) Webサーバーやデータベース、クラウドサービスなどの設定が不適切だったり、危険な初期設定(デフォルトパスワードなど)のまま放置されたりすることで生じる脆弱性です。 これらが、不正アクセスや情報漏洩、システム改ざんの直接的な「入口」となってしまうことがあります。 主な対策のポイント 不要な機能、サービス、ポートなどは無効化し、デフォルトのパスワードは必ず変更する。 各種設定項目(HTTPヘッダー、アクセス権限など)を見直し、セキュリティを強化(Hardening)する。 サーバー構成などをコードで管理(Infrastructure as Code)し、設定ミスを防ぎ、一貫性を保つ。 A06: 脆弱で古くなったコンポーネント (Vulnerable and Outdated Components) 利用しているライブラリやフレームワークといったソフトウェア部品(コンポーネント)に、既知の脆弱性が存在したり、サポートが終了した古いバージョンを使い続けたりしている状態です。 攻撃者は、広く知られている弱点を効率的に狙ってくるため、システムへの侵入を簡単に許してしまう原因となります。 主な対策のポイント 使用している全てのコンポーネントとそのバージョンを正確に把握する(SBOM: ソフトウェア部品表の活用が有効)。 脆弱性情報を常に収集し、セキュリティパッチやアップデートが公開されたら、速やかに適用する体制を整える。 サポートが終了したコンポーネントは、原則として使用しない。 A07: 識別と認証の失敗 (Identification and Authentication Failures) ユーザーが誰であるかを確認したり(識別)、本人であることを検証したりする仕組み(認証)、つまりログイン周りの機能に不備がある状態のことです。 これにより、他人になりすまして不正にログインされたり、それに伴って個人情報が盗み見られたり、不正な操作が行われたりします。 主な対策のポイント 推測されにくい、複雑なパスワードの使用を強制するポリシーを導入する。 パスワードに加えて、SMS認証やアプリ認証などを組み合わせる「多要素認証(MFA)」を導入する。 ログイン試行に何度も失敗した場合に、アカウントを一時的にロックする機能を実装する。 ログイン状態を維持するためのセッションIDは、安全な方法(CookieのSecure属性やHttpOnly属性など)で管理する。 A08: ソフトウェアとデータの整合性の不具合 (Software and Data Integrity Failures) ソフトウェアのアップデートファイルや、外部から取り込むデータについて、その信頼性や改ざんの有無を十分に検証しないことで生じるリスクです。 正規のアップデートに見せかけてマルウェアを混入させるなど、ソフトウェア供給網(サプライチェーン)を狙った深刻な攻撃につながります。 主な対策のポイント ソフトウェアやライブラリなどの入手元を、信頼できる公式なソースに限定し、ダウンロードしたファイルの完全性をデジタル署名やハッシュ値で検証する。 ソフトウェア開発・配布プロセス(CI/CDパイプライン)自体のセキュリティを確保する。 外部からデータを取り込む際には、その内容や形式が想定通りか、厳格なバリデーションを行う。 A09: セキュリティログと監視の失敗 (Security Logging and Monitoring Failures) 不正アクセスやシステムエラーといった出来事の記録(ログ)が不十分だったり、記録されたログが適切に監視・分析されていなかったりする状態です。 これでは、攻撃を受けても発見が遅れて被害が拡大したり、問題が発生した後に原因を突き止めることが困難になります。 主な対策のポイント 監査すべき重要なイベント(ログイン試行、アクセス制御エラー、管理者操作など)を特定し、十分な情報(誰が、いつ、何をしたか等)を含むログを確実に記録し、改ざんされないよう保護する。 SIEM(Security Information and Event Management)などのツールを活用してログをリアルタイムで監視・分析し、異常を検知したらアラートを発する仕組みを構築する。 インシデント(セキュリティ事故)が発生した場合の対応手順を事前に整備しておく。 A10: サーバーサイドリクエストフォージェリ (Server-Side Request Forgery - SSRF) 攻撃者が、脆弱性のあるWebサーバーを踏み台にして、そのサーバーから内部ネットワークの他のサーバーや、外部の特定のサーバーなどへ、意図しないリクエストを送信させる攻撃です。 本来アクセスできないはずのファイアウォール内部への不正アクセスや、機密情報(クラウド環境の認証情報など)の窃取につながる危険があります。 主な対策のポイント 外部から受け取ったURLやホスト名を、そのままリクエスト先の指定に使用せず、アクセス先を事前に許可されたドメインやIPアドレスだけに制限する(ホワイトリスト方式)。 ネットワークレベルで、Webサーバーから内部ネットワークの他のサーバーへの不要なアクセス(特にクラウドのメタデータサービスなどへのアクセス)を遮断する。 皆さんの関わるシステムにも、思い当たる点や、すぐに対策が必要だと感じた項目があったのではないでしょうか? これらは、現在のWebアプリケーションが抱える、特に重要度の高いセキュリティ上の脅威です。 一つでも対策が漏れていれば、それが大きなインシデントの引き金となる可能性も否定できません。 では、なぜこれらのリスクへの対策が、ビジネスを守る上でこれほどまでに重要なのでしょうか? その理由を次に詳しく解説していきます。 なぜOWASP Top 10への対策が重要なのか? ここまでOWASP Top 10の各リスクを見てきましたが、「なぜ、これらの対策がそれほどまでに重要視されるのか?」という点について、改めて考えてみましょう。 理由は大きく分けて2つあります。 世界的な「標準指標」としての影響力があるため すでにお伝えした通り、OWASP Top 10は特定の企業や組織の意見ではなく、世界中のセキュリティ専門家の知見と実際の攻撃データに基づいて作成された、信頼性の高い指標です。 そのため、以下のような大きな影響力を持っています。 業界標準としての認識 多くの企業や開発現場で、Webアプリケーションのセキュリティレベルを測るための共通の物差しとして認識されています。 開発・調達要件への組み込み 新しいシステムを開発する際や、外部のサービスを導入する際に、OWASP Top 10への準拠を要件として求めるケースが増えています。 他のセキュリティ基準でも推奨 PCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準)やNIST(米国国立標準技術研究所)などが発行する他のセキュリティガイドラインやフレームワークでも、OWASP Top 10への対応が推奨・参照されています。 つまり、OWASP Top 10への対策は、単なる技術的な推奨事項にとどまらず、ビジネス上の要求やコンプライアンス遵守の観点からも無視できないものになっているのです。 顧客や取引先からの信頼を得るためにも、この世界標準への対応は不可欠と言えるでしょう。 対策の遅れが、大きな被害に繋がる恐れも OWASP Top 10で挙げられている脆弱性は、実際に多くのサイバー攻撃で悪用されており、対策をしなかった場合には、ビジネスに深刻なダメージを与えかねません。 情報漏洩 顧客情報、個人情報、企業の機密情報などが外部に流出し、損害賠償請求や社会的信用の失墜につながります。(例:A02 暗号化の失敗、A03 インジェクションによるデータベースからの情報窃取) 金銭的損失 不正送金、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による被害、サービス復旧にかかる費用、訴訟費用など、直接的な金銭被害が発生します。 サービス停止 Webサイトが改ざんされたり、サービス妨害(DoS)攻撃を受けたりして、サービス提供が不可能になり、ビジネス機会の損失や顧客離れを引き起こします。(例:A05 セキュリティ設定ミスによる不正アクセス、A09 ログ監視の失敗による攻撃検知の遅れ) 法的責任 GDPR(EU一般データ保護規則)や日本の改正個人情報保護法など、国内外の法規制に基づき、多額の制裁金が科される可能性があります。 ブランドイメージの失墜 セキュリティインシデントは大きく報道されることも多く、一度失った企業の評判やブランドイメージを回復するには、長い時間と多大なコストがかかります。 過去には、OWASP Top 10に含まれる脆弱性が原因で、大手企業が大規模な情報漏洩事件を引き起こした例も少なくありません。 事例①:コンポーネント脆弱性の放置 → 1.4億人超の情報漏洩 米国の信用情報会社Equifax社の事件では、Webアプリケーションフレームワークの既知の脆弱性(A06 脆弱で古くなったコンポーネントに該当)を修正せずに放置したことが原因で、約1億4700万人分もの膨大な個人情報が漏洩しました。 出典:「Equifax Data Breach (epic.org)」 事例②:設定ミス+SSRF → 1億人超の情報漏洩 米国の金融大手Capital One銀行の事件では、クラウド環境の設定ミス(A05 セキュリティ設定ミス)とSSRF(A10)の脆弱性を突かれ、攻撃者が内部の管理情報に不正アクセス。結果として、約1億600万人分の顧客申請情報などが漏洩する事態となりました。 出典:「A Case Study of the Capital One Data Breach (MIT)」 これらは極めて被害が大きかった代表的な事例ですが、決して他人事ではありません。 自社のビジネスと顧客を守るためには、OWASP Top 10で指摘されている基本的なリスクへの対策を、一つひとつ確実に実施していくことが、極めて重要なのです。 OWASP Top 10対策はどう進める?費用対効果を最大化する方法 では、具体的にどのように対策を進めていけば良いのでしょうか? 限られた予算やリソースの中で最大限の効果を出すには、「ツールによる自動診断」と「専門家による手動診断」をうまく組み合わせることがポイントになります。 まずはツールでセルフチェック OWASP ZAPを活用しよう まず手軽に始められるのが、脆弱性診断ツールを使ったセルフチェックです。 特に、OWASP自身が提供している無償のツール「OWASP ZAP」が有名です。 ツールを使うメリットは、広範囲を自動で、かつ手軽にチェックできる点にあります。 特に、パターン化しやすい脆弱性(例えば、A03 インジェクションの一部、A05 セキュリティ設定ミス、A06 脆弱で古くなったコンポーネントなど)の発見に役立ちます。 ただし、ツールだけでは万全とは言えません。 複雑な手順が必要な攻撃や、設計上の問題(A01 アクセス制御の不備、A04 安全でない設計など)は見つけにくい傾向があります。 また、実際には問題ない箇所を脆弱性として検出してしまう「誤検知」も起こり得ます。 診断結果を正しく判断し、対応するには、ある程度の知識も必要です。 ツールによる診断は、あくまで最初のスクリーニング(ふるい分け)と捉えるのが良いでしょう。 ツールだけでは不安? 専門家診断で確実な安心を ツールでのチェックには限界があります。 そこで頼りになるのが、セキュリティ専門家による脆弱性診断です。 専門家は、攻撃者の視点に立って、ツールだけでは見逃してしまうような複雑な脆弱性(特にA01 アクセス制御の不備やA04 安全でない設計など)を発見することができます。 発見されたリスクの深刻度を正確に評価し、具体的な修正方法までアドバイスをもらえる点も大きなメリットです。 これは、社内だけでなく、顧客や取引先に対する信頼性の証明にも繋がります。 私たちIFTがこれまでに1,000件以上の診断を行ってきた経験からも、専門家による診断の重要性を実感しています。 もちろんコストはかかりますが、万が一、深刻なセキュリティインシデントが発生した場合の損害(復旧費用、賠償金、信用の失墜など)を考えれば、リスクを未然に防ぐための有効な投資と言えます。 【費用対効果大】最適な対策は「組み合わせ」にあり では、結局どう進めるのがベストなのでしょうか? システムの重要度や複雑さ、開発フェーズ、そして予算に応じて、ツール診断と専門家診断を最適に組み合わせることが、もっとも費用対効果を高めます。 有効な進め方の例 基本はツールで定期的にチェック: 日常的なチェックや、軽微な修正後の確認に活用します。 重要箇所や特に不安なリスクは専門家診断を検討: 特にリスクの高い箇所(個人情報や決済情報を扱う機能など) ツールでは発見しにくいリスク(A01, A04, A08, A10など)が懸念される場合 新規リリース前や、大規模な改修後など、重要なタイミングでの実施が効果的です。 継続的な監視と改善を忘れずに: 一度の診断で終わりではなく、継続的にセキュリティレベルを維持・向上させる意識が大切です。 株式会社アイ・エフ・ティでは、ツール診断の網羅性と専門家診断の深さを組み合わせた『ハイブリッド診断』を提供しています。 費用対効果の高い選択肢として、多くのお客様からご評価いただいています。 簡易的なクイック診断から、網羅的なハイブリッド診断、そして診断後のフォローアップまで、一貫してサポートいたします。 🔗ハイブリッド診断サービスページへ 「ツールだけだと、やっぱり不安が残る…」「うちのシステムには、どの診断方法が合っているんだろう?」 そんな疑問やお悩みをお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。 まとめ:ツールと専門家診断でOWASP Top10対策を ここまで、OWASP Top 10の重要性と10のリスク、そして対策の必要性について見てきました。 「OWASP TOP10 とは?」という疑問から始まり、Webセキュリティの基本として対策が不可欠であること、しかしその方法選びが重要であることをご理解いただけたかと思います。 対策としては、ツール診断×専門家診断の組み合わせが、費用対効果を高めるポイントになります。 OWASP Top 10はWebセキュリティ対策の基本指標 対策不足は深刻なビジネスリスクに直結 ツール診断は手軽だが限界あり 専門家診断は確実だがコストがかかる 「ツール+専門家」の組み合わせが費用対効果大 「自社に合う対策は?」「費用は?」そんな具体的な悩みに、私たち株式会社アイ・エフ・ティがお応えします。 1,000件を超える診断実績を持つ『ハイブリッド診断』は、ツールの網羅性と専門家の深い知見を組み合わせ、費用対効果の高いセキュリティ対策を実現します。 お客様の状況に合わせた最適なプランをご提案可能です。 まずはリスクの再確認から始め、より具体的な診断にご興味があれば、ぜひお気軽にご相談ください。 🔗ハイブリッド診断サービスページへ

DoSとDDoSの違いは?疑似体験で見えた本当の弱点と脆弱性対策の学び | サイバー攻撃

DoSとDDoSの違いは?疑似体験で見えた本当の弱点と脆弱性対策の学び

Webサイトやサービスを守る上で、「DoS攻撃」と「DDoS攻撃」の違いを理解することは、とても大切です。 言葉は聞いたことがあっても、 具体的に何が違い、どちらがより深刻なのか? 基本的な対策はしているけれど、本当にそれで十分なのだろうか? といった疑問をお持ちではないでしょうか。 この記事では、DoS攻撃とDDoS攻撃の明確な違いを解説するだけでなく、さらに一歩踏み込みます。 実際の攻撃をリアルなレポート風のシミュレーションで示し、その脅威とビジネスへの影響を具体的にイメージしていただけるよう解説します。 さらに、一般的な対策の「限界」と、多くの場合で見過ごされがちな根本原因、すなわち「脆弱性」に迫り、本当に必要な対策を解き明かしていきます。 長年のセキュリティ診断実績を持つIFTが、現場の視点から分かりやすく解説します。 この記事を読めば、こんな疑問が解決します! DoS攻撃とDDoS攻撃、具体的に何がどう違うの? どちらの攻撃がより深刻で、対策が難しいのはなぜ? DDoS攻撃を受けた時の、リアルな被害状況が知りたい ファイアウォールやWAFだけでは、なぜ対策として不十分なの? 攻撃を防ぐために、本当にやるべき「根本的な対策」とは? 自社のセキュリティ対策、どこから見直せばいい? まずは基本から!DoS攻撃とDDoS攻撃とは? まず本題に入る前に、DoS攻撃とDDoS攻撃の基本的な概要について、簡単におさらいしておきましょう。 これらの攻撃はどちらも、標的とするサーバーやネットワークに過剰な負荷をかけ、サービスを利用不能な状態に追い込む「サービス妨害攻撃」の一種です。 DoS攻撃とは? DoS攻撃(Denial of Service attack)は、基本的に「1台」のコンピューターから標的に対して、大量の処理要求や不正なデータを送りつける攻撃です。 攻撃を受けたサーバーは処理能力を超えてしまい、応答が遅くなったり、最悪の場合はサービスが停止したりします。 より詳しいDoS攻撃の仕組みや種類については、以下の記事で解説しています。 DDoS攻撃とは? DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、DoS攻撃をさらに強力にしたもので、「多数」のコンピューターから一斉に攻撃を仕掛けます。 攻撃者は、マルウェアなどに感染させて乗っ取った多数のコンピューター(これらを「ボット」と呼び、そのネットワークを「ボットネット」と呼びます)を遠隔操作し、標的に向けて大量のデータを送りつけるのが特徴です。 より詳しいDDoS攻撃の仕組みや近年の動向については、以下の記事をご覧ください。 DoS vs DDoS:その決定的な違いとは? DoS攻撃とDDoS攻撃は、どちらもサービス妨害を目的とする点は共通していますが、その性質や影響度には大きな違いがあります。 ここでは、両者の主な違いを整理して見ていきましょう。 攻撃規模・攻撃元の数・被害インパクト 最大の違いは、攻撃に関与するコンピューターの数です。 DoS攻撃: 攻撃者自身が用意した1台、または少数のコンピューターから攻撃が行われます。そのため、攻撃の規模や威力には限界があります。 DDoS攻撃: 数百、数千、場合によっては数十万台以上の「ボットネット」と呼ばれる乗っ取られたコンピューター群から、一斉に攻撃が行われます。これにより、DoS攻撃とは比較にならないほど大規模で強力な攻撃が可能になります。 この攻撃元の数の違いが、被害の深刻さや対策の難易度にも直結します。 DDoS攻撃では、短時間に膨大な量の不正な通信が押し寄せるため、サーバーやネットワーク機器が処理しきれず、大規模かつ長時間のサービス停止を引き起こす可能性が高まります。 例えば、2016年に発生した「Mirai」ボットネットによる攻撃では、セキュリティ対策が不十分な監視カメラやルーターといった10万台以上のIoT機器が悪用され、米国のDNSサービス大手Dyn社が標的となりました。 その結果、TwitterやNetflix、Amazonなど、世界的に有名な多くのWebサービスが数時間にわたり利用できなくなるという深刻な事態を引き起こしました。 引用:日経XTECH DNSサービスの「Dyn」に大規模DDoS攻撃、Twitterなどが影響受けダウン また、2021年に観測された「Meris」ボットネットによる攻撃では、ロシアの大手IT企業に対して毎秒2180万リクエストという、当時としては世界記録となる規模のトラフィックが送りつけられたと報告されています。 引用: ITmedia 新手の「疫病」ボットネットが仕掛ける大規模DDoS攻撃、威力はMiraiの3倍以上 このような桁違いの攻撃規模は、DDoS攻撃の脅威を如実に示しています。 表で見る両者の比較(難易度・検知方法など) DoS攻撃とDDoS攻撃の主な違いを以下の表にまとめました。 項目 DoS攻撃 DDoS攻撃 攻撃元 攻撃者の1台 or 少数のマシン 数千~数十万台のボットネット(分散) トラフィック規模 比較的限定的 非常に大規模になる可能性が高い 検知の容易さ 攻撃元IPが特定しやすいため比較的容易 攻撃元が多数・分散し、IP偽装も多いため検知が困難 防御の難易度 IPアドレス遮断などで対処しやすい 攻撃元の特定・遮断が困難。多層的な対策が必要 主な対策手段 ファイアウォール、アクセス制御リスト DDoS緩和サービス、CDN、WAF、専門ベンダーによる支援など総合的な対策が不可欠 被害の深刻度 部分的・一時的なサービス遅延/停止 大規模・長時間のサービス停止、ビジネスへの甚大な影響 このように、DDoS攻撃はDoS攻撃に比べて格段に対策が難しく、被害も深刻化しやすい傾向にあります。 攻撃元が世界中に分散している上に、IPアドレスを偽装しているケースも多いため、単純なIPアドレスベースの遮断では効果が薄く、正常なユーザーからのアクセスまでブロックしてしまうリスクも伴います。 そのため、DDoS攻撃への対策には、単純な防御策だけでなく、攻撃トラフィックを専門的に分析・洗浄するサービスや、コンテンツ配信を最適化する仕組み、そして何よりも攻撃の根本原因となりうるシステムの「脆弱性」への対処が大切になってきます。 【被害シミュレーション】実際のDDoS攻撃を疑似体験 理論や違いを理解したところで、実際にDDoS攻撃を受けると、企業や担当者はどのような状況に置かれることになるのでしょうか? リアルな状況を体験していただくために、 ここでは、ある架空のECサイト運営会社がDDoS攻撃を受けた際のインシデント対応を、レポート風に時系列で見ていきましょう。 インシデントレポート 対象企業: 株式会社サンプルコマース(中堅ECサイト運営) 発生日時: 202X年X月X日 午前9時15分 【発生】XX年X月X日 午前9時15分 週明けの月曜日、午前9時の業務開始とともに、ECサイトへのアクセスが徐々に増加し始めます。 普段通りの朝…のはずでした。 午前9時15分、社内の監視システムから、Webサーバーへの異常なトラフィック急増を示す通知が届きました。 ほぼ同時に、カスタマーサポート部門へ「サイトが表示されない」「カートに商品が入らない」といった顧客からの問い合わせ電話が複数入り始めます。 【状況①】顧客からのアクセス不能報告、同時多発アラート ITインフラ担当者は、すぐさま状況確認を開始。 監視ダッシュボードを見ると、外部からのネットワークトラフィック量が通常の10倍以上に跳ね上がり、WebサーバーのCPU使用率はほぼ100%に達しています。 アクセスログには、特定の海外IPアドレスレンジから、異常な数のアクセス試行が記録されていました。 「DoS攻撃か…?」 まず、攻撃元と疑われるIPアドレスをファイアウォールで手動ブロックする対応を試みます。 しかし、ブロックしてもすぐに別のIPアドレス帯からのアクセスが増加し、状況は一向に改善しません。 むしろ、アラートの数は増え続け、サイトは完全にアクセス不能な状態に陥っていました。 カスタマーサポートへの問い合わせ電話は鳴り止まず、社内は混乱に包まれ始めます。 【状況②】原因特定と対策の難航(発生〜6時間経過) 発生から6時間が経過。 ITインフラチームは不眠不休で対応にあたっていますが、攻撃の全容は依然として掴めていませんでした。 パケットキャプチャによる詳細な分析の結果、SYNパケットを大量に送りつけてサーバーのリソースを枯渇させる「SYNフラッド攻撃」が主体であることが判明。 しかし、攻撃元のIPアドレスは世界中に分散しており、その多くが偽装されている可能性が高い状況です。 IPアドレスベースでの防御は、もはや限界でした。 サーバーのスペック増強も試みましたが、押し寄せるトラフィック量に対しては「焼け石に水」の状態。 社内で導入していたWAF(Web Application Firewall)も、大量のコネクション要求そのものを捌ききれず、有効な防御策とはなっていませんでした。 対応に追われる中、チームメンバーの脳裏に、ある懸念がよぎります。 「そういえば、先月公開されたWebサーバーのミドルウェアに関する緊急度の高い脆弱性パッチ(CVE-202X-XXXX)、他の業務に追われて適用が後回しになっていたな…」 「WAFも導入時に推奨されたSYNフラッド対策のカスタムルール、設定が複雑そうでデフォルトのまま運用していた…」 これらの「後回し」が現状を招いた一因ではないか、という疑念がメンバーの心に重くのしかかります。 【状況③】ビジネスへの影響拡大(発生〜24時間経過) 攻撃開始から丸一日が経過しても、ECサイトは断続的にダウンしたままです。 この間、サイト経由の売上は完全にゼロ。 ちょうど開始したばかりの大型セール期間中だったこともあり、機会損失額は数千万円規模に達すると試算されました。 カスタマーサポート部門はクレーム対応に追われ続け、疲弊の色は隠せません。 SNS上では「#サンプルコマース繋がらない」というハッシュタグが拡散され、「サイバー攻撃を受けたらしい」「個人情報が漏洩したのでは?」といった憶測や不安の声が飛び交い、企業イメージは大きく傷つき始めていました。 経営陣は、自社だけでの完全復旧は困難と判断。 コストはかかるものの、外部の専門セキュリティベンダーへ緊急支援を要請することを決定します。 同時に、顧客への影響と原因調査のため、サービスを一時的に完全に停止するという苦渋の決断を下すことになりました。 【状況④】外部支援による原因究明と復旧(発生〜72時間経過) 外部セキュリティベンダーの支援が開始されました。 専門家による高度なトラフィック分析とログ解析の結果、攻撃手法はSYNフラッドに加え、特定のUDPポートを狙ったフラッド攻撃も組み合わされていたことが判明。 さらに、攻撃の踏み台となっていたボットネットの種類も特定されます。 そして、最も重要な発見として、チームメンバーが懸念していたWebサーバーのミドルウェアの脆弱性(CVE-202X-XXXX)が、攻撃の侵入経路、あるいは攻撃を増幅させる要因として悪用されていた可能性が高いことが指摘されました。 また、WAFの設定不備も防御効果を著しく下げていたことが明らかになりました。 ベンダーの助言に基づき、以下の対策が迅速に実施されました。 特定された脆弱性に対する緊急パッチの適用 WAFのシグネチャ更新とSYNフラッド対策用カスタムルールの適用 信頼できない送信元IPアドレスリスト(ブラックリスト)の適用強化 DDoS攻撃トラフィックを専門施設でフィルタリングするスクラビングセンターサービスへの一時的なトラフィック迂回 これらの対策が効果を発揮し、攻撃開始から約72時間後、ようやくECサイトは安定稼働を取り戻しました。 しかし、これで終わりではありません。 サービス復旧後も、 失われた顧客からの信頼回復に向けた広報活動 原因となった脆弱性への恒久的な対策計画の策定 インシデント対応プロセス(連絡体制、判断基準、外部連携フローなど)の抜本的な見直し といった、多くの課題が残されました。 このインシデント対応にかかった費用(外部ベンダー費用、機会損失、信頼回復コストなど)は、事前の対策コストを遥かに上回るものとなってしまったのです。   【注釈】 これは架空の事例です。レポート内に登場する企業名、個人名、日時、状況設定等はすべてフィクションであり、実在する企業、個人、団体とは一切関係がありません。 このシミュレーションは一例ですが、DDoS攻撃がいかに深刻な事態を引き起こし、ビジネスの根幹を揺るがしかねないか、リアルに感じていただけたのではないでしょうか。 インシデント事例から学ぶ教訓:脆弱性対策で見落としがちなポイント 先のインシデントシミュレーションは、私たちに多くの重要な教訓を教えてくれます。 特に、日頃のセキュリティ対策において見落とされがちな「脆弱性」に関するポイントを3つ、深く掘り下げていきましょう。 教訓1:「うちは大丈夫」という油断が最大の脆弱性 シミュレーションの担当者が抱いた「まさか自社がこれほど大規模な攻撃を受けるとは…」という思いは、多くの企業担当者が感じてしまうかもしれません。 「うちは規模が小さいから狙われない」「大手企業ほど価値のある情報はない」といった考えは、非常に危険な考え方と言えるかもしれません。 実際には、DDoS攻撃の標的は大手企業に限りません。 攻撃者は、セキュリティ対策が手薄な中小企業のサーバーや、あるいは一般家庭のルーター、IoT機器などを乗っ取り、それらを「踏み台」として利用します。 2021年のMeris攻撃では、脆弱性が放置された一般向けのルーター約25万台がボットネットの一部になったとされています。 つまり、自社のセキュリティ意識の低さが、意図せず他の企業への攻撃に加担してしまうリスクもある、ということです。 「うちは大丈夫」という根拠のない自信は、セキュリティ対策への投資や意識向上を妨げる最大の「脆弱性」と言えるでしょう。 常に「自社も狙われる可能性がある」という前提に立ち、対策を怠らない姿勢が大切です。 教訓2:パッチ管理・設定不備が攻撃者に絶好の機会を与える シミュレーションの中で、担当者が「パッチ適用が後回しになっていた」「WAFの設定がデフォルトのままだった」と気づく場面がありました。 これは、実際のインシデント現場でも、非常によく耳にする話です。 ソフトウェアやミドルウェアには、日々新たな脆弱性が発見されます。 開発元からは、それらを修正するためのセキュリティパッチが提供されますが、日々の業務に追われて適用が遅れたり、適用によるシステム影響を懸念して見送られたりすることが少なくないのが現実です。 また、ファイアウォールやWAFなどのセキュリティ機器も、導入しただけで満足してしまい、自社の環境に合わせた適切な設定やチューニングが行われていないケースが見受けられます。 2016年のMirai攻撃では、初期パスワードが変更されていないIoT機器が主な標的となりました。 このように、基本的なパッチ管理の徹底や設定の見直しを怠ることは、攻撃者にとって格好の侵入口を提供してしまうことになってしまいます。 セキュリティ対策は「導入して終わり」ではなく、継続的な運用管理がとても大切です。 教訓3:インシデント発生時の対応コストは、事前対策コストを遥かに上回る シミュレーションの最後で触れたように、インシデントが発生してからの対応には、多大なコストがかかってしまいます。 外部ベンダーへの緊急対応費用、サービス停止による売上損失、顧客対応のための人件費、信頼回復のための広報費用、そして事後のシステム改修費用…。 これらを合計すると、事前に適切な対策(例えば、DDoS対策サービスの導入や定期的な脆弱性診断)を行っていた場合のコストを遥かに上回ることがほとんどだと言えそうです。 「セキュリティ対策はコストがかかる」と考えられがちですが、インシデント発生時の損失と比較すれば、事前対策はむしろ将来のリスクを低減するための「投資」と捉えるのが自然かもしれません。 経営的な視点からも、インシデントによる事業継続への影響を考慮し、予防的なセキュリティ対策の費用対効果を正しく評価することが大切になってきます。 これらの教訓を踏まえ、次のセクションでは、一般的な対策とその限界について見ていきましょう。 まずは知っておきたい、一般的なDoS/DDoS対策とその限界 DDoS攻撃の脅威を理解した上で、どんな対策があるでしょうか。 ここでは、一般的に知られている対策とその効果、そしてそれだけでは不十分な理由、つまり「限界」について見ていきましょう。 ネットワークレベルでの防御(ファイアウォール、IP制限、帯域確保) ファイアウォールやアクセス制御リスト(ACL)を用いて不正アクセスや不要な通信を制限したり、十分なネットワーク帯域を確保したりすることは、ネットワークレベルでの基本的な防御策です。 これにより、ある程度のトラフィック増加に対する耐性を高める効果が見込めます。 しかし、大量かつ偽装されたIPアドレスからのDDoS攻撃に対しては、IPアドレス制限だけでは対処が困難です。 また、大規模な攻撃に対しては、自社で確保している帯域だけでは不十分な場合(まさに「焼け石に水」の状態)や、防御機器自体が過負荷になってしまう可能性も考えられます。 <主な対策例> ファイアウォールルールの定期的な見直し・最適化 Geo-IPフィルタリング(国別IP制限)の検討 ネットワークトラフィックの常時監視と早期異常検知 ISP(インターネットサービスプロバイダ)などが提供するDDoS対策オプションの利用 <限界と次の一手> ネットワーク入口での対策は基本ですが、大規模なDDoS攻撃や設定不備のリスクは残ります。 ネットワーク構成自体の安全性を客観的に評価するには、「プラットフォーム診断(ネットワーク診断)」で潜在的なリスクを洗い出すことが役に立ちます。 アプリケーションレベルでの防御(WAF) WAF(Web Application Firewall)は、自社が提供するWebアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃や、特定のHTTP/HTTPSベースのDoS/DDoS攻撃を検知・遮断するのに効果を発揮します。 通信内容を詳細に分析し、不正なアクセスをより正確に見分けやすくなります。 一方で、SYNフラッド攻撃のようなネットワーク層レベルでの大量パケット攻撃への防御には限界があります。 また、大規模な攻撃時にはWAF自体が処理限界に達する可能性も考えておく必要があります。 さらに、その効果を維持するためには、継続的なシグネチャ更新や、自社環境に合わせたチューニングが欠かせません。 <主な対策例> WAFのシグネチャを常に最新の状態に保つ 自社のアプリケーションに合わせたカスタムルールを作成し、防御精度を高める WAFのログを定期的に監視・分析する 可能であれば、スケーラビリティの高いクラウド型WAFを選択する <限界と次の一手> WAFは強力な盾ですが、万能ではありません。 WAFをすり抜ける攻撃や、アプリケーション固有の脆弱性を突かれるリスクは残ります。 WAFの効果を最大化し、根本的な弱点を解消するには、「Webアプリケーション診断」で脆弱性を特定・修正することが大切です。 また、スマートフォンアプリを提供している場合は、アプリ自体の脆弱性がバックエンドAPIへの攻撃につながる可能性もあるため、スマートフォンアプリケーション診断も併せて検討することが、より包括的な対策となります。 コンテンツ配信の最適化(CDN) CDN(Content Delivery Network)は、コンテンツをキャッシュ配信することでオリジンサーバー(元のサーバー)の負荷を軽減します。 また、地理的に分散されたサーバーで攻撃トラフィックを吸収・分散させる効果も見込めます。 ただし、CDN自体が攻撃対象となる可能性や、動的なコンテンツやAPI通信などは保護しきれないケースもあります。 また、利用するCDNサービスによってDDoS対策機能のレベルが異なる点にも気をつけたい点です。 <主な対策例> DDoS対策機能が充実したCDNサービスを選択する キャッシュ設定を最適化し、オリジンサーバーへの負荷を極力減らす オリジンサーバーへの直接アクセスを制限する(CDN経由のアクセスのみ許可するなど) CDNの監視・アラート機能を活用する <限界と次の一手> CDNは負荷分散に有効ですが、オリジンサーバー自体の安全性が確保されていなければ意味がありません。 CDNに隠れたオリジンサーバーに脆弱性が残っていないか、脆弱性診断で確認し、根本的な対策をしっかり行っておくことが大切です。 システムの健全性維持(パッチ管理、設定見直し、脆弱性診断) OSやミドルウェアなどのセキュリティパッチを適用して既知の脆弱性を修正したり、不要なサービスを停止したり、パスワードを強化したりといった基本的な設定を見直したりすることは、システムの健全性を維持する上でとても大切です。 これらは攻撃の足がかりを減らす効果が期待できます。 そして、もっとも根本的かつ効果的な対策が「脆弱性診断」です。 自社では気づきにくいシステムの弱点を専門家の視点で特定し、修正することで、攻撃のリスクを大幅に減らすことができます。 しかし、未知の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)への対応は困難であり、パッチの適用漏れや設定ミスといったヒューマンエラーのリスクは常につきものです。 <主な対策例> 脆弱性管理プロセスを確立し、セキュリティパッチを迅速かつ計画的に適用する 不要なサービス・ポート・アカウントを定期的に見直し、整理する 複雑なパスワードの使用と適切な管理を徹底する 定期的な脆弱性診断(Webアプリケーション診断やプラットフォーム診断など)を実施し、システム全体のセキュリティリスクを網羅的に洗い出し、修正する <日々の運用だけでは不十分な理由と次の一手> パッチ適用や設定見直しは重要ですが、日々の運用だけでは見落としやミスが発生しがちです。 基本的な対策が本当に有効か、他に弱点はないかを確認するには、専門家による定期的な脆弱性診断が一番確実な方法だと言えそうです。 診断によってリスクを可視化し、優先順位をつけて対策を進めることが、真のセキュリティ強化につながっていくのです。 なぜ表面的な対策だけでは不十分なのか?根本原因「脆弱性」への対処 上記で紹介した対策は、それぞれ有効な場面もありますが、共通しているのは「対症療法」的な側面が強い、という点が挙げられます。 攻撃トラフィックをブロックしたり、負荷を分散させたりすることはできますが、攻撃者が悪用するシステムの根本的な「弱点=脆弱性」そのものを取り除くわけではないのです。 攻撃者は常に新しい手法を生み出し、システムの脆弱性を探し続けています。いくら入口で防御策を講じても、システム内部に未修正の脆弱性が残っていれば、そこを突かれて攻撃が成功してしまうリスクがあります。 先のシミュレーションでも、パッチ未適用の脆弱性が攻撃を深刻化させる一因として影響していました。 したがって、真に効果的な対策を実現するためには、これらの一般的な防御策に加えて、自社システムに潜む「脆弱性」を定期的に発見し、修正していくという、より根本的な考え方が重要になってきます。。 あなたの会社のセキュリティ体制は万全か? 脆弱性リスクセルフチェック これまでの内容を踏まえ、貴社のセキュリティ体制、特に脆弱性対策について、一度立ち止まってチェックしてみましょう。 以下の項目について、自社の状況を正直にチェックしてみてください。 定期的な脆弱性診断を実施し、発見された脆弱性に対して計画的に対策を行っていますか?(最重要) サーバーOSやミドルウェア、利用しているソフトウェアのセキュリティパッチ情報を常に収集し、速やかに適用する体制が整っていますか? ファイアウォールやWAFを導入している場合、その設定は定期的に見直され、自社の環境に合わせて最適化されていますか? ルーターやIoT機器など、ネットワークに接続される機器のファームウェアは最新の状態に保たれていますか? また、初期パスワードは変更されていますか? 不要なサービスやポートが外部に公開されたままになっていませんか? アクセス権限は適切に管理されていますか? DDoS攻撃を想定したインシデント対応計画(連絡体制、役割分担、外部ベンダーとの連携フローなど)は明確になっていますか? 従業員に対して、基本的なセキュリティ対策(パスワード管理、不審なメールへの注意など)に関する教育や注意喚起を行っていますか? どうでしたか? もし、チェックできない項目が複数あったり、「最重要」と記した脆弱性診断の実施ができていない場合には、貴社のシステムには、DDoS攻撃を含むサイバー攻撃のリスクが潜んでいるかもしれません。 まとめ:深刻な被害を未然に防ぐために。今すぐ始める脆弱性対策 この記事では、DoS攻撃とDDoS攻撃の基本的な違いから始まり、架空のインシデントレポートを通じてDDoS攻撃がもたらすリアルな脅威とビジネスへの影響を疑似体験する形でお伝えしてきました。 そして、その教訓から、一般的な対策の限界と、根本原因である「脆弱性」への対策がいかに重要であるかを説明してきました。 しかし、深刻な被害を未然に防ぐために一番大切なのは、自社システムに潜む脆弱性を正確に把握し、計画的に対処していくことです。 先のセルフチェックで不安を感じた方は、まず以下のステップから始めてみることをおすすめします。 現状把握: 自社で利用しているシステム、ソフトウェア、ネットワーク機器のリストを作成し、それぞれのバージョン情報や設定状況を確認する。 情報収集: 利用している製品に関する脆弱性情報や、セキュリティパッチのリリース情報を定期的にチェックする体制を整える。 専門家への相談: 自社だけでの対応に不安がある場合、セキュリティ専門家やベンダーに相談する。 特に、定期的な「脆弱性診断」は、自社では気づきにくいシステムの弱点を専門家の視点から洗い出す上でとても有効な方法だと言えます。 診断結果に基づいて具体的な対策を進めることで、セキュリティレベルを効果的に高めることにつながります。 DDoS攻撃のリスクは、決して他人事ではありません。 この記事が、貴社のセキュリティ対策を見直し、具体的な行動を起こすきっかけとなれば嬉しく思います。

Webアプリケーション診断とは?その効果と必要・不要の見極め方を専門家が解説 | 脆弱性診断とは

Webアプリケーション診断とは?その効果と必要・不要の見極め方を専門家が解説

自社のWebサイトやサービスのセキュリティ、「本当に大丈夫?」と不安を感じていませんか? 「『Webアプリケーション診断』を耳にするけれど、具体的に何をするの?」 「費用はどれくらい?」 「そもそも、うちの会社にも必要なの?」 このような疑問や不安、もしかしたらあなたも感じていませんか? その有効な対策の一つが「Webアプリケーション診断」です。 この記事では、Webアプリケーション診断の基本からメリット、導入時に考慮すべき点、そしてどんな企業・サービスで特に必要性が高いのかを、分かりやすく解説していきます。 この記事を読めば、こんな疑問が解決します! Webアプリケーション診断って、そもそも何をするもの? 診断を受けると、どんなメリットがあるの? 導入する時に気をつけるべき点(費用・期間・注意点)は? うちの会社(サービス)には、本当に必要な診断なの? 逆に、診断の優先度が低いケースもある? Webアプリケーション診断とは? 基本を知ろう まず、「Webアプリケーション診断」がどのようなものなのか、基本を押さえておきましょう。 Webアプリケーション診断の目的と対象範囲 Webアプリケーション診断とは簡単に言うと、これは Webサイトやサービスを動かしているプログラム(アプリケーション)に潜む、セキュリティ上の弱点(脆弱性)を見つけ出すための検査 のことです。 情報漏洩、サイト改ざん、サービス停止につながるような設計上のミスやプログラムのバグを発見し、その危険度を評価することを目的に行われます。 具体的には、ネットショッピングの購入機能、会員サイトのログイン機能、お問い合わせフォームといった、ユーザーが操作する部分(Webアプリケーション)に対して、 攻撃者の視点からわざと不正な操作やデータを送り、問題が起きないかをテスト します。 ここで重要なのは、診断の対象が「Webアプリケーションそのもの」であるという点です。 OS(オペレーティングシステム)やサーバー機器の弱点を調べる「プラットフォーム診断」とは異なり、あくまでWeb上で動作するプログラムの安全性に特化した診断なのです。 プラットフォーム診断とWebアプリケーション診断の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。 Webアプリケーション診断の診断項目 では、具体的にどのようにしてWebアプリケーションの弱点を見つけ出すのでしょうか? 診断は、 実際の「攻撃者」と同じ視点 で行われます。 つまり、悪意を持ってシステムを攻撃しようとする人の考え方やテクニックを模倣して、わざと不正な操作やデータを送り込み、アプリケーションが予期せぬ動作をしないか、情報が漏れたりしないかなどをテストするのです。 一般的には、 自動化された「診断ツール」 と、 経験豊富な専門家による「手動診断」 を組み合わせて行われます。 診断ツール: 既知の典型的な脆弱性のパターンを効率的にスキャンし、網羅的にチェックするのに役立ちます。 手動診断: ツールだけでは見つけにくい、アプリケーションの複雑なロジックの穴、設定ミス、認証・認可の不備、あるいは複数の手順を踏むことで初めて悪用可能になるような巧妙な問題点を、専門家が知識と経験に基づいて一つひとつ丁寧に検証していきます。 具体的には、以下のような多岐にわたる観点から、様々な項目をチェックしていきます。 観点(種別) 説明 主な確認項目例 入力値検証 ユーザーからの入力データ(フォーム、URLパラメータ等)が適切に処理されているか。不正な入力で予期せぬ動作をしないか。 クロスサイトスクリプティング(XSS) SQLインジェクション OSコマンドインジェクションディレクトリトラバーサル XML外部実体参照(XXE) SSRF 認証 ユーザーが本人であることを確認する仕組みは安全か。なりすましや不正ログインを防げているか。 ブルートフォース攻撃耐性 パスワードポリシー アカウントロック機構 多要素認証の実装不備 認証回避 認可(アクセス制御) ログイン後、ユーザーに許可された範囲の操作・情報にしかアクセスできないよう制御されているか。 不適切なアクセス制御(権限昇格など) 直接オブジェクト参照(IDOR) 機能レベルのアクセス制御不備 セッション管理 ユーザーのログイン状態(セッション)は安全に管理されているか。セッションIDの漏洩や乗っ取り(ハイジャック)を防げているか。 セッションIDの推測可能性・固定化 セッションタイムアウト セッションハイジャック対策 クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)対策 出力処理・情報漏洩 アプリケーションからユーザーに返される情報に、意図しない機密情報やエラー詳細が含まれていないか。 エラーメッセージからの情報漏洩 デバッグ情報・コメント等の露出 不適切なエンコーディング 暗号化 パスワードや個人情報などの機密データが、保存時や通信時に適切に暗号化されているか。 機密情報の平文保存・通信 不適切な暗号アルゴリズムの使用 SSL/TLS設定の不備(証明書検証含む) セキュリティ設定 Webサーバーやアプリケーションフレームワーク等の設定は安全か。不要な機能が無効化されているか。 HTTPSの強制、HSTS設定 セキュリティヘッダ(CSP, X-Frame-Options等) 不要な情報の露出(サーバー情報等 Cookie属性(Secure, HttpOnly等) ファイルパーミッション ビジネスロジック アプリケーションの機能や業務フローそのものに、悪用可能な設計上の欠陥はないか。 機能の不正利用 パラメータ改ざんによる不正操作 競合状態(Race Condition) APIセキュリティ Webアプリケーションが利用するAPI(外部・内部)の認証・認可や入力検証は適切か。 API認証・認可の不備 不適切な入力検証 過度なデータ公開 レート制限の不備 上記は代表的な項目であり、診断対象やプランによって詳細は異なります。 このように、ツールと専門家の目を組み合わせることで、Webアプリケーションに潜む様々な種類のリスクを、より深く、多角的に洗い出していくのが、Webアプリケーション診断の具体的な進め方です。 Webアプリケーション診断が役立つのは、こんな場面 では、Webアプリケーション診断は、具体的にどのような場面で力を発揮するのでしょうか? 特に役立つ4つのケースを見ていきましょう。 ① サービス固有の弱点を見つけたい時 Webアプリケーション診断が特に有効なのは、OSやネットワークといった土台部分の一般的な診断では見つけにくい、 そのサービス(アプリケーション)ならではの脆弱性を発見したい 場面です。 サービス独自の機能や、認証、決済といった複雑な処理の部分には、どうしても設計ミスや実装の不備が潜みやすいものです。 Webアプリケーション診断は、まさにこのアプリケーション層に焦点を当てて検査するため、プラットフォーム診断などでは見逃されがちな サービス固有のリスク を的確に洗い出すのに役立ちます。 ② 攻撃者のリアルな視点で検証したい時 「もし自分が攻撃者だったら、どうやってこのサービスを攻略するか?」—— このように、 実際の攻撃者の考え方や手法を真似て、自社のサービスをテストしたい 場合にも、Webアプリケーション診断(特に専門家による手動診断)は非常に有効です。 自動ツールだけでは発見が難しい巧妙な脆弱性や、ビジネス上の処理手順の穴(ビジネスロジックの欠陥)などを探し出すことができます。 このような実践的なテストを通じて、 本当に危険度の高い問題点 を特定し、より効果的な対策を立てることに繋がるでしょう。 ③ 開発段階やリリース前にリスクを潰しておきたい時 新しいWebアプリケーションを開発している最中や、リリースを間近に控えている段階で、「潜在的なセキュリティ問題を事前に潰しておきたい」と考えるのは自然なことです。 Webアプリケーション診断は、まさにそのために役立ちます。 脆弱性を抱えたままサービスを公開・運用するのは非常に危険です。 診断によって 実際に被害が発生する前に問題点を発見し、修正する ことが可能になります。 これは、将来起こりうるインシデント対応にかかるコスト(復旧費用、賠償金、信用回復など)を考えれば、非常に価値のある「転ばぬ先の杖」と言えるでしょう。 早期に問題を発見し修正することは、結果的に開発全体の効率化にも貢献します。 ④ 監査対応や取引先への信頼性を示したい時 業界のセキュリティ基準(例えば、クレジットカード情報保護のためのPCI DSS)への対応が求められる場合や、取引先からセキュリティ対策の状況について説明を求められる場面でも、Webアプリケーション診断は力を発揮します。 第三者の専門機関による診断レポート は、自社のセキュリティ対策レベルを客観的に示す強力な証拠となります。 「専門家による診断を受け、見つかった問題点に適切に対処している」ことを具体的に示すことで、 監査基準への適合を証明したり、取引先からの信頼を得やすく なったりと、ビジネスを円滑に進める上で有利に働くことが期待できます。 Webアプリケーション診断導入を検討する際の注意点 Webアプリケーション診断は有効な対策ですが、導入にあたっていくつか注意しておきたい点もあります。 以下のケースに当てはまる場合は、期待通りの効果が得られなかったり、別の問題が生じたりする可能性も考えられますので、慎重な検討が必要です。 ① 予算が限られている場合 質の高い診断、特に専門家が手作業で行う診断(手動診断)には、それ相応の費用がかかります。 これは、診断に高度な専門スキルと多くの時間が必要になるためです。 したがって、 セキュリティ対策にかけられる予算が非常に限られている場合 は注意が必要です。 無理にコストを抑えようとして安価すぎる診断を選ぶと、表面的なチェックしかできず、肝心な脆弱性を見逃してしまう可能性があります。 診断は「予防のための投資」という側面が強いですが、その投資自体が難しい状況では、費用対効果を慎重に見極める必要があります。 まずは 診断範囲を重要な機能に絞る、あるいは他の対策(例えばWAFの導入など)を優先する といった検討も必要になるでしょう。 ② スケジュールに余裕がない場合 丁寧な診断プロセス、特に規模の大きなシステムや詳細な手動検査を含む場合、診断の準備から報告書の提出までには 数週間から1ヶ月程度の期間 を見込むのが一般的です。 そのため、 リリース日が迫っているなど、スケジュールに全く余裕がない場合 は注意が必要です。 診断には、品質を担保するために必要な時間というものがあります。 無理に期間を短縮しようとすれば、検査が不十分になる恐れがあります。 「とにかく早く形式的な結果だけ欲しい」という状況では、診断の十分な効果は期待できないかもしれません。 開発計画の段階で、診断のための期間を十分に確保しておく ことが理想です。 もし難しい場合は、診断内容を限定したり、リリース後の実施を検討したりする必要があるでしょう。 ③ ツール診断だけに頼りたい場合 自動診断ツールは効率的に検査を進められますが、それだけで 全ての脆弱性(特に、ビジネスロジックの欠陥や未知の脅威など)を発見できるわけではありません。 もし、 「ツールだけで手軽に済ませたい」とお考えの場合 は、特に注意が必要です。 ツールには限界があり、ツールの結果だけで「安全だ」と判断してしまうと、 重大なリスクを見逃してしまう危険性 があります。 ツールの特性を理解した上で補助的に活用するのは有効ですが、過信は禁物です。 もっとも確実性を高めるには、 専門家の目(手動診断)と組み合わせたハイブリッド診断 を推奨します。 もちろん、ツールにも様々な種類があり、その特性を理解した上で補助的に利用することは有効です。 ツールの種類や機能、選ぶ場合のポイントについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 ④ 「今回限り」の診断で終わらせるつもりの場合 Webアプリケーションを取り巻く脅威や環境は常に変化しています。 そのため、 一度診断を受けただけで、永続的な安全性が保証されるわけではありません 。 アプリケーションの改修や新たな攻撃手法の出現に対応するには、定期的なチェックが理想的です。 したがって、 「今回一度きりの診断で、今後は特に何も予定していない」と考えている場合 は、少し注意が必要です。 その診断の効果は一時的なものとなり、時間が経つにつれて新たなリスクが発生する可能性があります。 継続的なセキュリティ対策という観点からは、 単発の診断をどのように位置づけ、その後の変化にどう対応していくか をあらかじめ考えておくことが大切になります。 Webアプリ診断の必要性が特に高い企業・サービス では、具体的にどのような企業やサービスで、Webアプリケーション診断の必要性が高いと言えるのでしょうか? ご自身の状況と照らし合わせてみてください。 Webサービス運営企業 ECサイト SaaS(Software as a Service) オンラインバンキング 予約サイト 会員制サイト オンラインゲーム など インターネット経由で顧客にサービスを提供している企業は、診断の優先度が高いと言えます。 不特定多数のユーザーがアクセスし、機能も多岐にわたるため攻撃対象になりやすく、万が一被害に遭った場合の影響も甚大 です。 サービスを安全に提供し続けるためには、定期的な脆弱性チェックが不可欠でしょう。 アプリケーションの更新頻度が高い企業 アジャイル開発などで頻繁に機能追加や改修を行っているWebアプリケーションも、診断の重要性が高まります。 変更を加えるたびに、意図せず新たな脆弱性を作り込んでしまうリスクが高まるためです。 リリース前や定期的な診断によってリスクを早期に発見・対処し、スピーディーな開発とセキュリティ確保の両立を目指しましょう。 顧客データを扱う企業 個人情報 ログイン情報(ID・パスワード) 決済情報(クレジットカード番号など) 上記のような機密性の高い情報を扱っている場合、Webアプリケーション診断は必須レベルで検討すべきです。 万が一これらの情報が漏洩した場合、顧客への直接的な被害はもちろん、企業の信用失墜、損害賠償、法的な責任追及など、事業の存続に関わるほどの深刻な損害に繋がる可能性があります。 顧客の大切な情報を守り、信頼を維持するためにも、最優先で対策すべき領域と言えます。 セキュリティインシデントが心配な企業 過去にセキュリティインシデント(事故)を経験したことがある。 同業他社での被害事例を見て、自社にもリスクを感じている。 経営層からセキュリティ強化の指示が出ている。 現状のセキュリティ対策に、漠然とした不安を感じている。 このように具体的な懸念がある場合も、Webアプリケーション診断は有効な第一歩となります。 診断を受けることで、自社が抱えるリスクを客観的に把握できます。 「何が危ないのか分からない」という状態から、「ここに具体的な問題がある」という認識に変わることで、的確な対策を講じることが可能になります。 これらのケースに当てはまる場合は、Webアプリケーション診断の導入を真剣に検討することをお勧めします。 また、 スマートフォン向けのアプリも提供している場合 は注意が必要です。 スマホアプリが通信するAPI(サーバー側のプログラム)や、アプリ自体の脆弱性が、Webサービス全体への攻撃の「入り口」となる可能性もあります。 そのため、 スマートフォンアプリに特化した「スマートフォンアプリケーション診断」 を別途導入することも強くお勧めします。 他の対策を優先した方が良いケースも 一方で、Webアプリケーション診断が必ずしも最優先の対策ではない、あるいは他の対策を検討した方が良いケースもあります。 ただし、これは「絶対に不要」という意味ではなく、 「優先度が低い可能性がある」 という視点でご覧ください。 OSやネットワーク設定の不安が大きい場合 懸念の中心がWebアプリケーションそのものではなく、 サーバーOS、ミドルウェア(Webサーバーソフトなど)、ネットワーク機器の設定不備や既知の脆弱性 にある場合、Webアプリケーション診断は直接的な解決策になりにくいことがあります。 この場合は、OSやネットワーク層、ネットワーク機器を対象とする「プラットフォーム診断」を優先的に検討する方が効果的でしょう。 非常にシンプルなアプリケーションを運用している場合 HTMLとCSSだけで作られた、動きのない静的なWebサイト や、 利用者がごく一部の社員に限られる、非常にシンプルな社内ツール など、ユーザーからの入力や動的な処理がほとんどない場合、Webアプリケーション特有の脆弱性リスクは相対的に低いと言えます。 このようなケースでは、高額な診断費用に見合う効果が得られない可能性も考えられます。 ただし、以下の点には注意が必要です。 サイトを動かしている Webサーバー自体の脆弱性 は別途確認が必要です(これはプラットフォーム診断の範囲です)。 将来的に機能を追加・拡張する予定 があれば、そのタイミングで診断を検討しましょう。 CMS(特にWordPress)を利用している場合 は注意が必要です。CMS本体や、追加したプラグインの脆弱性が攻撃の標的になりやすいため、診断の必要性が高まります。 (※WordPressをご利用の場合、本格的な診断の前に、まずはWordPress向けの無料脆弱性診断ツールで状況を確認してみる、という方法もあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。) これらの点を踏まえ、CMSを使っていなくて機能拡張の予定もないなど、 「アプリケーション部分のリスクが極めて低い」と明確に判断できる場合 に限っては、診断の優先度を下げるという選択肢もあり得ます。 脆弱性修正のための人員や時間が確保できない場合 診断で脆弱性が見つかったとしても、それを修正するための開発リソース(人員、時間)を確保できなければ、診断の効果は半減してしまいます。 「脆弱性が見つかっても直せない」という状態では、診断を行う意味が薄れてしまいます。 このような場合は、 WAF(Web Application Firewall)の導入など、比較的安価で導入できる他の対策を優先する。 診断範囲を特に重要な機能に絞り込み 、コストと修正にかかる作業量を抑える。 OSのアップデートや不要なサービスの停止など、基本的なセキュリティ対策を徹底する。 といった代替案を検討しましょう。 診断を依頼する前に、「見つかった問題を修正する体制が整っているか」を現実的に評価することが重要です。 これらのケースでは、診断導入を急がず、自社の状況を客観的に評価し、他の選択肢も含めて最適な対策を検討することをお勧めします。 もし判断に迷う場合は、専門家へ相談してみるのが良いでしょう。 まとめ:自社に合ったセキュリティ対策の第一歩を 今回は、Webアプリケーション診断について、その基本から有効な場面、注意点、そして必要性の判断基準まで解説しました。 この記事のポイント Webアプリの脆弱性は、 深刻なリスク に繋がる可能性。 診断は、アプリ固有の弱点を 攻撃者視点 で発見し、 被害を未然に防ぐ 有効な手段。 コスト・時間 は必要だが、将来の損失を防ぐための「投資」と捉えるべき。 機密情報取扱、EC/金融系、更新頻度の高いアプリ では特に推奨。 OS/ネットワーク中心の懸念、シンプルなアプリ、修正リソースがない場合は、 他の対策を優先 する判断も。 重要なのは、Webアプリケーション診断が万能ではないことを理解し、自社の状況(サービスの特性、抱えているリスク、利用できるリソースなど)に合わせて、最適な対策を選択・実行していくことです。 「うちのサービスの場合、Webアプリ診断は本当に必要?」 「具体的な費用感を知りたい」 「プラットフォーム診断とどっちが良いか、専門家の意見を聞きたい」 もしこのようにお考えでしたら、ぜひ一度、弊社アイ・エフ・ティにご相談ください。 お客様の状況を丁寧にお伺いし、経験豊富な専門家が、最適な診断プランのご提案や概算費用、他の診断との比較など、具体的なアドバイスをさせていただきます。 まずは情報収集として、お気軽にご利用ください。

プラットフォーム診断とは? 自社に必要か見極める判断基準と効果・注意点 | 脆弱性診断とは

プラットフォーム診断とは? 自社に必要か見極める判断基準と効果・注意点

自社のサーバーやネットワーク機器といったITインフラのセキュリティ、「Webアプリケーション診断だけ」で本当に安心できるでしょうか。 十分に目が届きにくいシステムの「土台」部分に潜む脆弱性が、 重大なインシデントを引き起こすケースもしばしば見られます。 そこで大切になるのが、OSやミドルウェア、ネットワーク機器の安全性をチェックする『プラットフォーム診断』です。 この記事では、プラットフォーム診断とは何か、その効果や受ける際の注意点、そして自社にとって本当に必要かどうかの判断基準まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。 この記事を読むことで、こんな疑問が解決します プラットフォーム診断とは、具体的に何をするものか。 診断を受けることで、どのような効果が期待できるか。 診断を受ける際に、考慮しておきたい点は何か。 自社にとって、プラットフォーム診断は必要なのか。 逆に、診断の優先度が低いのはどのようなケースか。 プラットフォーム診断とは? 「プラットフォーム診断」という言葉は耳にしたことがあっても、具体的に何を行い、なぜそれが大切なのか、まだはっきりとイメージできていない方もいらっしゃるかもしれません。 ここではまず、プラットフォーム診断の基本的な考え方についてご説明します。 プラットフォーム診断の目的と診断対象 プラットフォーム診断とは、サーバーやOS、ネットワーク機器といったITインフラの「土台」に潜むセキュリティ上の弱点を特定するための、いわば「精密検査」です。 その役割は、大きく以下の二つに分けられます。 一つは、インフラ基盤に隠れた「弱点」を専門家の目で発見することです。 例えば、 古いソフトウェアや既知の脆弱性の放置。 不適切な設定(開かれた通信ポート、緩いアクセス権限など)。 推測されやすいパスワードや初期設定パスワードの使用。 不要なサービスの稼働。 セキュリティパッチの適用漏れ。 といった、攻撃の糸口となり得る問題点を、隅々までチェックします。 そしてもう一つは、発見された弱点が実際にどの程度の危険性を持つのかを評価し、「どのように改善すれば安全性を高められるか」という具体的な対策を示すことです。 これにより、攻撃の糸口をなくし、システム全体の防御力を高め、皆様の安定した事業継続を支えます。 この診断でチェックするのは、皆様のアプリケーションが日々稼働している、まさにその基盤となる部分です。 具体的には、以下のようなものが対象となります。 カテゴリ 具体的な対象例 サーバー • Webサーバー • データベースサーバー • メールサーバー • ファイルサーバー • Active Directoryサーバー OS(オペレーティングシステム) • Windows Server • Linux • macOS ミドルウェア • Apache, Nginx • IIS(Webサーバーソフト) • MySQL • PostgreSQL(データベースソフト) ネットワーク機器 • ルーター • ファイアウォール(FW) • VPN装置 • ロードバランサー(LB) • 無線LANアクセスポイント(AP) このようにプラットフォーム診断は、システムの基盤となる幅広い要素について、設定やバージョン、既知の脆弱性の有無などを調査し、潜むリスクを洗い出してインフラ全体の安全性を評価する上で役立ちます。 プラットフォーム診断の診断項目 プラットフォーム診断では、システムの「土台」であるインフラ基盤のセキュリティを多角的に評価するため、非常に幅広い項目をチェックします。 これは、攻撃者が狙うポイントは一つとは限らず、OSの脆弱性、ネットワーク設定の不備、あるいは認証の甘さなど、様々な要素を組み合わせて侵入を試みてくるためです。 一部分だけを対策しても他の部分に穴があれば意味がありません。 だからこそ、基盤全体を網羅的に検証し、あらゆる角度からのリスクを洗い出すことが求められます。 主に、以下のような観点で確認を行います。 観点(カテゴリ) 主な確認項目例 ネットワーク通信とサービス (ポートスキャン、サービス特定) • 開放されている通信ポート(TCP/UDP)の特定 • 稼働中サービス(Web, Mail, DNS, FTP等)の種類とバージョン確認 • 不要または危険なサービスの稼働有無 OS・ミドルウェアの健全性 (脆弱性検査) • OS・ミドルウェアのバージョン確認とパッチ適用状況 • 既知の脆弱性情報(CVE等)との照合 • サポート切れOS・ソフトウェアの使用有無 認証・アカウント管理 (アカウント検査) • デフォルトアカウント・共有アカウントの有無 • パスワードの強度・ポリシー・初期設定の確認 • アカウントロックアウト設定 • 不適切な認証許可(例:パスワード認証SSH, Anonymous FTP, Nullセッション) ネットワークサービス固有の問題 • 特定サービス(DNS, Mail, NTP等)における危険な設定(例:ゾーン転送、第三者中継、時刻同期不備) • データベースサーバーへの外部からの直接アクセス可否 ネットワーク機器固有の問題 (FW, VPN, ルータ等) • ルーター、FW、VPN等のファームウェアバージョンと既知脆弱性 • 管理インターフェースへのアクセス制御 • ファイアウォールのルール(ポリシー)の適切性 • VPN設定(暗号化強度、認証方式等)の安全性 設定・構成の安全性 (セキュリティ設定) • ファイル・ディレクトリのアクセス権限 • 重要なログ(監査ログ等)の取得・管理設定 • 不要な機能・ソフトウェアの有効化状況 • 特定サービス(DNS, Mail等)における危険な設定(例:ゾーン転送、第三者中継) 通信の安全性 • SSL/TLSのバージョンと暗号強度の適切性 • サーバー証明書の有効性・信頼性 • HTTPSの強制設定(HSTS等) 不正活動の痕跡 • 不審な通信・プロセス・ファイルの存在 • バックドア・マルウェア等の設置兆候 これらの診断項目は、あくまで代表的なものです。 実際には、お客様のシステム環境や解決したい課題に応じて、診断内容を柔軟にカスタマイズいたします。 具体的な診断内容について疑問をお持ちの場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。 プラットフォーム診断が効果を発揮する状況 プラットフォーム診断は、特に以下のような状況でその真価を発揮します。 ①自社のITインフラ全体における弱点を洗い出したい時 プラットフォーム診断は、自社のサーバーやネットワーク機器など、ITインフラ全体に潜むセキュリティ上の弱点を「見える化」するのに役立ちます。 管理する機器が多い、構成が複雑化している、といった環境では、「どこに」「どのようなリスク」があるのかを正確に把握するのは難しいものです。 診断では、これまで気づかなかった弱点や、管理が行き届いていない古いシステムが見つかることもあります。 そうした発見で、システム全体のどこが攻撃されやすいか、リスクの全体像を把握でき、対策を立てやすくなります。 ②サイバー攻撃の入り口を減らしたい サイバー攻撃の多くは、システムの弱点を狙ってきます。 プラットフォーム診断でOSやミドルウェアの既知の弱点を見つけ、修正したり、不要な機能を止めたりすることで、攻撃者が侵入に使う「入口」を効果的に減らすことができます。 過去には、OSやソフトウェアの古い弱点が原因で、大きな被害につながったサイバー攻撃もありました。 プラットフォーム診断は、このような見落としやすい弱点が放置されていないかを確認し、被害を未然に防ぐことにつながります。 Webアプリケーションの対策と合わせると、さらに万全です。 ③状況に合わせて診断方法を選びたい場合 プラットフォーム診断には、企業の状況や目的に合わせて診断方法を選べるというメリットもあります。 主に「リモート診断」と「オンサイト診断」の二種類があります。 項目 リモート診断 オンサイト診断 診断アプローチ インターネット経由 お客様の社内ネットワーク 主なメリット 手軽に始めやすい コストを抑えやすい 社内環境を詳しく調査 より深い設定も確認 適したケース まず外部からのリスクを知りたい コストを抑えたい 社内も含め詳細に把握したい 認証対応などで必要 「まずは外部から見えるリスクだけチェックしたい」ならリモート診断、「社内システム全体を詳しく見たい」ならオンサイト診断、といったように選択できます。 ④セキュリティ対策を社内外に証明したい時 プラットフォーム診断を実施し、対策を行うことは、社内外からの信頼を高める上でも大切です。 取引先からセキュリティ対策状況の提示を求められたり、法令やガイドラインで診断が推奨されたりするケースが増えています。 プラットフォーム診断の報告書は、自社の対策レベルを示す客観的な証明として役立ちます。 また、利用者に対して「第三者による診断済み」と示すことで、サービスの安全性への信頼を高める効果も期待できます。 プラットフォーム診断を受ける際に考慮すべきケース プラットフォーム診断には多くのメリットがありますが、導入を検討する際には、次のような点も知っておくと良いでしょう。 診断範囲が広くなることがある プラットフォーム診断は、システムの基盤全体を対象とすることが多いため、調査範囲が広くなることがあります。 特定の狭い範囲だけをパッと診断したい、という場合には、少し時間がかかることがあります。 スムーズに進めるためには、事前に診断対象を明確にするなどの準備が必要です。 もし手軽さやスピードを重視する場合は、診断範囲を絞れるか、またはWebアプリケーション診断など他の方法が適しているか、診断会社と相談すると良いでしょう。 費用と準備が必要になる システムの「土台」を網羅的に調べるため、診断範囲が広くなりがちで、それに伴い費用も比較的高くなることがあります。 限られた予算内で対策を進めたい場合は、コスト面で検討が必要になるかもしれません。 また、診断には対象情報の提供など、社内での準備も必要です。 予算に限りがある場合は、診断会社に相談し、予算内で最も効果的なプランを検討することが大切です。 診断後の分析・対策に専門知識が必要な場合がある 診断報告書には、OSやネットワークに関する専門的な情報が含まれます。 内容を理解し、対策を進めるにはOSやネットワークに関する専門知識が求められます。特に修正作業は、他のシステムへの影響も考える必要があります。 もし社内に専門家がいない場合、報告書の内容を十分に活用できません。 そのため、報告内容の説明や対策のアドバイスなど、診断後のフォローが充実している診断会社を選ぶことが、大切になります。 プラットフォーム診断が向いている企業・サービス プラットフォーム診断は、特に次のような場合に導入効果を発揮しやすいと言えます。 大規模なITインフラを運用している クラウドとオンプレミス環境(自社運用環境)を併用している ネットワーク全体のセキュリティを強化したい 法令や規制で厳格なセキュリティが求められる 以下で、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。 ① 大規模なITインフラを運用している 社内に多くのサーバーを設置している、複数の拠点でシステムを運用しているなど、管理対象となるITインフラの規模が大きい場合、プラットフォーム診断は有効です。 インフラが広範囲にわたると、全体のリスクを把握しきれないことがあります。 診断によって、管理しているサーバーやネットワーク機器に潜む弱点を効率よく発見できます。 ② クラウドとオンプレミス環境(自社運用環境)を併用している AWS、Azure、GCPなどのクラウドサービス(特にIaaSのようにOS以上の管理が必要なもの)と、自社で管理するオンプレミス環境(自社運用環境)を組み合わせて利用している場合も、診断の重要性が高まります。 オンプレミス部分はもちろん、クラウド環境におけるOSレベル以上の設定・管理は自社の責任範囲となるため、プラットフォーム診断によるチェックが効果的です。 環境が混在すると管理が複雑になりやすいので、診断によって全体のセキュリティレベルを確認するのが良いでしょう。 ③ ネットワーク全体のセキュリティを強化したい ファイアウォールやVPN装置といった外部との境界だけでなく、社内ネットワークも含めた全体の安全性を高めたいと考えている場合にも、プラットフォーム診断は適しています。 外部からの侵入経路だけでなく、内部ネットワークに存在する設定ミスや脆弱性が、被害拡大の原因となることもあるためです。 診断では、ネットワーク機器の設定や状態を広範囲にチェックし、内外両面からのセキュリティリスクを減らすことにつながります。 ④ 法令や規制で厳格なセキュリティが求められる 金融、医療、重要インフラ関連など、特定の業界ルールや法律、あるいは取引先からの要求によって、高度なセキュリティ対策や定期的な診断が必須な場合、プラットフォーム診断はその要件を満たす手段となります。 診断結果の報告書は、自社がインフラレベルで適切なセキュリティ対策を行っていることを示す客観的な証明として役立ちます。 プラットフォーム診断の優先度が低い企業・サービス 一方で、すべての企業やシステムにプラットフォーム診断が必要というわけではありません。 状況によっては、費用対効果が見合わなかったり、他の診断を優先すべきだったりするケースもあります。 プラットフォーム診断が必ずしも最適とは言えない、あるいは不要と考えられる代表的なケースもご紹介します。 クラウドサービス中心で、自社管理のインフラが少ない場合 業務システムの多くをクラウドサービス(特にSaaSやPaaSと呼ばれる、インフラ管理をお任せできるタイプ)で利用しており、自社でサーバーなどをほとんど管理していない場合、プラットフォーム診断の必要性は低くなります。 これは、インフラの管理・セキュリティ対策の多くをクラウドサービス提供者が担っているためです。 この場合は、クラウドの設定やWebアプリケーション自体の診断(Webアプリケーション診断など)を優先する方が効果的です。 ※ただし、自社でOSレベルから管理する仮想サーバー(IaaS)を利用している場合は、プラットフォーム診断の対象となることがあります。 管理システムが少なく、リスクも比較的小さい場合 自社で管理しているサーバーが数台程度と少なく、かつ取り扱う情報の重要度もそれほど高くない場合は、プラットフォーム診断のコストが見合わない場合もあります。 診断には費用がかかるため、まずは基本的なセキュリティ対策(OSの更新、パスワード管理など)を自社で確実に行うことを優先した方が良いでしょう。 Webサイトやアプリのセキュリティが最優先課題の場合 ビジネス上のリスクが、主にWebサイトやWebアプリケーションの弱点にあると見込まれる場合は、プラットフォーム診断よりも先に「Webアプリケーション診断」を優先する方が望ましいです。 例えば、ECサイトや会員サイトなど、Web経由での情報漏洩リスクが特に高いと考えられるケースです。 このような場合は、まずWebアプリケーション自体のセキュリティを強化することが最も効果的です。 まとめ:自社のインフラの安全にはプラットフォーム診断を この記事では「プラットフォーム診断とは」何か、その基本から効果、注意点、向き不向きまで解説しました。 サーバーやOS、ネットワーク機器といったITインフラの「土台」に潜む弱点を見つけ出す大切さをご理解いただけたかと思います。 自社の状況に合わせて必要性を判断し、最適な診断方法を選び、確実なセキュリティ対策を進めましょう。 株式会社アイ・エフ・ティは、15年以上の経験と1,000件超の実績を持つ専門家集団です。 高精度な診断ツールと熟練エンジニアによる手動診断を組み合わせ、「高品質ながらリーズナブル」なプラットフォーム診断をご提供。 診断後の丁寧な報告・改善提案まで、お客様のインフラ強化をトータルでサポートします。 まずは、お客様の状況に最適な診断プランについて、専門家に相談してみませんか。 サービス詳細や無料相談は、お気軽にお問い合わせください。

Webサイトは簡単に落とせる?DoS攻撃の仕組みを5分で理解! | サイバー攻撃

Webサイトは簡単に落とせる?DoS攻撃の仕組みを5分で理解!

「DoS攻撃」と聞くと、大規模なサイバー攻撃を想像されるかもしれませんが、実は、皆様が普段利用されているWebサイトでも、DoS攻撃によって簡単にサービス停止が停止してしまう可能性があります。 最近では、DoS攻撃を行うためのツールが、特別な知識やお金がなくても手軽に入手できるようになってしまいました。 そのため、大企業だけでなく、中小企業や学校、病院など、私たちの生活に欠かせない組織も、攻撃のターゲットになる危険性が高まっています。 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)も、この状況を深刻な問題として注意喚起しており、早急な対策の必要性を訴えています。 この記事では、DoS攻撃の仕組みやパターンと、今すぐ実践できる2つの対策について、具体的に解説します。 DoS攻撃とは?知っておきたいサイバー攻撃の基本 DoS攻撃とは? DoS攻撃とは(Denial of Service attack:サービス拒否攻撃)の略称です。 サーバーやネットワークに大量のリクエストやデータを送りつけることで、システムの処理能力を限界突破させ、正規の利用者がサービスを利用できない状態にする攻撃手法です。 インターネットの初期の頃から存在する、サイバー攻撃の中でも基本的かつ古くからある手法の一つであり、その脅威は常に指摘され続けてきました。 1990年代には、「Ping of Death」や「SYNフラッド」といった、DoS攻撃の代表的な手法が登場しました。 これらの攻撃は、1つの攻撃元から大量の通信を送信し、ターゲットとなるサーバーのCPU、メモリ、帯域といったリソースを枯渇させ、サービスを停止させるものでした。 その後、これらの手法は改良が重ねられ、現在では、古典的な攻撃手法に加え、新たな変種が次々と生まれています。 常に新しい対策を行わないと、小規模なWebサイトであっても、DoS攻撃によってサービス停止に追い込まれる可能性があります。 したがって、DoS攻撃の基本的な知識と対策は、すべてのWebサイト運営者にとって不可欠と言えるでしょう。 DoS攻撃とDDoS攻撃の違い DoS攻撃とよく混同されがちなのがDDoS攻撃と呼ばれるサイバー攻撃です。 以下の表は、DoS攻撃とDDoS攻撃の違いを簡潔にまとめたものです。 DoS攻撃 DDoS攻撃 攻撃元 単一のコンピュータや機器 複数の機器(ボットネットなど) 通信量 比較的少ない 大量の通信 被害のスケール 小規模な被害が中心 大規模な被害に発展しやすい 主な特徴 単一の攻撃元によるため、特定の脆弱性を狙いやすい 分散型で同時に大量の通信を送り、システム全体に圧力をかける DoS攻撃は、1つのコンピュータから実行されるため、攻撃トラフィックは比較的少量です。 一方、DDoS攻撃は、多数のコンピュータ(ボットネットなど)から同時に攻撃が行われるため、大量のトラフィックが発生し、より大規模な被害をもたらす可能性があります。 DDoS攻撃の詳しい解説は、別記事「DDoS攻撃とは」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 DoS攻撃の主な攻撃パターンとその特徴 DoS攻撃には、主に「フラッド攻撃」と「脆弱性悪用型」の2つの攻撃パターンがあります。 これらの攻撃は、システムのリソース(CPU、メモリ、ネットワーク帯域)を違った手法で枯渇させます。 攻撃タイプ 主な手法 特徴・効果 フラッド攻撃 ICMPフラッド SYNフラッド UDPフラッド 大量のパケットを一斉に送りつけ、サーバーやネットワーク帯域を急激に圧迫し、処理不能な状態にする。 脆弱性悪用型 Slowloris、Teardrop 少量のリクエストや断片化されたデータを継続的に送ることで、サーバーの接続枠や処理能力の欠陥を突き、正常な通信を阻害する。 フラッド攻撃 フラッド攻撃は、大量の通信を発生させ、サーバーのリソースを急激に消費させることで、正規の通信を妨害します。 例えば、SYNフラッド攻撃は、TCP接続の開始要求(SYNパケット)を大量に送信します。 サーバーは、各要求に対し、接続準備のためのリソースを割り当てますが、攻撃者は接続を確立させないため、リソースが枯渇し、正規ユーザーからの接続要求に応答できなくなります。 脆弱性悪用型 脆弱性悪用型攻撃は、システムの設計上の欠陥や、古いソフトウェアの脆弱性を利用し、比較的少ない通信量で攻撃を成功させます。 例えば、Slowloris攻撃は、その名の通りHTTPリクエストを極めて遅い速度で送信し続けることで、サーバーの接続を長時間占有します。 その結果、サーバーの接続数が上限に達し、新たな接続を受け付けられなくなります。 DoS攻撃が「Webサイトを落とすのは簡単」と言われる理由 DoS攻撃は、大規模な攻撃であると誤解されがちですが、実際には、以下に挙げる理由から、比較的小さなリソースでもWebサイトを停止させることが可能です。 攻撃ツールの入手が容易であること:ダークウェブなどで安価に取引されている攻撃ツールを利用すれば、専門知識がなくとも、DoS攻撃を実行できます。 脆弱性による影響:脆弱性を持つシステムは、わずかな通信量でも、サーバーの処理能力を超過し、サービス停止に至る可能性があります。 攻撃が簡単:直感的に操作できる攻撃ツールが普及しており、特別な技術がなくとも、DoS攻撃を実行できます。 このような状況から、DoS攻撃は、小規模なリソースでもWebサイトに深刻な被害を与えられるのです。 なぜDoS攻撃の被害事例が表に出にくいのか 大規模な攻撃がDDoS攻撃として報じられることが多い一方で、実際には中小規模のサイトや公共施設に対してもDoS攻撃は行われています。 しかし、以下の理由からその被害事例が公表されにくい傾向があります。 被害規模の違いによる報道の差 DDoS攻撃は、複数の攻撃元から大量のトラフィックを送りつけ、大規模なサービス停止を引き起こすため、社会全体に与える影響が大きく、メディアの注目を集めやすいです。 一方、DoS攻撃は、1つの攻撃元から行われるため、影響範囲が限定的であり、ニュースとして取り上げられることは多くありません。 標的の違いによる報道の差 DDoS攻撃は、しばしば大手企業や公共機関といった、広く注目される組織を標的にするため、被害が大きくなり報道されやすいです。 対照的に、DoS攻撃は中小規模のサイトや個人運営のサービスが標的になることが多く、結果として報道の優先度が下がります。 短期間で収束・復旧する DoS攻撃は、影響が比較的短期間で収束するケースが多いため、企業がすぐに復旧作業に取り掛かり、外部に情報が広まる前に対処することがよくあります。 このため、実際にはサイト停止など被害が発生していても、公になることが少ないのです 2ステップで始めるDoS攻撃対策 DoS攻撃は、費用をかけなくても、今すぐ始められる基本的な対策があります。 具体的な対策方法を2つのステップに分けてご紹介します。 【ステップ1】基本設定とログ監視で攻撃を早期発見 ① ファイアウォール・ルーターの設定見直し まず、ファイアウォールやルーターの設定を見直しましょう。 外部からの不要なアクセスを遮断することで、攻撃の侵入口を減らすことができます。 具体的には、以下の点を確認・設定します。 不要なポートの閉鎖: サービスで使用していないポートは閉鎖します。攻撃者が悪用できるポートを減らし、セキュリティを向上させます。 IPフィルタリング: 特定の地域や、過去に攻撃があったIPアドレスなど、不審なIPアドレスからのアクセスをブロックします。 最新ルールの適用: ファイアウォールやルーターの提供元、またはセキュリティ専門組織が公開している最新のセキュリティルールを適用します。これにより、新しい攻撃手法にも対応できます。 ② アクセスログのリアルタイム監視 次に、Webサイトへのアクセスログをリアルタイムで監視する体制を整えましょう。 普段とは異なるアクセスパターンを早期に発見することで、DoS攻撃の兆候を掴むことができます。 自動アラート設定: 例えば、短時間に大量のリクエストが集中したり、不審なIPアドレスからのアクセスがあった場合など、異常を検知したら管理者に自動で通知が届くように設定します。 ログの定期分析: 通常時のアクセスパターンと比較して、不審な点がないか定期的にログを分析します。 監視ツールの活用: クラウド型の監視ツールなどを活用すると、効率的にログを監視・分析できます。 ③速やかな初動対応 DoS攻撃の兆候を検知したら、すぐに対応することが重要です。 被害を最小限に抑えるために、以下の対応を検討しましょう。 通信の遮断・制限: 不審なアクセス元のIPアドレスからの通信を遮断したり、通信量を制限したりします。 インシデントレスポンス計画: DoS攻撃を受けた場合の対応手順(誰が、何をするか、どのように連絡を取り合うかなど)を事前に計画しておき、いざという時にスムーズに対応できるようにします。 【ステップ2】脆弱性診断と専門家活用で抜け道を塞ぐ 基本的な対策をしたら、さらに踏み込んで、システムの脆弱性を解消し、より強固なセキュリティ体制を構築しましょう。 ① パッチ適用とシステム更新 システムやソフトウェアの脆弱性は、DoS攻撃の格好の標的となります。脆弱性を解消するために、以下の対策を徹底しましょう。 定期的なアップデート: OSやアプリケーションを常に最新の状態に保つことで、既知の脆弱性を解消します。 セキュリティパッチの適用: セキュリティ上の問題点を修正するためのプログラム(セキュリティパッチ)が公開されたら、速やかに適用します。 脆弱性管理ツールの導入: 脆弱性管理ツールを利用すると、システム全体の脆弱性を定期的にチェックし、漏れなく対策できます。 ② WAF・IPSの導入 Webアプリケーションやネットワーク全体を保護するために、WAF(Web Application Firewall)やIPS(Intrusion Prevention System)の導入を検討しましょう。 WAF(Web Application Firewall): Webアプリケーションへの攻撃を検知し、防御します。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど、Webアプリケーション特有の攻撃から保護します。 IPS(Intrusion Prevention System): 不正な通信を検知・遮断し、ネットワーク全体を保護します。DoS攻撃だけでなく、さまざまな種類の攻撃からシステムを守ります。 クラウド型セキュリティサービス: 導入や運用のコストを抑えつつ、最新のセキュリティ対策を導入したい場合は、クラウド型のセキュリティサービスが有効です。 ③ 脆弱性診断サービスの活用 上記のような対策を実施しても、完全に脆弱性を無くすことは困難です。 また、システムの設定ミスや、新たな脆弱性の発見など、セキュリティ対策は常に変化に対応していく必要があります。 そこで重要となるのが、定期的な脆弱性診断です。 脆弱性診断では、専門の技術者が、ツールや手動による検査を組み合わせて、システム全体(OS、ネットワーク、Webアプリケーションなど)に潜む脆弱性を網羅的に洗い出し、そのリスクを評価します。 弊社「株式会社アイ・エフ・ティ(IFT)」が提供する脆弱性診断サービスは、以下の特長があります。 IFTの脆弱性診断サービスの特長 自動診断と専門家による手動診断の組み合わせ 独自開発の自動スキャンツールで迅速かつ広範囲に診断を実施後、専門家が詳細に手動検証を行い、微細な脆弱性も漏れなく発見します。 対策の優先順位を明確化 発見された脆弱性のリスク評価を行い、修正の優先順位を明確に提案します。リソースを効果的に利用し、重大リスクを最優先に対処可能です。 継続的な再診断とフォローアップ体制 定期的に再診断を実施し、環境変化や新たな攻撃手法にも対応できるよう、常に最新の安全状態を保つ支援を提供します。 まとめ:対策は手軽に始められる DoS攻撃は、わずかなリクエストや脆弱性を突かれるだけでWebサイトの停止に至る危険な手法です。 しかし、基本的な防御策を実施することで、その被害リスクは大幅に軽減できます。 基本設定&ログ監視 ファイアウォールやルーターの設定を見直し、アクセスログを常時監視することで、異常な動きを早期に検知し、迅速な初動対応が可能となります。 脆弱性診断&専門家の活用 OSやソフトウェアのアップデート、WAF/IPSの導入といった対策に加え、脆弱性診断サービスを利用することで、システムの弱点を把握し、対策の優先順位を明確にできます。 現代では攻撃ツールが低コストで入手可能なため、誰もが攻撃者になり得る状況です。 大切なWebサイトを守るため、まずは現状のシステム状態をしっかり把握し、手軽に始められる対策から実施することが重要です。 大切なWebサイトを安心して運用するため、今すぐ対策を始め、万が一の被害を未然に防ぐ体制を整えましょう。 ご不明な点や追加のご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください.

【初心者向け】DDoS攻撃は防げない?その仕組みと被害を最小限に抑える対策を解説 | サイバー攻撃

【初心者向け】DDoS攻撃は防げない?その仕組みと被害を最小限に抑える対策を解説

「Webサイトが突然表示されなくなった…」そんな経験はありませんか? もしかしたら、それは「DDoS攻撃」のせいかもしれません。 最近ニュースなどでもよく耳にするこのDDoS攻撃、実は、企業規模を問わず、どんな組織にとっても他人事ではない脅威なのです。 実際に2025年3月にも、X(旧Twitter)が大規模なDDoS攻撃を受け、一時的にサービスが停止し、世界中のユーザーに大きな影響を与えました。 DDoS攻撃は、完全に防ぐことは難しいですが、事前にしっかりと備えることで、被害を大きく減らすことができます。 この記事では、「DDoS攻撃とは何か?」を初めて聞く方にもわかりやすく解説します。 攻撃の種類や実際の被害事例、そして、企業が今すぐ取り組める具体的な対策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。  そもそもDDoS攻撃とは?初心者にもわかる仕組み DDoS(ディードス)攻撃(Distributed Denial of Service/分散型サービス拒否攻撃)とは、たくさんのコンピュータから、特定のWebサイトやサービスに一斉にアクセスを送りつけ、利用できなくするサイバー攻撃の一種です。 たとえば、人気のお店に行列ができることがありますよね。 お店に入れる人数には限りがあるので、お客さんが多すぎると、お店はパンク状態になってしまいます。 DDoS攻撃は、これと似たような状態を、インターネット上で意図的に作り出す攻撃です。 DDoS攻撃の特徴は、たくさんのコンピュータを使って攻撃することです。 攻撃元が多いため、特定して防ぐのが難しくなっています。 攻撃を受けると、Webサイトが表示されなくなったり、サービスが停止したりして、企業や組織にとって大きな痛手となることがあります。  DDoS攻撃は3つのタイプに分類 DDoS攻撃にはさまざまな種類があり、大きく次の3タイプに分類されます。 種類 主な攻撃方法 攻撃の特徴 具体例 Volumetric攻撃 (大容量トラフィック型) UDPフラッド DNSアンプ攻撃 Memcached増幅攻撃 大量のデータを一気に送りつけて、回線をパンクさせます。非常に大規模な攻撃になりやすいです。 2018年にGitHubが受けたMemcached攻撃(最大1.3Tbps) プロトコル攻撃 (通信プロトコルを悪用) SYNフラッド ACKフラッド 通信の仕組みを悪用して、サーバーのリソースを使い果たさせます。攻撃元の特定が難しいです。 攻撃者が多数の偽IPアドレスで通信を開始し、応答待ち状態を大量に作る アプリケーション層攻撃 (Webアプリの弱点を狙う) HTTPフラッド Slowloris攻撃 Webサーバーに負荷の高い処理をたくさん要求したり、接続を占有したりして、サービスを停止させます。 特定のWebページに大量のアクセスを集中させ、サーバーをダウンさせる 最近は、複数の攻撃を組み合わせるケースも増えており、一つの対策だけでは防ぎきれないことがほとんどです。 そのため、いろいろな攻撃パターンを想定して、対策を重ねることが大切です.  DDoS攻撃の一番の脅威は「物量」 DoS攻撃で一番怖いのは、その「圧倒的な物量」です。 攻撃者は、何万、何十万という数の、乗っ取ったコンピュータやIoT機器(インターネットにつながる家電など)から、一斉に大量のデータを送りつけます。 こうなると、攻撃を受ける側のサーバーは処理しきれなくなり、サービスが止まってしまいます。 たとえば、2018年には、GitHubという世界的に有名なサービスがDDoS攻撃を受けました。 この時の攻撃は、最大で「1.3Tbps」という、とてつもない規模でした これは、一般家庭の光回線(1Gbps程度)の約1300倍ものデータ量です つまり、一瞬にして1000軒以上の家のインターネット回線を全部使って攻撃されるようなもので、大きな会社でも耐えるのは非常に難しいのです。 参考:February 28th DDoS Incident Report (出典:GitHub)   最近は、ネットにつながる機器が増えたことで、乗っ取られて攻撃に使われる数も増えています。 その結果、攻撃の規模がどんどん大きくなり、今までの対策では防ぎきれないことが多くなっています。 「攻撃されても、被害を最小限に抑える」という考え方が大切です。 DoS攻撃との違い DoS攻撃(Denial of Service攻撃)は、1台のコンピュータから大量のアクセスを送って、サービスを妨害する攻撃です。 DDoS攻撃は、たくさんのコンピュータから攻撃する「分散型」という点が大きく違います。 DoS攻撃なら、攻撃元のIPアドレスを遮断すれば対処できることもありますが、DDoS攻撃では、何万、何十万というIPアドレスを同時にブロックする必要があり、簡単にはいきません。 DoS攻撃の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 なぜDDoS攻撃をするのか DDoS攻撃は、相手のサービスを止めることが目的ですが、その動機はいろいろです。 金銭目的(脅迫や身代金要求) 企業のウェブサイトやサービスを停止させ、「攻撃をやめてほしければお金を払え」と脅迫するパターンです。 実際に、日本でも金融機関などが脅迫され、攻撃されたケースがあります。 政治的・社会的抗議(ハクティビズム) 特定の国や企業、組織に対する抗議として攻撃することがあります。 2022年に、日本の政府機関などを攻撃したロシアのハッカー集団「Killnet」が有名です.  競合企業への妨害 ライバル会社のECサイトなどを狙って、サービスを止め、売上や評判にダメージを与えるのが目的です。 特に、ネットショッピングのセールの時期などに狙われることがあります.  愉快犯的行為(技術の誇示や嫌がらせ) 自分の技術力を見せびらかすために攻撃することもあります。 最近は、DDoS攻撃を請け負うサービスが闇市場で簡単に買えるため、面白半分で攻撃する人もいます.  なぜDDoS攻撃は防ぎにくい?被害事例と拡大要因 DDoS攻撃は、「一度対策すれば大丈夫」というものではありません。 攻撃方法もどんどん進化していて、世界中で繰り返し発生し、対策が難しい状況が続いています.  実際に発生した大規模DDoS攻撃の事例 日本でも、DDoS攻撃による被害は数多く起きています。大企業や金融機関だけでなく、さまざまな組織が影響を受けています。 ここでは、日本で話題になった事例をいくつかご紹介します.  日本航空(JAL)へのDDoS攻撃(2024年12月) 2024年12月、日本航空(JAL)が大規模なDDoS攻撃を受けました。 この攻撃で飛行機の運航に関わるシステムが一時的にダウンし、、国内線・国際線あわせて約80便に大幅な遅れが出ました。 最大で4時間以上も遅れた便もあり、多くの乗客や関係者に影響がありしました。 参考:JALにサイバー攻撃か 欠航や遅れも システム不具合は復旧 (出典:NHK) Killnetによる日本の官公庁への攻撃(2022年) 2022年には、ロシア系とされるハッカー集団「Killnet」が日本の複数の省庁や地方自治体、大手企業のウェブサイトに対し、連続してDDoS攻撃を実施しました。 攻撃されたウェブサイトは一時的に閲覧不能となり、攻撃者はSNSを通じて政治的メッセージを発信し、大きな社会的注目を浴びました。 参考:Killnetによる日本へのサイバー攻撃 (出典:NTTセキュリティ・ジャパン) 横須賀市のウェブサイト攻撃(2022年7月) 2022年7月、神奈川県横須賀市の公式ウェブサイトがDDoS攻撃により数時間アクセスできない状態となりました。 この攻撃により、市民への情報提供や手続き案内が一時的に停止し、行政サービスに影響が出ました。 犯行声明がインターネット上に公開されるなど、政治的・社会的な目的が疑われるケースでした。 参考:横須賀市ホームページの閲覧障害について (出典:横須賀市) こうした攻撃事例を見ると、攻撃対象が大企業や官公庁に限らず、自治体や一般企業にも広がっており、業種や規模を問わず、すべての組織がDDoS攻撃に備えることの重要性はますます高まっています。 大規模攻撃の繰り返しと長期化 DDoS攻撃は、一度で終わるとは限りません。 攻撃者は「相手が疲弊するまで続ける」という戦術を取りやすく、 同じボットネット(乗っ取ったコンピュータの集団)を使い回す 攻撃方法を次々と変える 攻撃の強さを変えて、守る側を混乱させる といった形で、組織や企業をじわじわと追い詰めます。 特に、国際的な対立が関係する政治的な抗議の場合は、「長く注目を集める」こと自体が目的になるため、攻撃が長引くことが多いです。 防御が難しい理由とよくある限界 DDoS攻撃は、「数」や「分散」だけでなく、次のような理由で防ぐのが難しくなっています.  数多くの攻撃元、IPアドレスの偽装: 世界中に数多くのボットネット端末があり、一つずつ対処してもキリがありません。 普通のアクセスと区別しにくい HTTPフラッドのように、普通のWebアクセスを大量に行う攻撃だと、サーバー側では「普通のユーザー」と見分けがつきにくいです。 サーバーや回線には限界がある どんなサーバーや回線にも、処理できる量には限界があります。 攻撃側と守る側のコストが違う 攻撃者は、比較的安い費用で大規模な攻撃ができますが、守る側は、常にシステムの強化やセキュリティサービスに費用をかけなければなりません。 このように、DDoS攻撃を「100%完全に防ぐ」のは難しいのが現実です。 だからといって何もしないと、サービスが長い間止まってしまい、会社の信用や売上に大きなダメージを受けることになります。 DDoS被害を最小化するための対策 DDoS攻撃を完全に防ぐのは難しくても、事前に準備をして、対策を重ねることで、被害を大きく減らすことはできます。 ここでは、技術的な対策と、運用面で気をつけることをご紹介します.  技術面でのDDoS攻撃対策:「遮断」「分散」「冗長化」 技術的な対策としては、「攻撃を遮断する」「攻撃を分散させる」「複数の回線を用意する」といった方法が効果的です。 WAF(Web Application Firewall)の導入 Webサイトへの不正なアクセスを見つけてブロックします。HTTPフラッドのようなDDoS攻撃にも効果があります。クラウド型なら、比較的安い費用で簡単に導入できます。 CDN(Content Delivery Network)の活用 世界中にサーバーを分散させることで、攻撃を分散させ、サーバーへの負荷を減らします。 回線冗長化 インターネット回線を複数用意しておき、攻撃されたら別の回線に切り替えて、サービスを続けます。費用はかかりますが、被害を広げないためには有効な方法です。 運用対策:監視・初動対応・連絡ルートの整理 もしDDoS攻撃を受けてしまった場合、すぐに対応できるかどうかが、被害の大きさを左右します.  監視と通知 普段と違うアクセスがないか、24時間体制で監視し、何かあったらすぐに担当者に知らせる仕組みを作りましょう。 対応マニュアルの作成 攻撃が起きた時に、「誰が」「何をするか」を事前に決めて、簡単なマニュアルを作っておきましょう。 連絡ルートの確認 もしサービスが止まってしまった場合に、お客様や取引先、関係機関にすぐに連絡できるように、連絡先や連絡方法を確認しておきましょう。   これらの対策は、攻撃を受けてからの「対処療法」です。 しかし、本当に大切なのは、攻撃を受ける前に、「自分の会社に弱点がないか」を知っておくことです。 次に紹介する「脆弱性診断」は、攻撃される前に弱点を見つける、とても重要な方法です。 脆弱性診断で、攻撃の増幅リスクを下げる DDoS攻撃を防ぐには、WAFやCDNのような対策だけでなく、「自分の会社のサーバーが、攻撃者に悪用されないようにする」ことも大切です。 サーバーの設定ミスや、古くなったソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の欠陥)を放置しておくと、攻撃者に悪用されてしまいます。 特に、DNSやNTP、Memcachedといった公開サービスにある小さな脆弱性が、攻撃を大きくするために利用され、知らないうちに「加害者」になってしまうこともあります。 こうしたリスクは、自分では気づきにくいため、「脆弱性診断」を受けて、早めに対策することが大切です。 脆弱性診断とは、専門家が、ツールや手作業で、システム全体(OS、ネットワーク、Webアプリケーションなど)の脆弱性を詳しく調べ、リスクを評価することです。 弊社「株式会社アイ・エフ・ティ(IFT)」が提供する脆弱性診断サービスは、次のような特長があります。 IFTの脆弱性診断サービスの特徴 低価格で継続的な診断をサポート 脆弱性診断は、一度やって終わりではありません。定期的に診断を受けることが大切です。IFTでは、お客様が無理なく続けられるように、お手頃な価格でサービスを提供しています。「他社の診断は高くて続けられない…」とお悩みの企業様も、ぜひご相談ください。 15年以上の実績と幅広いノウハウ 2009年から、金融、製造、サービス業など、さまざまな業界の脆弱性診断を行ってきました。長年の経験から、ツールだけでは見つけられない小さな弱点も、熟練の診断員が見つけ出します。 診断後のアフターフォローも充実 診断結果を報告するだけでなく、「専門用語がわからない」「どこを直せばいいかわからない」といった疑問にもお答えします。対面またはオンラインでの報告会や、修正後の再診断(無料)も行い、お客様が安心して対策を進められるようにサポートします。 DDoS攻撃の被害にあわないためにも、まずは自分の会社の弱点を知り、早めに対策をしましょう。 脆弱性診断については以下のページでも詳しく解説しています。 まとめ:DDoS攻撃の被害を最小限に抑えるために DDoS攻撃は、規模が巨大化・長期化しやすく、完全に無傷で防ぎきることは難しい攻撃手法です。 しかし、次のようなポイントを押さえるだけでも、被害を最小化できる可能性は高まります。 複数の対策を組み合わせる WAF、CDN、回線冗長化など、複数の対策を組み合わせて、さまざまな攻撃に対応できるようにしましょう。 常に監視し、すぐに対応できるようにする 普段と違うアクセスを早く見つけ、社内や関係機関への連絡をスムーズに行えるように、体制を整えましょう。 定期的な脆弱性診断と負荷テスト 自分の会社のシステムの弱点や、どこまでの攻撃に耐えられるかを知っておきましょう。 サービスが止まってしまうと、売上が減るだけでなく、信用を失ったり、お客様が離れていったりする、大きな問題につながります。 DDoS攻撃への備えは、「何もなければラッキー」くらいの気持ちで、早めに対策することをおすすめします。 大切なサービスを守るためにも、今できることから、しっかり対策を考えていきましょう。

WordPressの脆弱性診断は無料で出来る?診断ツール10選と選び方・注意点を解説 | プラットフォーム別対策

WordPressの脆弱性診断は無料で出来る?診断ツール10選と選び方・注意点を解説

「脆弱性診断ツール」と一口に言っても、使用したことがなけば 「本当に信頼できるの?」 「無料でも十分?」 「自分のサイトに必要な機能は備わっているの?」 など、疑問や不安も多いはずです。 この記事では、WordPressに特化した脆弱性診断ツールを紹介し、徹底比較します。 WordPressの脆弱性診断ツールを選ぶ際のポイントや無料版と有料版の違い、使用時の注意点も解説しています。   そもそも、自社サイトに脆弱性診断が必要か?の判断基準を下記で紹介していますので、あわせてご覧ください! なぜWordPressは狙われる?脆弱性診断が必要な理由 世界中で多くの方々に利用されているWordPressですが、実はサイバー攻撃の標的になりやすいという側面もあります。 なぜWordPressが狙われやすいのか、主な理由は以下の通りです。 圧倒的なシェア: 多くのサイトで利用されているということは、1つの脆弱性を突くだけで、膨大な数のサイトに影響を与えられる可能性があります。攻撃者にとって、魅力的な攻撃対象です。 オープンソースであること: WordPressはソースコードが公開されているため、攻撃者も脆弱性を発見しやすい状態にあります。 セキュリティ対策が不十分なプラグインの存在: WordPressの機能を拡張するプラグインの中には、セキュリティ対策が十分に施されていないものも存在します。 しかし、これらはWordPress自体の脆弱性を示すものではありません。 多くの場合、問題はWordPressを利用する側の対策不足にあると考えられます。 例えば、古いバージョンを使い続けていたり、安全性が確認されていないプラグインやテーマを利用していたりすることが挙げられます。 脆弱性を放置すると、サイト改ざん、情報漏洩、マルウェア感染といった深刻な被害につながるリスクがあります。 こういった理由から、WordPressを安全に利用するためには、定期的な脆弱性診断が欠かせません。 WordPress脆弱性診断ツールとは?無料でも十分? 「脆弱性診断ツール」とは、その名のとおり、Webサイトやアプリケーションに潜むセキュリティ上の弱点(脆弱性)を検出するソフトウェアやサービスのことです。 WordPressは、アップデートなどの管理に手間がかかることもありますが、脆弱性診断ツールを利用すれば、簡単な操作で脆弱性を発見し、具体的な対策まで把握できます。 専門知識が少ないフリーランスの方や、セキュリティ担当者がいない中小企業など、組織や個人に幅広く活用されています。 WordPress脆弱性診断ツールにも、無料版と有料版があり、それぞれ異なる特徴を持っています。 ただ、結論からお伝えしておくと、 無料ツールだけでは、WordPressサイトのセキュリティ対策は十分ではない ということです。   無料版と有料版の主な違いを以下の表にまとめます。 特徴 無料版 有料版 コスト 無料 月額料金または年間料金が発生 診断範囲 基本的な脆弱性 より高度で広範囲な脆弱性 サポート体制 基本的にサポートなし(またはコミュニティ頼り) 専門家/公式サポートチームによる対応 レポート機能 限定的 詳細なレポート機能、カスタマイズ可能なレポート 更新頻度 不定期(コミュニティによる場合が多い) 定期的なアップデートで最新の脅威に対応 無料ツールの特徴 無料で利用できるWordPress脆弱性診断ツールは、予算が限られている場合や、まずはお試しで脆弱性診断を行いたい個人ブロガーや小規模サイト運営者の方に適しています。 コストを抑えつつ基本的な脆弱性診断ができる点がメリットですが、以下の点に注意が必要です。 検出できる脆弱性の範囲が限られている 最新の脆弱性に対応していない場合がある サポート体制が十分でないことが多い そのため、無料ツールだけでWordPressサイトのセキュリティ対策を万全にすることは難しい、と認識しておきましょう。 より高度なセキュリティ対策や、未知の脆弱性への対策には、有料ツールや専門家による診断を依頼する必要があります。 有料ツールの特徴 有料のWordPress脆弱性診断ツールは、無料版にはない機能を備えていることが多く、特に高精度な診断やサポートが必要な場合に適しています。 例えば、WordPressサイトでECサイトを運営しており、顧客の個人情報やクレジットカード情報を取り扱うような場合、あるいは企業サイトなど高い信頼性が求められる場合には、有料ツールの導入が必須と言えます。 有料ツールは、詳細なレポートや専門家によるサポートだけでなく、脆弱性の自動修正機能やWAF(Web Application Firewall)連携など、より高度なセキュリティ対策を提供している場合もあります。 WordPressサイトの重要度が高い場合や、高度なセキュリティ対策が求められる場合は、有料版の導入、もしくは専門家への依頼を検討することをおすすめします。 WordPress脆弱性診断ツールを選ぶポイント WordPressの脆弱性診断ツールを選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。 診断項目の精度は十分か 予算に見合ったコストパフォーマンスか サポート体制は充実しているか 業務規模や将来的な拡張性に対応できるか 他のセキュリティツールと連携できるか 上記のポイントを意識しながら、「診断要件」「運用要件」「予算やセキュリティ要件」といった視点から、自社に必要な機能を備えたツールを選ぶことが大切です。 詳しくは下記の記事で解説しています。 【無料アリ】WordPressの脆弱性診断ツール10選 All In One WP Security & Firewall All In One WP Security & Firewallは、WordPressのセキュリティ対策を総合的に強化できる多機能プラグインです。 ファイアウォール、ログイン試行回数制限、ブルートフォース攻撃対策、データベースセキュリティ、ファイルシステムセキュリティなど、豊富な機能を備えています。 無料でありながら高機能であるため、多くのWordPressユーザーに利用されています。 ただし、多機能である分、設定項目が多く、WordPress初心者には少し使いにくいかもしれません。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 ファイアウォール、ログイン保護、データベース/ファイルシステムセキュリティなど、多岐にわたるセキュリティ機能 向いているユーザー WordPressサイト全体のセキュリティを包括的に強化したい方、多機能なセキュリティ対策を求める方 コスト 無料 All In One WP Security & Firewall公式サイト WPSEC (Online WordPress Security Scan) WPSEC (Online WordPress Security Scan) は、オンラインで手軽にWordPressサイトの脆弱性を診断できるツールです。 サイトのURLを入力するだけで、既知の脆弱性、設定ミス、古いバージョンのWordPressやプラグインの使用などを検出します。 プラグインのインストールが不要で、Webブラウザ上で結果を確認できるため、非常に手軽に利用できます。 無料版では基本的な診断が可能ですが、有料版にアップグレードすると、さらに詳細な脆弱性スキャン、API連携、プラグインとテーマのセキュリティチェックなど、より高度な機能を利用できます。 ただし、オンラインスキャンであるため、診断範囲は限定的です。より詳細な診断が必要な場合は、他のツールとの併用を検討しましょう。 項目 内容 種類 オンラインツール 特徴 既知の脆弱性、設定ミス、古いバージョンのWordPressやプラグインを検出 向いているユーザー 手軽にWordPressサイトの脆弱性をチェックしたい方、プラグインのインストールを避けたい方、まずは簡易的な診断を試したい方 コスト 無料版 / 有料版($9.99/月~) WPSEC (Online WordPress Security Scan)公式サイト WPScan WPScanは、WordPressに特化した脆弱性スキャナーです。 無料版では基本的な脆弱性スキャンが可能で、有料版では詳細なスキャン、プラグインやテーマの脆弱性チェック、API連携などが利用できます。 項目 内容 種類 スキャナー 特徴 WordPressに特化。無料版は基本的なスキャン、有料版は詳細スキャン、プラグイン・テーマの脆弱性チェック、API連携など 向いているユーザー WordPressサイトの脆弱性を詳細に把握したい方、開発者、セキュリティ専門家 コスト 無料版/有料版($19/月~) WPScan公式サイト Wordfence Security Wordfence Securityは、WordPressの定番セキュリティプラグインです。 無料版でもファイアウォール、マルウェアスキャン、ログインセキュリティなどの機能が利用でき、有料版ではリアルタイムの脅威インテリジェンス、国別ブロック、高度なスキャンオプションなどが提供されます。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 定番のセキュリティプラグイン。無料版はファイアウォール、マルウェアスキャン、ログインセキュリティなど。有料版はリアルタイム脅威インテリジェンス、国別ブロックなど 向いているユーザー WordPressサイトのセキュリティを総合的に強化したい方、初心者から上級者まで コスト 無料版/有料版($99/年~) Wordfence Security公式サイト Sucuri SiteCheck Sucuri SiteCheckは、Webサイト全体のセキュリティスキャンを無料で提供しているサービスで、WordPress以外のCMSにも対応しています。 無料版ではマルウェア、ブラックリスト登録、SSL証明書の有効性などをチェックでき、有料版では詳細なスキャン、マルウェア除去、WAF(Web Application Firewall)などの機能が利用できます。 項目 内容 種類 オンラインツール 特徴 Webサイト全体のセキュリティチェック。無料版はマルウェア、ブラックリスト登録、SSL証明書。有料版は詳細スキャン、マルウェア除去、WAFなど 向いているユーザー WordPress以外のCMSも利用している方、Webサイト全体のセキュリティをチェックしたい方 コスト 無料版/有料版($199.99/月~) Sucuri SiteCheck公式サイト Security Ninja Security Ninjaは、WordPressのセキュリティ対策プラグインです。 無料版では50以上のセキュリティテストで脆弱性の有無をチェックでき、有料版では自動修正機能、マルウェアスキャナー、イベントロガーなどの機能が追加されます。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 50以上のテスト項目。無料版は脆弱性の有無をチェック。有料版は自動修正、マルウェアスキャナー、イベントロガーなど 向いているユーザー WordPressサイトのセキュリティを多角的にチェックしたい方、セキュリティ設定に不安がある方 コスト 無料版/有料版($29/年) Security Ninja公式サイト Patchstack Patchstackは、WordPressの脆弱性データベースを提供しているサービスです。 無料版では利用中のプラグインやテーマの脆弱性情報を確認でき、有料版では脆弱性の自動パッチ適用、詳細なレポート、優先サポートなどが提供されます。 項目 内容 種類 サービス 特徴 脆弱性データベース。無料版はプラグイン・テーマの脆弱性情報確認。有料版は自動パッチ適用、詳細レポート、優先サポートなど 向いているユーザー WordPressサイトの脆弱性情報を常に最新の状態に保ちたい方、開発者、セキュリティ担当者 コスト 無料版/有料版($19/月~) Patchstack公式サイト MalCare MalCareは、WordPressのマルウェア対策に特化したプラグインです。 無料版ではマルウェアスキャンとログイン保護機能が利用でき、有料版では自動マルウェア除去、ファイアウォール、脆弱性スキャンなどの機能が提供されます。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 マルウェア対策に特化。無料版はマルウェアスキャンとログイン保護。有料版は自動マルウェア除去、ファイアウォール、脆弱性スキャンなど 向いているユーザー WordPressサイトのマルウェア対策を強化したい方、マルウェア感染の不安がある方 コスト 無料版/有料版($99/年~) MalCare公式サイト WP Cerber Security WP Cerber Securityは、WordPressのセキュリティ対策プラグインです。 無料版でもログイン試行回数制限、IPアドレスブロック、スパム対策などの機能が利用でき、有料版ではより高度な保護機能、詳細なログ、優先サポートなどが提供されます。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 多層防御機能。無料版はログイン試行回数制限、IPブロック、スパム対策など。有料版は高度な保護機能、詳細ログ、優先サポートなど 向いているユーザー WordPressサイトへの不正アクセスを徹底的に防ぎたい方、セキュリティに詳しい方 コスト 無料版/有料版($99/年~) WP Cerber Security公式サイト Jetpack Jetpackは、WordPress.comが提供している多機能プラグインです。 無料版でもサイトのバックアップ、ダウンタイム監視、ブルートフォース攻撃対策などの機能が利用でき、有料版ではセキュリティスキャン、マルウェア除去、リアルタイムバックアップなどの機能が追加されます。 項目 内容 種類 プラグイン 特徴 WordPress.com公式多機能プラグイン。無料版はバックアップ、ダウンタイム監視、ブルートフォース攻撃対策など。有料版はセキュリティスキャン、マルウェア除去、リアルタイムバックアップなど 向いているユーザー WordPress.comのサービスと連携させたい方、セキュリティだけでなく、サイトのパフォーマンスも向上させたい方 コスト 無料版/有料版($39/年~) Jetpack公式サイト ただし、脆弱性診断ツールには限界がある ここまで、WordPressの脆弱性診断に役立つツールやサービスをご紹介してきましたが、脆弱性診断ツールは万能ではありません。 無料・有料に関わらず、ツールによる診断には限界があります。 検出できるのは「既知の脆弱性」のみ ツールが検出できるのは、主に「既知の脆弱性」に限られます。 つまり、広く知られ対策方法が確立している脆弱性については検出できる可能性が高いものの、未発見の脆弱性やゼロデイ脆弱性には対応できません。 100%正確な診断は困難 ツールは必ずしも100%正確な診断結果を出すとは限りません。 誤検出や見落としの可能性も考慮する必要があります。 誤検出とは、実際には脆弱性でないものを脆弱性として検出してしまうこと、見落としとは、存在する脆弱性を検出できないことを指します。 最新情報への対応にタイムラグがある 脆弱性情報は日々更新されています。 新たな脆弱性が発見されてからツールが対応するまでには、どうしてもタイムラグが生じてしまいます。 その間は、サイトが無防備な状態になる可能性があることを認識しておく必要があります。 ツールだけに頼らない多層防御を ツールによる診断には限界があるため、その結果はあくまで参考情報とし、多層的な対策を心がけましょう。 WordPressの更新や強固なパスワード設定など基本的な対策はもちろんのこと、サイト独自の脆弱性に気づいていない可能性もあります。 特に、小規模なサイトでは、「セキュリティ対策は大丈夫だろう」と油断してしまい、独自にコードを追加したり、手動でフォルダの設定を行ったりした箇所に、思わぬ脆弱性が潜んでいることも少なくありません。 ツールでは発見が難しい、未知のリスクを考慮するのであれば、専門家による脆弱性診断をおススメします。 初期費用はかかりますが、サイト改ざんや情報漏洩といった深刻な被害を未然に防ぐことができれば、長期的な視点で見ると費用対効果は高いです。   WordPressの安全な運営には、プロの診断がおすすめ! この記事では、WordPressの脆弱性診断ツールについて、無料ツールと有料ツールの違いや、選ぶ際のポイント、おすすめのツールなどをご紹介しました。 無料ツールは、コストを抑えつつ基本的な診断を行うことができます。 一方、有料ツールは、より高度な診断精度と充実したサポート体制が魅力です。 しかし、これまでお伝えしてきたように、ツールによる診断には限界があります。 WordPressサイトを本当に安全な状態に保つためには、ツールによる診断だけでなく、より専門的な知識と技術に基づいた対策が必要です。 特に、以下のような場合は、専門家による脆弱性診断を強く推奨します。 ECサイトや会員制サイトなど、顧客情報を扱うサイトの場合 企業サイトなど、高い信頼性が求められるサイトの場合 サイトの改ざんや情報漏洩のリスクを最小限に抑えたい場合 セキュリティ対策に不安がある、または自信がない場合 専門家による診断は、ツールでは発見できない脆弱性を洗い出し、あなたのサイトに最適なセキュリティ対策を提案してくれます。 アイ・エフ・ティでは、15年以上の診断実績を持つプロフェッショナルチームが、お客様のWordPressサイトを徹底的に診断し、最適な対策を提案いたします。 業界No.1の診断ツール「Vex」を使用し、高精度かつ迅速な診断を実現。さらに、初回診断から3カ月以内の再診断を無料で提供し、継続的なセキュリティ強化をサポートします。 まずは無料相談で、お客様のシステムの状況や、セキュリティに関するお悩みをお聞かせください。

初めてでも安心!Burp Suite Proxyの使い方を簡単6ステップで解説 | その他

初めてでも安心!Burp Suite Proxyの使い方を簡単6ステップで解説

Webサイトの脆弱性診断を手軽に行える脆弱性診断ツール。中でも、自分で手動診断を試すなら「Burp Suite」はおすすめです。 世界中のセキュリティエンジニアが愛用するこのツールは、実は無料版でも基本的な機能は十分に使える優れものなのです。 この記事では、15年以上の診断実績を誇るアイ・エフ・ティが、Burp Suiteの中でも特に基本となる「Proxy」機能の使い方を解説します。 セキュリティの専門知識がない初心者の方でも、この記事を読めば、Burp Suite Proxyを使って、今日からWebサイトのセキュリティチェックを始められます! 「Burp Suite」以外の脆弱性診断おすすめツールは下記にて紹介していますので、こちらもよろしければご覧ください! Burp Suiteって何?セキュリティ診断の強い味方! Webサイトの脆弱性を検査するツールは数多くありますが、その中でも特に多機能で、世界中のセキュリティエンジニアに愛用されているのが「Burp Suite」です。 まずは、Burp Suiteの概要と、何ができるのかを見ていきましょう。  Burp Suiteとは? Burp Suiteは、Webサイトのセキュリティ診断に必要な機能がひとまとめになった、オールインワンのツールです。 Webサイトとブラウザ間の通信(HTTPリクエスト・レスポンス)を、傍受(横取り)して、内容を詳しく確認したり、書き換えたりできます。 「横取り」と聞くと、悪いことをしているように聞こえるかもしれませんが、Burp Suiteは、Webサイトの弱点(脆弱性)を見つけるために、この仕組みを利用しています。 例えば、Webサイトに送られる情報(リクエスト)の一部をわざと間違ったものに書き換えて、Webサイトが正しく対応できるか?といったことを確認できます。 これにより、攻撃者が悪用できるような弱点がないか、事前にチェックできるのです。 Burp Suiteは、セキュリティの専門家だけでなく、Web開発者が自身のWebサイトの安全性を確認するためにも広く利用されています。 もちろん、専門知識がない初心者の方でも、基本的な使い方を覚えれば、Webサイトのセキュリティチェックに活用できます! Burp Suiteでできること Burp Suiteには、無料で使えるCommunity Editionと、さらに高度な機能が使える有料のProfessional/Enterprise Editionがあります。 企業で本格的に使う場合は有料版がおすすめですが、「まずは手動診断でWebサイトのセキュリティをチェックしてみたい」というくらいなら無料版でも十分に対応できます。 Burp Suiteには、具体的には以下の機能があります。 Proxy(プロキシ): Webサイトとブラウザ間のやり取りを「横取り」して、中身を見たり、書き換えたりできます。 Spider(スパイダー): Webサイトを自動で巡回して、どんなページがあるかなどを調べます。 Scanner(スキャナ): Webサイトの弱点を自動で見つけてくれます。(※有料版のみ) Intruder(イントルーダー): 色々な攻撃パターンを自動で試して、弱点を探します。 Repeater(リピーター): リクエストを自分で書き換えて、何度も送ってWebサイトの反応を見ます。 Sequencer(シーケンサー): Webサイトのログイン情報などの扱いに問題がないかを調べます。 Decoder(デコーダー): 暗号化されたデータを元に戻したり、逆に暗号化したりします。 Extender(エクステンダー): Burp Suiteに機能を追加できるプラグインを使えます。 専門用語が多くて難しく感じるかもしれませんが、Burp Suiteを使えば、Webサイトの見た目から、普段は見えない裏側の仕組みまで、詳しくチェックして、隠れた弱点を見つけ出せるということです。 今回は、この中でも基本となるWebサイトとのやり取りを横取りする「Proxy機能」の使い方を詳しく見ていきましょう! Burp Suiteの「Proxy機能」の使い方 Burp SuiteのProxy機能を使うと、Webサイトとブラウザの間で行われる通信(HTTPリクエスト・レスポンス)を「見える化」し、内容を自由に確認・編集できます。 これにより、Webサイトの脆弱性を発見するための様々なテストを行うことができます。 ここでは、Proxy機能を使った脆弱性診断の流れを、「基本操作」「リクエスト送信と応答確認」「応用テクニック」の3段階に分けて紹介します。 「Proxy」の基本操作 Burp SuiteのProxy機能では、具体的には、以下の3つのステップでWebサイトのセキュリティをチェックしていきます。 通信をキャッチ: Burp SuiteでWebサイトとの通信を傍受します。 内容をチェック&書き換え: 通信内容(リクエスト)を確認し、必要に応じて書き換えます。 結果を確認: 書き換えたリクエストを送信し、Webサイトからの応答(レスポンス)を確認します。 これらのステップを、パラメータの値を変えながら、あるいは別のページで、といったように繰り返し行うことで、Webサイトの様々な挙動を確認し、脆弱性につながる問題点がないかを探っていきます。 それでは、具体的な操作方法を詳しく見ていきましょう。  Burp Suiteを起動 まず、Burp Suiteを開きます。次に、上部にある「Proxy」タブを選び、さらに「Intercept」タブを選択してください。これで、通信を監視する準備が整います。  「Intercept off」を押す 「Intercept off」と書かれたボタンを押して、通信が自動的に通過する状態にします。 「Intercept on」で通信を止める 次に、「Intercept on」に切り替えます。これで、Burp Suite用のブラウザで行われる通信が一時的に停止するようになります。 通信を発生させる Burp Suite用ブラウザで、ボタンを押して通信を発生させます。(画像の場合は、「確認」ボタン)このボタンを押すと、データがサーバーに送られようとする瞬間に、Burp Suiteがその通信を止めます。  パラメータを変更する 通信が止まったら、「Request」項目内で変更したい部分(画像の場合は「name」の後ろに「test」)を追加します。これにより、サーバーに送るデータを改ざんすることができます。  変更を確認する 最後に、変更が正しく反映されていることを確認します。「Proxy」タブ内の「HTTP history」タブを開き、リクエストとレスポンスの詳細を確認します。画像の場合は、パラメータ「お名前(name)」の末尾に「test」が追加されていることが確認できるはずです。 リクエスト改ざん後は、本番環境の応答確認をする 基本操作でリクエストを改ざんしたら、実際にWebサーバに送信して、その結果を詳しく見てみましょう。  改ざんしたデータを送信     「Forward」ボタンを押して、改ざんしたリクエストをWebサーバに送信します。 Webサイトの反応を観察     Webサーバからの応答(レスポンス)や、Webサイトの表示・動作をよく観察します。 エラーメッセージが表示された場合 エラーの原因を考えます。入力した値が原因なのか、それともWebサイトがデータの改ざんを検知したのか?エラーメッセージの内容に、脆弱性の手がかりが隠されていることもあります。 正常に表示された場合 改ざんしたデータがWebサイトに受け入れられた、ということです。さらに別のパラメータを改ざんしたり、他のページで同じ操作を繰り返したりして、他に問題がないかを確認します。 予期せぬ表示・動作があった場合 例えば、他のユーザーの情報が表示されたり、管理者用のページにアクセスできてしまったり。これは、重大な脆弱性の可能性があります。 どこに問題がありそうか、当たりをつけることが、脆弱性診断の第一歩となります。 さらにステップアップ!より高度なテストにも挑戦 基本的な操作に慣れてきたら、もう一歩進んだテストにも挑戦してみましょう! 複数のパラメータを同時に変更 最初は1つのパラメータだけを変更しましたが、次は複数のパラメータを同時に変更してみます。例えば、「name」と「email」の両方を書き換えて、Webサイトがどのように反応するかを観察します。 リクエストの自動化 Burp SuiteのIntruder機能を使うと、たくさんのリクエストを自動で送信できます。手作業では大変なテストも、Intruderを使えば効率的に行えます。  レスポンスの内容を詳しく分析 Webサーバからの応答(レスポンス)をよく見ましょう。エラーメッセージはもちろん、表示される内容や、HTMLソースコードなど、あらゆる情報が脆弱性の手がかりになります。 Burp Suite Proxyを使いこなせば、Webサイトのセキュリティに関する様々な問題点を発見できます。 ぜひ、色々な操作を試して、脆弱性診断のスキルを磨いてください! まとめ:Burp SuiteのProxy機能で手動診断を体験しよう! この記事では、Burp SuiteのProxy機能を使って、Webサイトの脆弱性診断を自分で行うための基本ステップを解説しました。 Burp Suiteは無料版でも十分な機能を備えており、初心者の方でも手軽にセキュリティチェックを始められます。 セキュリティ診断を強化したい方には、さらに深い分析や自動化されたテストを提供する有料版もおすすめです。 また、専門的な支援が必要な場合は、セキュリティに関する実績豊富な専門業者に相談することも一つの選択肢です。 セキュリティ診断について「もっと詳しく知りたい」「さらに高度な診断も試してみたい」という方は、ぜひアイ・エフ・ティにご相談ください。 15年以上の実績を持つアイ・エフ・ティでは、業界シェアNo.1の診断ツール「Vex」を活用し、Webサイト、システム、そして人、全ての脆弱性対策をサポートしています。 もちろん、「ちょっと相談してみたい」という場合も、お気軽にお問い合わせください!

5分でわかる!脆弱性診断ガイドライン、どれを選ぶ?9種類の特徴を比較解説 | 脆弱性診断とは

5分でわかる!脆弱性診断ガイドライン、どれを選ぶ?9種類の特徴を比較解説

「脆弱性診断ガイドライン」は数多く存在し、どれを選べば良いのか、自社に合うものはどれか、判断に迷うことはありますよね。 この記事では、企業のWeb担当者やセキュリティ初心者の方に向けて、主要な脆弱性診断ガイドライン9種類を徹底比較します。 それぞれのガイドラインについて、「目的」「内容」「対象」を簡潔にまとめ、活用方法を分かりやすく解説。 ガイドライン利用時の注意点も解説しています。 ガイドラインの概要を把握し、自社に最適なものを選ぶための判断材料として活用いただけます。 脆弱性診断ガイドラインとは? 脆弱性診断ガイドラインは、いうなれば、Webシステムやアプリケーションに潜む弱点を見つけ出し、対策を立てるための手引きです。 政府機関や業界団体などの公的機関が作成しているので信頼性が高く、診断の手順、使うツール、弱点の評価基準などが体系的にまとめられています。 ただし、ガイドラインは、最新の攻撃手法やセキュリティ技術に対応するために、定期的に更新されるのが一般的です。 常に最新の情報を確認しながら利用することが大切です。 ガイドライン一覧(政府機関・業界別・技術基準) まずは、今回取り上げる9種類のガイドラインを、3つの分類で一覧表にまとめました。 分類 ガイドライン名 主な対象・活用場面 政府機関 ① 政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン(デジタル庁) 公的機関、金融機関、ECサイトなど、高度なセキュリティが求められるシステム ② 工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン(経済産業省) 製造業の工場システム、電力・ガスなど社会インフラ 業界別 ③ 自動車産業サイバーセキュリティガイドライン(JAMA/JAPIA) 自動車メーカー、部品メーカー、コネクテッドカーや自動運転車に関連するサービス ④ ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン(IPA) ECサイトを構築・運営する事業者、カード決済など機密情報を扱うオンラインビジネス全般 ⑤ 地方公共団体のための脆弱性対応ガイド(IPA) 地方公共団体、住民情報を扱う公共施設や行政システム ⑥ 制御システムのセキュリティリスク分析ガイド(IPA) 重要インフラ(電力、ガス、水道など)、工場・プラントの制御システム 技術・セキュリティ基準 ⑦ 情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン(IPA/JPCERTなど) ソフトウェアベンダー、Webサービス提供事業者、脆弱性情報を管理・運用する全ての企業 ⑧ 安全なウェブサイトの作り方(IPA) Webアプリケーション開発者、セキュリティ担当者、Webサイト運用チーム ⑨ Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン(JNSA) 脆弱性診断を実施する企業や診断サービスを提供するベンダー、診断技術を学びたい技術者 各ガイドラインの「目的」「内容」「対象」と、活用方法については、この後詳しく見ていきましょう。 政府機関の脆弱性診断ガイドライン ① 政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン(デジタル庁) 目的:政府機関のシステムに脆弱性診断を取り入れ、高い水準のセキュリティを確保する 内容:自動診断ツールと手動診断を組み合わせる方法、報告書の作成手順、内部統制の仕組みなどを具体的に示す 対象:公的機関、金融機関、ECサイトなど、高度なセキュリティ基準が求められるシステム 公的機関向けのガイドラインですが、自治体や大企業でも活用しやすい内容です。 厳格な体制づくりや監査への対応を意識しているため、高い信頼性を求める企業が、自社の環境に合わせて取り入れるケースも多く見られます。 参考:政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン ② 工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン(経済産業省) 目的:製造業の工場や社会インフラのシステムをサイバー攻撃から守り、操業停止のリスクをできる限り小さくする 内容:OT(Operational Technology)環境での脆弱性診断の方法、サイバー・フィジカル両面でのリスク評価のやり方を提示 対象:電力・ガスなどのインフラ企業、工場システムを持つ製造業全般 ITと制御系システムが連携する現場では、セキュリティ対策が不十分だと、生産ラインの停止や社会的な影響が出る可能性があります。 このガイドラインは、危険を予測し、事前に対策を立てるための指針です。 参考:工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン 業界別脆弱性診断ガイドライン ③ 自動車産業サイバーセキュリティガイドライン(JAMA/JAPIA) 目的:コネクテッドカー(※)や自動運転技術へのサイバー攻撃のリスクを下げる 内容:車載システムや外部との通信部分の脆弱性診断、ソフトウェア更新(OTA)の安全確保、サプライチェーン全体の管理について触れる 対象:自動車メーカー、部品メーカー、車載ソフトウェア開発企業 ※コネクテッドカー:スマートフォンと連携したり、自動でソフトウェア更新を行う車 最近の自動車は、インターネット接続機能や高度な電子制御が普及し、サイバー攻撃を受ける可能性も高まっています。 このガイドラインでは、車両の一生を通じたセキュリティ対策が大切だと示しており、サプライチェーンの管理にも役立ちます。 参考:自動車産業サイバーセキュリティガイドライン ④ ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン(IPA) 目的:ECサイトでの不正アクセスや情報漏えいを防ぎ、安全なオンライン決済を実現する 内容:Webアプリケーション脆弱性診断、クレジットカード情報の保護、運用時のセキュリティルール作りなどをカバー 対象:オンラインショップ運営者全般(中小企業から大企業まで) クレジットカード情報や個人情報を取り扱うECサイトは、常に攻撃者に狙われやすい状態です。 このガイドラインは、すぐに役立つ脆弱性診断の項目と運用のルールを示しており、EC事業者が最低限やるべき対策を網羅しています。 必読のガイドラインと言えるでしょう。 参考:ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン ⑤ 地方公共団体のための脆弱性対応ガイド(IPA) 目的:地方公共団体が脆弱性を見つけたとき、初期対応からリスク評価までをスムーズに行う 内容:大切な住民情報を守るためのセキュリティ体制、職員や管理職への報告の流れ、ベンダーとの連携のポイントを説明 対象:自治体、公共施設、住民情報を扱う行政システム 地方公共団体は多くの個人情報を抱えており、もし情報が漏れたり、書き換えられたりしたら、住民の生活に大きな影響が出るかもしれません。 このガイドラインでは、脆弱性が見つかったときの責任の分担や連絡の手順をはっきりさせ、組織全体で対応できる力を高めるのに役立ちます。 参考:地方公共団体のための脆弱性対応ガイド ⑥ 制御システムのセキュリティリスク分析ガイド(IPA) 目的:工場やインフラなどの制御システムを狙ったサイバー攻撃を想定し、リスクを体系的に分析する 内容:資産ベースと攻撃シナリオの両面から脆弱性を見つけ出し、対策の優先順位を決めるやり方を解説 対象:電力、ガス、水道などのライフライン事業者、大規模プラント運営企業 制御システムは、普通のITシステムとは違い、止めることが難しいという特徴があります。 このガイドラインでは、安全であることと、問題なく使えることの両方を考えたリスク評価のやり方を提示しています。 インフラ企業には欠かせない資料です。 参考:制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版 技術・セキュリティ基準 ⑦ 情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン(IPA/JPCERTなど) 目的:脆弱性情報を早く共有し、開発者・発見者・利用者がうまく連携し、被害をできるだけ小さくする 内容:脆弱性情報の扱い方、パッチ公開のタイミング、責任分担などの指針を提示 対象:ソフトウェア開発企業、Webサービス提供者、脆弱性情報を報告・管理する組織全般 脆弱性が報告されたとき、情報の公開と修正のタイミングが適切でないと、攻撃者に悪用される危険性が高まります。 このガイドラインは、報告から公開・修正までの一連の流れを定め、早期警戒体制を整えるのに役立ちます。 参考:情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン ⑧ 安全なウェブサイトの作り方(IPA) 目的:Webアプリケーションの脆弱性(SQLインジェクション、XSSなど)を防ぐためのセキュアコーディングを広める 内容:代表的な脆弱性と対策の例、サンプルコード、開発の工程にセキュリティ対策を組み込むやり方を解説 対象:Web開発エンジニア、セキュリティ担当者、既存サイトの改修を行う運用チーム コーディングの段階で注意することで、多くの脆弱性は防げます。 具体的なソースコードの例がたくさん載っているので、初心者開発者の勉強にもぴったりです。 既存サイトの脆弱性を見つけ出すのにも応用できる、役立つガイドラインです。 参考:安全なウェブサイトの作り方 ⑨ Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン(JNSA) 目的:Webアプリケーションの脆弱性診断の項目や手順を標準化し、診断の精度や質を高める 内容:診断の進め方、必要なチェックリスト、検証環境の作り方などを提示 対象:脆弱性診断を自社で行う企業、診断サービスを提供するベンダー、診断技術を学びたい技術者 Webサービスを運営している組織が、定期的に診断を行うときの基準として使いやすいガイドラインです。 外部のベンダーに依頼するときも、共通の枠組みがあることで、「どこまで診断してもらうか」をはっきりさせられます。 参考:Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン 第1.2版 脆弱性診断ガイドラインを活用する際の注意点 これらのガイドラインを効果的に活用するためには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。 ガイドラインを「ただ読むだけ」で終わらせず、実務に活かすために、ぜひ以下の点を意識してください。 ガイドラインが最新の情報か? まず、ガイドラインは常に最新の情報とは限らないことを認識しておきましょう。 ガイドラインは作られた時点での攻撃手法をもとにしています。 そのため、ガイドラインを参考にするときは、最新の情報を必ず確認し、必要に応じて情報を付け加えるようにしましょう。 自社の環境や使えるリソースに合わせて調整する ガイドラインは一般的な内容を扱っています。 ガイドラインがすすめることを全部やろうとすると、費用や手間が大きくなりすぎる場合があります。 業種やシステムの規模に合わせて、何からやるか優先順位をつけて取り組むことが大切です。 ガイドラインだけでは不十分? そして、ガイドラインは脆弱性診断のすべてをカバーしているわけではありません。 ガイドラインに書かれていない弱点があることも考え、さまざまな角度からセキュリティ対策を検討する必要があります。 ガイドラインに加えて、セキュリティの専門家のアドバイスを受けたり、最新の脆弱性に関する情報を集めたりすることがおすすめです。 専門業者に相談して、より確実なセキュリティ対策を! 脆弱性診断ガイドラインは、セキュリティ対策の土台としてとても役立ちますが、すべての脅威を完全に防げるわけではありません。 最新の攻撃方法や、会社ごとに異なるリスクに対応するには、専門家のアドバイスが必要なことも多いでしょう。 IFTの脆弱性診断サービスは、今回ご紹介したガイドラインを参考に、次のような強みで、あなたの会社のセキュリティをサポートします。 IFTの強み 15年以上の実績があり、業界トップレベルの診断ツール「Vex」を使っています Webアプリケーション、システム、担当者の教育まで、幅広くお手伝いします 高い検出率に加えて、再診断や報告会など、診断後のサポートも充実しています まずはWebサイトのセキュリティ状態を把握することから始めましょう。 無料相談も実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

脆弱性診断とペネトレーションテストの違いとは?目的・手法・選び方を徹底解説 | 脆弱性診断とは

脆弱性診断とペネトレーションテストの違いとは?目的・手法・選び方を徹底解説

「脆弱性診断とペネトレーションテストって、一体何が違うの?」 システムのセキュリティ対策を考えるとき、こんな声をよく聞きます。 どちらもセキュリティを高めるための重要な手段ですが、その目的や実施する内容は大きく異なります。 この記事では、特に、「脆弱性診断」と「ペネトレーションテスト」の特長や違いを分かりやすく解説します。 自社システムのセキュリティ向上に向け、これらの手法をどのように活用できるのか、具体的なヒントを得られる内容となっています。 「脆弱性診断」とは:システムの弱点を洗い出す健康診断 脆弱性診断とは、システムやアプリケーションに潜むセキュリティ上の弱点(=脆弱性)を特定するための診断手法です。この診断には、ツール診断と手動診断の2つの方法があります。 ツール診断では、専用スキャンツールを使って効率的に脆弱性を発見します。広範囲を短期間で調査できるのが特徴です。 一方、手動診断は、専門家が実際に操作を行い、ツールでは検出しにくい設定ミスや、不正アクセスを引き起こす特定の権限設定の不備など、複雑なシステム特有のリスクを発見するのに優れています。 この診断結果を基に対策を実施することで、システムのセキュリティをより強化することが可能です。 「ペネトレーションテスト」とは:攻撃者視点での侵入テスト ペネトレーションテスト(侵入テスト)は、サイバー攻撃者の視点から、システムやネットワークへの侵入経路を検証するテスト手法です。 専門家が攻撃をシミュレーションすることで、実際にどのような経路や方法で不正アクセスが可能かを調査します。 このテストの特徴は、脆弱性の「影響範囲」や「悪用される可能性」を具体的に把握できる点です。 テストの種類も豊富で、外部ネットワークテスト、内部ネットワークテスト、Webアプリケーションテスト、モバイルアプリケーションテスト、物理セキュリティテスト、ソーシャルエンジニアリングテストなど多岐にわたります。 そのため、ペネトレーションテストは、金融機関など、より高度なセキュリティ対策が求められる場面や、実際の攻撃を想定した防御力の検証が必要な場合に適しています。 一目でわかる!脆弱性診断 or ペネトレーションテスト比較表 続いては、脆弱性診断とぺネストレーションテストの違いを比較していきます。 以下の表で、違いを分かりやすく比較してみましょう。 項目 脆弱性診断 ペネトレーションテスト 目的 システム全体の弱点を効率的に発見する 攻撃者視点で侵入経路や被害シナリオを検証 診断方法 ツール診断または手動診断 専門家による手動での侵入シミュレーション チェック範囲 広範囲(システム全体をカバー) 特定のシステムや攻撃シナリオに限定 コスト 比較的低コスト(数十万円~数百万円) 高コスト(数百万円~千万円以上) 実施期間 短期間(数日~1週間程度) 中長期(1~3週間程度) 実施頻度 定期的(半年~1年ごとの実施が推奨) 必要に応じて(大規模な変更や新システム導入時) 適用シーン 初期段階のリスク把握や、継続的なセキュリティチェック 実際の攻撃を想定した高度な防御力検証 脆弱性診断は、コストを抑えつつ効率的に広範囲を診断できるため、初期段階のセキュリティチェックに適しています。 一方、ペネトレーションテストは、専門技術者による高度な検証が必要なためコストが高くなりますが、実際の攻撃を想定した実践的なセキュリティ対策を強化する手法として効果的と言えるでしょう。 脆弱性診断だけでは不十分?被害につながるケース 脆弱性診断は、システム全体の弱点を把握するために有効な手法です。ただし、それだけでは実際の攻撃を完全に防ぐことは難しい場合があります。 以下では、脆弱性診断だけでは見逃されがちなリスクや、それが引き起こす被害事例について解説します。 脆弱性診断だけでは見逃されるリスクとは? 脆弱性診断では、主にツールによる自動診断が中心となるため、広範囲のチェックを効率的に行うことができます。 しかし、脆弱性診断だけでは発見しにくい複雑なリスクや、現実的な攻撃シナリオを想定するには限界があるのです。 例えば、以下のようなリスクを見逃す可能性があります。 複数の脆弱性が連鎖して起こる攻撃(例:設定ミスと権限不足の組み合わせ) 特定の条件下でのみ発生する攻撃パターン(例:特定のユーザー操作によるデータ流出) システム固有の設計ミスやカスタム仕様による弱点 これらのリスクを見過ごすと、実際の攻撃シナリオで大きな被害につながる可能性があります。 そのため、ペネトレーションテストを活用して、攻撃者視点での検証を行うことが効果的なのです。 ペネトレーションテストを怠った被害事例 以下では、ペネトレーションテストを実施していれば被害を防げた可能性がある事例を紹介します。 事例①:エン・ジャパン株式会社の情報流出 2023年3月、エン・ジャパン株式会社は転職情報サイト「エン転職」に対する不正ログインにより、約25万件のWeb履歴書が流出したことを発表しました。 この事件はリスト型攻撃によるもので、ペネトレーションテストを実施していれば、早期に脆弱性を発見し、対策を取れた可能性があります。 事例②:チューリッヒ保険会社の顧客情報流出 2023年1月、チューリッヒ保険会社では、外部委託業者への不正アクセスにより、約75万件の顧客情報が流出する事件が発生しました。 この事件は委託業者がサイバー攻撃を受けたことが原因で、ペネトレーションテストを行っていれば、外部からの攻撃に対する防御力を強化できた可能性があります。 事例③:株式会社アダストリアの不正アクセス事件 同じく2023年1月、アパレル企業の株式会社アダストリアは、自社のECサイト「ドットエスティ」に対する不正アクセスにより、約104万件の顧客情報が流出したことを発表しました。 この事件もペネトレーションテストを行うことで、システムの脆弱性を特定し、攻撃を未然に防げたかもしれません。 こうした事例を見ると、ペネトレーションテストを実施することで、単なる脆弱性の発見だけでなく、実際の攻撃を想定した具体的な対策を構築できることがわかります。 結果として、企業の情報資産を守るための最前線の防御が可能になります。 盤石なセキュリティ対策なら、「脆弱性診断 × ペネトレーションテスト」の組み合わせ! 先ほどの内容だけを読むと、「ぺネストレーションテストだけやっていればいいのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。 実際は、脆弱性診断とペネトレーションテストですが、これを組み合わせることで、単独では得られない「相乗効果」を生み出すことができます。 具体的にどのようなメリットがあるのか確認してみましょう。 1. 事前の脆弱性診断が、ペネトレーションテストを効率化する 脆弱性診断ではシステム全体の「リスクの洗い出し」が可能です。 この情報があることで、ペネトレーションテストでは、特に危険度が高い脆弱性や、実際の攻撃シナリオに利用される可能性が高い箇所に的を絞った検証が行えます。 結果として、より短期間で具体的かつ実践的な防御策を導き出すことができるでしょう。 2. ペネトレーションテストで診断結果を「裏付け」できる 脆弱性診断は、弱点を洗い出すことに特化していますが、その影響度や攻撃に悪用される可能性については判断が難しいことがあります。 ペネトレーションテストを組み合わせることで、診断結果が「実際にどの程度の被害につながるか」を検証でき、診断結果に優先順位をつけることが可能になります。 3. 組み合わせだからこそカバーできる「連鎖リスク」 単独の脆弱性では「軽微」と判断されるリスクが、複数の脆弱性が連鎖することで重大な攻撃を引き起こすケースがあります。 このようなリスクは、脆弱性診断だけでは見逃されることが多いですが、ペネトレーションテストを実施することで、こうした連鎖的な攻撃シナリオを明らかにすることが可能です。 4. 長期的な運用コストを削減できる 脆弱性診断で定期的に弱点を洗い出し、ペネトレーションテストで本当に危険なリスクを精査する流れを構築することで、効率的なセキュリティ対策が可能になります。 この工程により、無駄な修正作業や不要な対策にかかるコストを削減し、運用効率を向上させることができるのです。 脆弱性診断とペネトレーションテストを組み合わせることで、それぞれの弱点を補いながら、攻撃者の視点と守る側の視点の両方から盤石なセキュリティを構築することが可能です。 「広く、そして深く」守る体制を作るには、この組み合わせが最も効果的と言えるでしょう。 ペネトレーションテストならIFTにお任せください! セキュリティ対策の一環として、「脆弱性診断」と「ペネトレーションテスト」は、それぞれ異なる役割を持つ重要な手法です。 この記事では、「脆弱性診断」と「ペネトレーションテスト」の違いと特徴を解説し、これらを組み合わせることがもっとも効果的であることをお伝えしました。 セキュリティ対策の最前線で活躍するIFTのペネトレーションテストは、多くの企業に選ばれる理由があります。 IFTのペネトレーションテストが選ばれる理由 脆弱性診断と連携: 診断結果に基づき、本当に危険な箇所を重点的にテストします。 豊富な実績 (15年以上): 長年の経験とノウハウで、多種多様なシステムに対応可能です。 柔軟なカスタマイズ: お客様の環境に合わせて、最適なテスト計画をご提案します。 手厚いサポート: 分かりやすい報告書と、その後の対策まで丁寧に支援します。 セキュリティに関するお悩みは、IFTにお気軽にご相談ください。 専門家が、お客様のシステムをしっかりと守ります。

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