2024.12.02
脆弱性診断における「手動診断」とは?特徴やメリットをわかりやすく解説
脆弱性診断には、大きく「自動診断 or 手動診断」の2種類があるのですが、自動化ツールが普及している現代、なぜ“人間の手による診断”が求められるのでしょうか。 自動診断は多くのシステムで広く導入されており、ツールを使って効率的に脆弱性を検出する手法です。この方法は短時間で多くの部分をチェックできるため、コストや時間の面で非常に有効とされています。しかし、システムが複雑化するほど、自動診断だけでは十分に対応できない部分も出てきます。 一方で、手動診断では、セキュリティの専門家がシステムの構造や特徴に応じて一つひとつの脆弱性を精査します。この方法により、ツールでは見つけられない高度な脆弱性やシステム固有のリスクも検出可能です。 この記事では、手動診断の特長やメリット、そして特にどのような場面で有効となるかについて詳しく解説します。セキュリティ対策の参考にしていただければと思います。 「手動診断」とは?自動診断との違い・特長について 手動診断は、セキュリティ専門家がシステムやアプリケーションの脆弱性を一つひとつ確認していく診断手法です。自動診断ではカバーしきれない部分を補い、特に高度なセキュリティが求められる場面で効果を発揮します。 手動診断ならではのメリット3選 手動診断には、システムの内部構造や特性に基づいてリスクを特定し、複雑な脆弱性を発見するという特徴があります。ここでは、手動診断がもつ3つの主な特徴について解説します。 ①専門家が細部まで診断できる 手動診断は、セキュリティの高度な知識と実践的な経験を持つ専門家が行います。そのため、システムの構造や設計の背景を理解し、単なるツールベースの診断では見つけにくい論理的な欠陥や攻撃パターンに基づく脆弱性も発見できます。 これにより、潜在的なリスクに対してきめ細やかに対応し、システム全体の安全性を高めます。 ②“ツールでは発見が難しい脆弱性”にも対応できる 自動診断ツールは基本的な脆弱性の検出には効果的ですが、複雑で高度な脆弱性に対応するには限界があります。手動診断では、システムの設計や動作を考慮し、攻撃者の視点からセキュリティリスクを特定できます。 例えば、アプリケーション特有の脆弱性やユーザーの操作に依存する特定のシナリオでのリスクも含めて確認することで、精度の高いセキュリティ対策が可能です。 ③システム特有の仕様やリスクにも対応できる 手動診断は、業界特有のリスクやシステムの個別要件に合わせた柔軟な診断が行えることも特徴です。例えば、医療や金融、製造業などの業界では、各分野に特有のセキュリティ要件や規制があります。 手動診断では、こうした業界特有の条件に対応し、システム固有の脆弱性を効果的に発見できます。 自動診断を「補完」するのが手動診断 手動診断も自動診断も、「脆弱性診断」という目的は同じですが、精度・柔軟性・深さの観点で異なる特性を持っています。 まず、精度については、自動診断がルールベースで一般的な脆弱性を検出するのに対し、手動診断は専門家が“システム特有のリスク”を考慮しながら行うため、より高精度です。 深さの点では、手動診断はシステムの設計や動作を深く理解した上で詳細に脆弱性を探すため、自動診断では見つけにくい潜在的なリスクや複雑な脆弱性も発見できます。 このように、自動診断はツールを用いて広範囲にわたるチェックを短時間で行う手法で、基本的な脆弱性を効率よく検出するために活用されます。しかし、自動診断だけでは対応しきれない複雑なリスクが存在するため、これを補完するのが「手動診断」です。 手動診断のメリットとデメリット メリットばかりあるように見える手動診断ですが、もちろんデメリットも存在します。ここでは、手動診断のメリットとデメリットについて見ていきましょう。 手動診断を選ぶべきメリットとは? 手動診断のメリットは主に下記の3つです。 手動診断のメリット 高精度な診断 柔軟性と適応性 深い洞察と詳細な分析 手動診断の大きなメリットは、その高精度な診断です。セキュリティ専門家がシステムを直接調査することで、自動診断ツールでは検出が難しい複雑な脆弱性や、システム特有の問題を発見できます。 また、専門家の経験を基にした柔軟な対応も可能で、診断対象に合わせたカスタマイズができるため、特殊な設定や業務プロセスを持つシステムにも対応可能です。 さらに、専門家の深い知識に基づいた詳細な分析が行える点も強みです。これにより、脆弱性の影響度や優先度についての具体的な提案が可能になり、より実践的なセキュリティ対策を実施できます。 手動診断ならではのデメリットも 一方で、デメリットは主に下記の3つです。 手動診断のデメリット 高コスト 時間がかかる 診断員のスキルによる差 一方で、手動診断には高コストというデメリットがあります。専門家による診断には多くの時間と労力がかかるため、費用がかさむ傾向にあります。 また、診断を一つひとつ手作業で行うため、診断結果が出るまでに時間がかかる場合があります。このため、速やかな対応が求められるシーンでは不向きな場合もあります。 さらに、手動診断の質は診断員のスキルに依存するため、スキルのばらつきによって診断の一貫性が欠ける可能性があります。一定の品質を保つためには信頼できる専門家に依頼することが求められます。 手動診断が効果を発揮するケースとは? では、どんな時に手動診断が特に有効なのでしょうか?手動診断は、システムのセキュリティが特に重要視される状況や、複雑な構造、あるいは特有の業務フローを持つ環境でその強みを発揮します。 以下に、手動診断が有効となるケースについて説明します。 機密性の高いデータを扱っている企業 金融や医療、法律関連など、機密性の高いデータを取り扱う企業では、セキュリティが最優先事項となります。これらのデータが漏洩すると重大な損害が発生するため、一般的な脆弱性検出だけではなく、システム固有のリスクも考慮して脆弱性を発見する必要があります。手動診断は、こうした高度なセキュリティ要件に応えるため、特に効果的です。 複雑なネットワーク環境を持つ企業への対応 システムが複数の層やネットワーク構造を持ち、相互に依存している場合、自動診断ではすべてを網羅的にチェックするのが難しいことがあります。一方、手動診断では専門家がシステム全体を俯瞰し、相互作用によって生じるリスクを見つけることができるため、このような複雑な環境にも適しています。 自動診断に加え、精度を上げたい場合 自動診断を導入している企業でも、より高精度な診断を求めている場合には手動診断が役立ちます。自動診断で広範囲をカバーし、さらに手動診断で重点的に検証することで、セキュリティの精度をより高めることができます。特に、標準の診断ツールだけでは対応しきれない複雑な状況や特有の業務フローが絡む場合には、手動診断を組み合わせることで、確実なリスク特定が可能です。 「ハイブリット診断」という選択肢もあります!」 手動診断には、自動診断では補いきれない高精度で柔軟なセキュリティチェックが可能というメリットがありますが、その一方でコストや時間の負担が課題です。 そこで、自動診断と手動診断を組み合わせた「ハイブリッド診断」という選択肢があります。 ハイブリッド診断では、まず自動診断でシステム全体の基本的な脆弱性を短時間で検出し、その後に手動診断で特定のリスクや高度な脆弱性を重点的にチェックします。これにより、自動診断の効率性と手動診断の精度の両方を活かした診断が可能となり、コストや時間の面での課題を抑えながらも高いレベルのセキュリティ対策を行うことができます。 弊社でも、自動診断と手動診断を組み合わせた「ハイブリッド診断サービス」を提供しており、コスト効率を重視しながら高精度なセキュリティ対策を実現しています。 手動×自動のハイブリッド型で、コストと精度の両立を! 複雑なリスクやシステム特有の問題には、セキュリティ専門家が手作業で行う手動診断が非常に効果的です。手動診断では、高度な脆弱性や業界特有のリスクもきちんと把握できるため、特に機密情報を扱う企業や複雑なシステムを持つ企業にとって大変有益です。また、ハイブリッド診断を活用することで、自動診断と手動診断の良いところを組み合わせて、効率的で精度の高い診断が可能になります。 株式会社アイ・エフ・ティでは、コスト効率と高精度を両立した「ハイブリッド診断サービス」をご提供しています。自動診断と手動診断を組み合わせて、効率的かつ精度の高い脆弱性診断を行います。セキュリティ対策にご興味がありましたら、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。