
2025.02.26
5分でわかる!脆弱性診断ガイドライン、どれを選ぶ?9種類の特徴を比較解説
「脆弱性診断ガイドライン」は数多く存在し、どれを選べば良いのか、自社に合うものはどれか、判断に迷うことはありますよね。 この記事では、企業のWeb担当者やセキュリティ初心者の方に向けて、主要な脆弱性診断ガイドライン9種類を徹底比較します。 それぞれのガイドラインについて、「目的」「内容」「対象」を簡潔にまとめ、活用方法を分かりやすく解説。 ガイドライン利用時の注意点も解説しています。 ガイドラインの概要を把握し、自社に最適なものを選ぶための判断材料として活用いただけます。 脆弱性診断ガイドラインとは? 脆弱性診断ガイドラインは、いうなれば、Webシステムやアプリケーションに潜む弱点を見つけ出し、対策を立てるための手引きです。 政府機関や業界団体などの公的機関が作成しているので信頼性が高く、診断の手順、使うツール、弱点の評価基準などが体系的にまとめられています。 ただし、ガイドラインは、最新の攻撃手法やセキュリティ技術に対応するために、定期的に更新されるのが一般的です。 常に最新の情報を確認しながら利用することが大切です。 ガイドライン一覧(政府機関・業界別・技術基準) まずは、今回取り上げる9種類のガイドラインを、3つの分類で一覧表にまとめました。 分類 ガイドライン名 主な対象・活用場面 政府機関 ① 政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン(デジタル庁) 公的機関、金融機関、ECサイトなど、高度なセキュリティが求められるシステム ② 工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン(経済産業省) 製造業の工場システム、電力・ガスなど社会インフラ 業界別 ③ 自動車産業サイバーセキュリティガイドライン(JAMA/JAPIA) 自動車メーカー、部品メーカー、コネクテッドカーや自動運転車に関連するサービス ④ ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン(IPA) ECサイトを構築・運営する事業者、カード決済など機密情報を扱うオンラインビジネス全般 ⑤ 地方公共団体のための脆弱性対応ガイド(IPA) 地方公共団体、住民情報を扱う公共施設や行政システム ⑥ 制御システムのセキュリティリスク分析ガイド(IPA) 重要インフラ(電力、ガス、水道など)、工場・プラントの制御システム 技術・セキュリティ基準 ⑦ 情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン(IPA/JPCERTなど) ソフトウェアベンダー、Webサービス提供事業者、脆弱性情報を管理・運用する全ての企業 ⑧ 安全なウェブサイトの作り方(IPA) Webアプリケーション開発者、セキュリティ担当者、Webサイト運用チーム ⑨ Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン(JNSA) 脆弱性診断を実施する企業や診断サービスを提供するベンダー、診断技術を学びたい技術者 各ガイドラインの「目的」「内容」「対象」と、活用方法については、この後詳しく見ていきましょう。 政府機関の脆弱性診断ガイドライン ① 政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン(デジタル庁) 目的:政府機関のシステムに脆弱性診断を取り入れ、高い水準のセキュリティを確保する 内容:自動診断ツールと手動診断を組み合わせる方法、報告書の作成手順、内部統制の仕組みなどを具体的に示す 対象:公的機関、金融機関、ECサイトなど、高度なセキュリティ基準が求められるシステム 公的機関向けのガイドラインですが、自治体や大企業でも活用しやすい内容です。 厳格な体制づくりや監査への対応を意識しているため、高い信頼性を求める企業が、自社の環境に合わせて取り入れるケースも多く見られます。 参考:政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン ② 工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン(経済産業省) 目的:製造業の工場や社会インフラのシステムをサイバー攻撃から守り、操業停止のリスクをできる限り小さくする 内容:OT(Operational Technology)環境での脆弱性診断の方法、サイバー・フィジカル両面でのリスク評価のやり方を提示 対象:電力・ガスなどのインフラ企業、工場システムを持つ製造業全般 ITと制御系システムが連携する現場では、セキュリティ対策が不十分だと、生産ラインの停止や社会的な影響が出る可能性があります。 このガイドラインは、危険を予測し、事前に対策を立てるための指針です。 参考:工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン 業界別脆弱性診断ガイドライン ③ 自動車産業サイバーセキュリティガイドライン(JAMA/JAPIA) 目的:コネクテッドカー(※)や自動運転技術へのサイバー攻撃のリスクを下げる 内容:車載システムや外部との通信部分の脆弱性診断、ソフトウェア更新(OTA)の安全確保、サプライチェーン全体の管理について触れる 対象:自動車メーカー、部品メーカー、車載ソフトウェア開発企業 ※コネクテッドカー:スマートフォンと連携したり、自動でソフトウェア更新を行う車 最近の自動車は、インターネット接続機能や高度な電子制御が普及し、サイバー攻撃を受ける可能性も高まっています。 このガイドラインでは、車両の一生を通じたセキュリティ対策が大切だと示しており、サプライチェーンの管理にも役立ちます。 参考:自動車産業サイバーセキュリティガイドライン ④ ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン(IPA) 目的:ECサイトでの不正アクセスや情報漏えいを防ぎ、安全なオンライン決済を実現する 内容:Webアプリケーション脆弱性診断、クレジットカード情報の保護、運用時のセキュリティルール作りなどをカバー 対象:オンラインショップ運営者全般(中小企業から大企業まで) クレジットカード情報や個人情報を取り扱うECサイトは、常に攻撃者に狙われやすい状態です。 このガイドラインは、すぐに役立つ脆弱性診断の項目と運用のルールを示しており、EC事業者が最低限やるべき対策を網羅しています。 必読のガイドラインと言えるでしょう。 参考:ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン ⑤ 地方公共団体のための脆弱性対応ガイド(IPA) 目的:地方公共団体が脆弱性を見つけたとき、初期対応からリスク評価までをスムーズに行う 内容:大切な住民情報を守るためのセキュリティ体制、職員や管理職への報告の流れ、ベンダーとの連携のポイントを説明 対象:自治体、公共施設、住民情報を扱う行政システム 地方公共団体は多くの個人情報を抱えており、もし情報が漏れたり、書き換えられたりしたら、住民の生活に大きな影響が出るかもしれません。 このガイドラインでは、脆弱性が見つかったときの責任の分担や連絡の手順をはっきりさせ、組織全体で対応できる力を高めるのに役立ちます。 参考:地方公共団体のための脆弱性対応ガイド ⑥ 制御システムのセキュリティリスク分析ガイド(IPA) 目的:工場やインフラなどの制御システムを狙ったサイバー攻撃を想定し、リスクを体系的に分析する 内容:資産ベースと攻撃シナリオの両面から脆弱性を見つけ出し、対策の優先順位を決めるやり方を解説 対象:電力、ガス、水道などのライフライン事業者、大規模プラント運営企業 制御システムは、普通のITシステムとは違い、止めることが難しいという特徴があります。 このガイドラインでは、安全であることと、問題なく使えることの両方を考えたリスク評価のやり方を提示しています。 インフラ企業には欠かせない資料です。 参考:制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版 技術・セキュリティ基準 ⑦ 情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン(IPA/JPCERTなど) 目的:脆弱性情報を早く共有し、開発者・発見者・利用者がうまく連携し、被害をできるだけ小さくする 内容:脆弱性情報の扱い方、パッチ公開のタイミング、責任分担などの指針を提示 対象:ソフトウェア開発企業、Webサービス提供者、脆弱性情報を報告・管理する組織全般 脆弱性が報告されたとき、情報の公開と修正のタイミングが適切でないと、攻撃者に悪用される危険性が高まります。 このガイドラインは、報告から公開・修正までの一連の流れを定め、早期警戒体制を整えるのに役立ちます。 参考:情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン ⑧ 安全なウェブサイトの作り方(IPA) 目的:Webアプリケーションの脆弱性(SQLインジェクション、XSSなど)を防ぐためのセキュアコーディングを広める 内容:代表的な脆弱性と対策の例、サンプルコード、開発の工程にセキュリティ対策を組み込むやり方を解説 対象:Web開発エンジニア、セキュリティ担当者、既存サイトの改修を行う運用チーム コーディングの段階で注意することで、多くの脆弱性は防げます。 具体的なソースコードの例がたくさん載っているので、初心者開発者の勉強にもぴったりです。 既存サイトの脆弱性を見つけ出すのにも応用できる、役立つガイドラインです。 参考:安全なウェブサイトの作り方 ⑨ Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン(JNSA) 目的:Webアプリケーションの脆弱性診断の項目や手順を標準化し、診断の精度や質を高める 内容:診断の進め方、必要なチェックリスト、検証環境の作り方などを提示 対象:脆弱性診断を自社で行う企業、診断サービスを提供するベンダー、診断技術を学びたい技術者 Webサービスを運営している組織が、定期的に診断を行うときの基準として使いやすいガイドラインです。 外部のベンダーに依頼するときも、共通の枠組みがあることで、「どこまで診断してもらうか」をはっきりさせられます。 参考:Webアプリケーション脆弱性診断ガイドライン 第1.2版 脆弱性診断ガイドラインを活用する際の注意点 これらのガイドラインを効果的に活用するためには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。 ガイドラインを「ただ読むだけ」で終わらせず、実務に活かすために、ぜひ以下の点を意識してください。 ガイドラインが最新の情報か? まず、ガイドラインは常に最新の情報とは限らないことを認識しておきましょう。 ガイドラインは作られた時点での攻撃手法をもとにしています。 そのため、ガイドラインを参考にするときは、最新の情報を必ず確認し、必要に応じて情報を付け加えるようにしましょう。 自社の環境や使えるリソースに合わせて調整する ガイドラインは一般的な内容を扱っています。 ガイドラインがすすめることを全部やろうとすると、費用や手間が大きくなりすぎる場合があります。 業種やシステムの規模に合わせて、何からやるか優先順位をつけて取り組むことが大切です。 ガイドラインだけでは不十分? そして、ガイドラインは脆弱性診断のすべてをカバーしているわけではありません。 ガイドラインに書かれていない弱点があることも考え、さまざまな角度からセキュリティ対策を検討する必要があります。 ガイドラインに加えて、セキュリティの専門家のアドバイスを受けたり、最新の脆弱性に関する情報を集めたりすることがおすすめです。 専門業者に相談して、より確実なセキュリティ対策を! 脆弱性診断ガイドラインは、セキュリティ対策の土台としてとても役立ちますが、すべての脅威を完全に防げるわけではありません。 最新の攻撃方法や、会社ごとに異なるリスクに対応するには、専門家のアドバイスが必要なことも多いでしょう。 IFTの脆弱性診断サービスは、今回ご紹介したガイドラインを参考に、次のような強みで、あなたの会社のセキュリティをサポートします。 IFTの強み 15年以上の実績があり、業界トップレベルの診断ツール「Vex」を使っています Webアプリケーション、システム、担当者の教育まで、幅広くお手伝いします 高い検出率に加えて、再診断や報告会など、診断後のサポートも充実しています まずはWebサイトのセキュリティ状態を把握することから始めましょう。 無料相談も実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。